ユークリッド原論をどう読むか(14)
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ユークリッド原論
第10巻
命題10ー3
(作図.最大公約量)
公約量・最大公約量
(公約量は最大公約量を割り切る)
通約できる量を表す線分の作図(仮想的)
2つの
通約
できる
量
が与えられた
とき、
それらの
最大公約量
を見いだすこと。
通約は、
定義10ー1
による。
量は、
定義5ー1の補足
による。
公約量
とは、
定義10ー1
の通約できる量における
共通な尺度となる量
のことである。
最大公約量
とは、
公約量のうち最大のもの
である。
(以下、
定義の補足(命題10ー3)
(公約量・最大公約量)という。)
2つの与えられた
通約
できる
量
をAB、CD
とし、
そのうちABが
小さい
とせよ。
「量(について)・・・とせよ」は、
コメント6(命題5ー1)
参照のこと。
また、
通約できる2量を表す線分の具体的な作図
は
命題10ー6の系3
(作図.長さ・平方で通約可の線分)
まで待たねばならない。
通約できる2線分の作図を
定義10ー1
(通約)
により、
可能な範囲で行い、
「通約できる」と
仮想的な命題の設定をして、
以降の理論構成をしている。
(以下、
コメント3(命題10ー3)
(通約できる量を表す線分の作図(仮想的))という。)
AB∩CD、
AB<CD
となっている。
このとき
AB、CDの
最大公約量
を
見いださねばならぬ。
量
ABは
CDを
割り切る
かあるいは
割り切ら
ない
かである。
そこでもし
割り切る
ならば、
場合分けの1である。
AB|CD
としている。
自分自身をも
割り切る
定義5ー1の補足2
(割り切る)
による。
AB|AB
となっている。
から、
ABはAB、CDの
公約量
である。
場合分けの1、前節
定義の補足(命題10ー3)
(公約量・最大公約量)
による。
AB|(AB、CD)
となっている。
そして
最大
でもあることは明らかである。
なぜなら
量
ABより
大きい
量
は
ABを
割り切ら
ない
であろうから。
定義5ー1の補足2
(割り切る)
による。
「なぜなら・・・であるから」は、
コメント2(命題1ー16)
参照のこと。
AB|(AB、CD)(最大)
となっている。
次に
ABがCDを
割り切ら
ない
とせよ。
場合分けの2である。
AB¬|CD
となっている。
そうすれば
つぎつぎに
小さい
ほうが
大きい
ほうからひかれる
命題1ー3
(作図.等しい線分を切り取る)
による。
ならば、
AB、CDは
通約
不可能ではない
命題の設定
による。
AB∩CD
となっている。
から、
いつか残された
量
が
自分の前の
量
を
割り切る
ことになるであろう。
背理法の仮定として
もし
いつまでも割り切らない
とすれば、
命題10ー2
(互除で余るなら非通約)
により、
ABとCDは通約でない
となり、
前節に矛盾する
ことによる。
ABがEDを
割り切り
、
自分より
小さい
ECを残す
とし、
[......(a)]
AB|ED、
AB>EC、
CD=EC+ED
となっている。
ECがFBを
割り切り
、
自分より
小さい
AFを残す
とし、
[......(b)]
EC|FB、
EC>AF、
AB=AF+FB
となっている。
AFがCEを
割り切る
とせよ。
[......(c)]
AF|CE、
となっている。
準一般的な証明である。
コメント2(命題5ー1)
参照のこと。
そうすれば
AFはCEを
割り切り
、
他方
CEはFBを
割り切る
前節、
(b)
による。
AF|CE、CE|FB
となっている。
から、
AFもFBを
割り切る
であろう。
命題5ー3の補足
(倍量の倍量は倍量)
による。
AF|FB
となっている。
そして
自分自身をも
割り切る
。
定義5ー1の補足2
(割り切る)
による。
AF|AF
となっている。
したがって
AFはAB全体をも
割り切る
であろう。
