ユークリッド原論をどう読むか(9511)
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ユークリッド原論
第5巻
命題5ー11(同一の比に同じ比)
(同じ比は互いに同じ)
(等しい量は同じ比をもつ)
対する・ように
同一の比に同じ比は
互いに同じである。
AがBに対するように、
CがDに対し、
CがDに対するように、
EがFに対するとせよ。
-
AがBに対する
とは、
AがBに、
ある比でもって対している
ということである。
AがBに対するように
CがDに対する
とは、
AがBに対している比と
CがDに対している比が
同じである
ということである。
以下、定義の補足3(命題5ー11)(対する・ように)という。
-
A:B=C:D
C:D=E:F
となっている。
AがBに対するように、
EがFに対すると主張する。
A、C、Eの[任意の]同数倍G、H、Kと、
B、D、Fの別の任意の同数倍L、M、Nが
とられたとせよ。【・・・(a)】
- 推論の設定である。
- 量の倍は、命題の補足(定義5ー2)(作図.倍量)
による。
- 「[任意の]同数倍 」については、
コメント(命題5ー4)
を参照のこと。
-
(G、H、K)=m(A、C、E)、
(B、D、F)=n(L、M、N)
をとっている。
そうすれば
AがBに対するように
CがDに対し、
- 命題の設定による。
-
A:B=C:D
となっている。
そして
A、Cの[任意の]同数倍G、Hと
B、Dの別の任意の同数倍L、Mとが
とられたから、
- (a)
による。
-
(G、H)=m(A、C)、
(L、M)=n(B、D)
となっている。
もし
GがLより大きければ、
HもMより大きく、
等しければ、等しく、
小さければ小さい。
【・・・(1)】
- 定義5ー5(同じ比)
による。
-
G(<、=、>)L
ならば、
H(<、=、>)M
となっている。
また
CがDに対するように、
EがFに対し、
- 命題の設定による。
-
C:D=E:F
となっている。
そして
C、Eの[任意の]同数倍H、Kと
D、Fの別の任意の同数倍M、Nとが
とられたから、
- (a)
による。
-
(H、K)=m(C、E)、
(M、N)=n(D、F)
となっている。
もし
HがMより大きければ、
KもNより大きく、
等しければ、等しく、
小さければ、小さい。
【・・・(2)】
- 定義5ー5(同じ比)
による。
-
H(<、=、>)M
ならば、
K(<、=、>)N
となっている。
《
ところがもし
HがMより大きければ
GもLより大きく、
等しければ、等しく、
小さければ、小さかった。
- 推論の流れを、
この1節が混乱させている。
すなわち、
「AならばB。
BならばC。
よって
AならばC。」
が推論の筋道である。
しかし、
原論のここでの推論は、
「BならばA。
BならばC。
よってAならばC。」
となっている。
-
ここまでの推論では、
G(<、=、>)L
ならば、
H(<、=、>)M
となっている。
それゆえもし》[したがって]
GがLより大きければ、
[HもMより大きいので]
KもNより大きく、
等しければ、等しく、
小さければ、小さい。
- (1)(2)による。
-
G(<、=、>)L
ならば、
K(<、=、>)N
となっている。
そして
G、KはA、Eの[任意の]同数倍であり、
L、NはB、Fの別の任意の同数倍である。
- (a)
による。
-
(G、K)=m(A、E)、
(L、N)=n(B、F)
ゆえに
AがBに対するように、
EがFに対する。
よって
同一の比に同じ比は互いに同じである。
- 「互いに」という部分の論証が、
原論では欠いている。
- この論証は定義5ー5(同じ比)
を少し補足した
次の命題5ー11の補足(同じ比は互いに同じ)
による。
すなわち、
「AがBに対するように、
CがDに対するなら、
CがDに対するように、
AがBに対する。」
(以下、命題5ー11の補足(同じ比は互いに同じ)という。)
これは、次のように証明される。
AがBに対するように、
CがDに対するので、
定義5ー5(同じ比)
により、
A、Cの[任意の]同数倍G、Hと、
B、Dの別の任意の同数倍L、Mが
とられたとすると、
-
(G、H)=m(A、C)、
(L、M)=n(B、D)
をとっている。
GがLより大きければ、
HもMより大きく、
等しければ、等しく、
小さければ小さい。
-
G(<、=、>)L
ならば、
H(<、=、>)M
となっている。
ここで、
HがMより大きければ、
GがLより大きい。
なぜなら、
背理法の仮定として、
もし、GがLより大きくないとすれば、
公理1ー7の補足(線分・角は大か等か小)
により、
GがLに等しい場合と
GがLより小さい場合がなる。
GがLに等しい場合は、
命題の設定により
HもMに等しくなるので、
不可能である。
GがLより小さい場合、
命題の設定により
HもMより小さくなるので。
不可能である。
したがって
背理法により、
GはLより大きい。
等しい場合、小さい場合も
同様に証明できる。
したがって、
C、Aの[任意の]同数倍H、Gと、
D、Bの別の任意の同数倍M、Lが
とられていて
HがMより大きければ、
GもLより大きく、
等しければ、等しく、
小さければ、小さい。
-
H(<、=、>)M
ならば、
G(<、=、>)L
となっている。
定義5ー5(同じ比)
により
CがDに対するように、
AがBに対する。
これが証明すべきことであった。
- 命題5ー11の補足は、
A:B=C:D
ならば
C:D=A:B
のことである。
-
等しい量は等しい量に対し同じ比をもつ。
以下、命題5ー11の補足2(等しい量は同じ比をもつ)という。
命題5ー7
により
A=BならA:C=B:C
C=DならB:C=B:D
命題5ー11
により
A:C=B:Dとなる。
- 命題5ー11は、
A:B=C:D、C:D=E:F
ならば
A:B=E:F
のことである。
- 命題5ー11の補足は推論用命題である。
前提 | 作図 | 推論
|
定義 |
| 5-5
|
公準 |
|
|
公理 |
| 1-7補
|
命題 |
|
|
その他 |
| 背理法
|
- 命題5ー11の補足2は推論用命題である。
- 命題5ー11は推論用命題である。
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