ユークリッド原論をどう読むか(16)
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ユークリッド原論

第10巻
 
命題10ー112(二項線分上の有理面積矩形の幅は二項線分各項と同じ比通約・同じ順位の項の余線分)
  有理線分上の正方形
   に等し
 矩形
  ニ項線分上に
   つくられる
ならば,
  余線分
   とし,
 余線分の二つの項は
  ニ項線分の二つの項と通約
   でき
  かつ
  同じ比
   なし,
さらに
  このようにして
   生じた
 余線分
  ニ項線分と同じ順位
   もつであろう。



  Aを有理線分
  BCをニ項線分
  DCをその大きい項
   とし,
  矩形BC,EFを
  A上の正方形
   に等しくせよ。

 EFは
  余線分
   であり,
 その二つの項は
  CD、DBと通約
   でき,
  かつ
  同じ比
   なし,
 さらに
 EFは
  BCと同じ順位
   もつであろう
と主張する。

もう一度
  矩形BD,Gを
  A上の正方形
   に等しくせよ。

そうすれば
 矩形BC,EFは
  矩形BD,G
   に等し

から,
 CBが
  BDに
   対するように,
 Gが
  EFに
   対する。
    [......(1)]

ところが
 CBは
  BDより
   大きい。

したがって
 Gも
  EFより
   大きい。

  EHをG
   に等しくせよ。

そうすれば
 CBが
  BDに
   対するように,
 HEが
  EFに
   対する。
    [......(4)]

ゆえに
  分割比
により,
 CDが
  BDに
   対するように,
 HFが
  FEに
   対する。
      [......(2)]

 HFが
  FEに
   対するように,
 FKが
  KEに
   対するようにされた
とせよ。
      [......(3)]

そうすれば
 HK全体が
  KF全体に
   対するように,
 FKが
  KEに
   対する。
なぜなら
 前項の一つが
  後項の一つに
   対するように,
 前項の全体が
  後項の全体に
   対す
から。

ところが
 FKが
  KEに
   対するように,
 CDが
  DBに
   対する。
     [......(6)]

ゆえに
 HKが
  KFに
   対するように,
 CDが
  DBに
   対する。

ところが
 CD上の正方形
  DB上の正方形通約
   できる。

それゆえ
 HK上の正方形
  KF上の正方形通約
   できる。

そして
 HK上の正方形
  KF上の正方形
   対するように,
 HKが
  KEに
   対する,
 3線分HK,KF,KEは
   比例する
から。

したがって
 HKは
  KEと長さにおいて通約
   できる。

ゆえに
 HEも
  EKと長さにおいて通約
   できる。
     [......(5)]

そして
 A上の正方形
  矩形EH,BD
   に等しく,
 A上の正方形
  有理面積
   である

から,
 矩形EH,BDも
  有理面積
   である。

そして
  有理線分BD上に
   つくられている。

それゆえ
 EHは
  有理線分
   であり
  BDと長さにおいて通約
   できる。

したがって
  それと通約
   できる
 EKも
  有理線分
   であり
  BDと長さにおいて通約
   できる。
    [......(7)]

そこで
 CDが
  DBに
   対するように,
 FKが
  KEに
   対す

から,
 CD,DBは
  平方においてのみ通約
   でき,
 FK,KEも
  平方においてのみ通約
   できる。

ところが
 KEは
  有理線分
   である。

ゆえに
 FKも
  有理線分
   である。

したがって
 FK,KEは
  面積においてのみ通約
   できる
  有理線分
   である。

よって
 EFは
  余線分
   である。
    [......(8)]


ところで
 CD上の正方形
  DB上の正方形より
  CDと通約
   できる
  線分上の正方形

  または
  CDと通約
   できない
  線分上の正方形

   だけ大きい。
[場合分け終了]

そこで
もし
 CD上の正方形
  DB上の正方形より
  通約
   できる
  線分上の正方形
   だけ大き

ならば,

 FK上の正方形
  KE上の正方形より
  FKと通約
   できる
  線分上の正方形
   だけ大きい。

そして
もし
 CDが
  定められた有理線分[Z]
  長さにおいて通約
   できる
ならば,

 FKも
  そうである。

もし
 BDが
  通約
   できる
ならば,
 KEも
  そうである。

ところが
もし
 CD,DBのいずれも
  通約
   できない
ならば,

 FK,KEのいずれも
  通約
   できない。

ところが
もし
 CD上の正方形
  DB上の正方形より
  CDと通約
   できない
  線分上の正方形だけ
   大き

ならば,

 FK上の正方形
  KE上の正方形より
  FKと通約
   できる
  線分上の正方形だけ
   大きいであろう。

そして
もし
 CDが
   定められた
  有理線分
  長さにおいて通約
   できる
ならば,

 FKも
   そうである。

もし
 BDが
  通約
   できる
ならば,

 KEも
   そうである。

ところが
もし
 CD,DBのいずれも
  通約
   できない
ならば,

 FK,KEのいずれも
  通約
   できない。

[場合分け終了]
したがって
 FEは
  余線分
   であり,
 その項FK,KEは
  ニ項線分の項CD,DBと通約
   でき
  かつ
  同じ比
   なし,
  そして
  BCと同じ順位
   もつ。

これが証明すべきことであった。
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