[......(1)]
前節、前々節
命題5ー2の補足
(倍量の和は倍量)
による
AF|AB
となっている。
ところが
ABはDEを
割り切る
。
(a)
による。
AB|DE
となっている。
それゆえ
AFはEDをも
割り切る
であろう。
前節、前々節、
命題5ー3の補足
(倍量の倍量は倍量)
による。
AF|ED
となっている。
そして
CEをも
割り切る
。
(c)
による。
AF|CE
となっている。
したがって
CD全体をも
割り切る
。
前節、前々節
命題5ー2の補足
(倍量の和は倍量)
による
AF|CD
となっている。
したがって
AFはAB、CDの
公約量
である。
前節、
(1)
による。
AF|(AB、CD)
となっている。
次に
最大
でもある
と主張する。
もし
最大
でない
ならば、
背理法の仮定を述べようとしている。
AFより
大きく
、
AB、CDを
割り切る
何らかの
量
がある
であろう。
背理法の仮定である。
それをG
とせよ。
G>AF、G|(AB、CD)
となっている。
そうすれば
GはABを
割り切り
、
他方
ABはEDを
割り切る
前節、
(a)
による。
G|AB、AB|ED
となっている。
から、
GはEDをも
割り切る
であろう。
前節、
命題5ー3の補足
(倍量の倍量は倍量)
による。
G|ED
となっている。
そして
CD全体をも
割り切る
。
背理法の仮定
である。
G|CD
となっている。
したがって
Gは残りのCEをも
割り切る
であろう。
前節、前々節、
命題5ー6の補足
(倍量の差は倍量)
による。
G|CE
となっている。
ところが
CEはFBを
割り切る
。
(b)
による。
CE|FB
となっている。
したがって
GはFBをも
割り切る
であろう。
前節、前々節、
命題5ー3の補足
(倍量の倍量は倍量)
による。
G|FB
となっている。
そして
AB全体をも
割り切り
、
背理法の仮定
による。
G|AB
となっている。
残りのAFをも
割り切る
であろう、
前節、前々節、
命題5ー6の補足
(倍量の差は倍量)
による。
G|AF
となっている。
すなわち
大きい
量
が
小さい
量
を
割り切る
であろう。
背理法の仮定
による。
G>AF
となっている。
これは不可能である。
定義5ー1の補足2
(割り切る)
による。
それゆえ
AFより
大きい
いかなる
量
も
AB、CDを
割り切ら
ない
であろう。
背理法による。
したがって
AFはAB、CDの
最大公約量
である。
AF|(AB、CD)(最大)
となっている。
場合分けの2つが終了
。
よって
2つの
通約
できる
量
AB、CDが与えられた
とき、
それらの
最大公約量
が見いだされた。
これが証明すべきことであった。
系
これから
次のことが明らかであろう、
すなわち
もし
1つの
量
が2つの
量
を
割り切る
ならば、
それらの
最大公約量
をも
割り切る
であろう。
(以下、
命題10ー3の系2
(公約量は最大公約量を割り切る)という。)
最大であることの推論による。
G>AF
という設定を除けばよい。
命題10ー3
は、
A∩B、A<B
のとき、
Am=Qm×Bm+Am+1、
Bm=Q'm×Am+1+Bm+1、
Bm>Am+1≧0、
Am+1>Bm+1≧0
として、
あるmについて、
Am+1=0ならば、BmがA1、B1の最大公約量、
Bm+1=0ならば、AmがA1、B1の最大公約量
ということである。
命題10ー3の系2(公約量は最大公約量を割り切る)
前提
作図
推論
定義
公準
公理
命題
10-3
その他
命題10ー3
は作図用命題である。
前提
作図
推論
定義
5-1補2
,
補(題10-3)
公準
公理
命題
1-3
5-2補
,
5-3補
,
5-6補
,
10-2
その他
コ6(題5-1)
コ2(題1-16)
,
コ2(題5-1)
,場合分け,背理法
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