ユークリッド原論をどう読むか(10)
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ユークリッド原論
第6巻
命題6ー14(等積で等角な平行四辺形と逆比例)
(作図.直線図形の頂点共有と辺の1直線)
[平行四辺形の]完結
(1組の角が等しい平行四辺形と等角)
(作図.1組の角が等しい(よって等角な)平行四辺形)
等しくかつ等角な
2つの平行四辺形の
等しい角をはさむ辺は
逆比例する。
そして
等しい角をはさむ辺が
逆比例する
等角な2つの平行四辺形は
等しい。
AB、BCが
等しくかつ等角 で、
Bにおける角が
等しい平行四辺形とし、
DB、BEが
1直線をなすようにおかれたとせよ。
-
原論の立場は、
ずらしたり(平行な移動、回転による移動)、
ひっくりかえしたり(線対称による移動)して、
図形を適当な位置に移す
ことを認めている。
この立場は、以下のように正当化される。
2つの直線図形A、Bにおいて、
定義1ー19の補足3(凸多角形)
公準1ー1(作図.直線)
により、
Aの任意の頂点C1.Aから、
対角線をひいて、
順にできる三角形を、
C1C2C3、C1C3C4、…、C1Cn-1Cnとする。
公準1ー2(作図.直線の延長)
命題1ー3の補足(作図.等しい線分となる点)
により、
Bの任意の頂点D1.Bとその隣の頂点D2に対し
E2(延長D2D1;D1E2=C1C2)
をとり、
定義1ー19の補足3(凸多角形)
命題1ー7の補足(作図.底辺に対する他の2辺の交点)
により、
D1D2について、Bの他の頂点と異なる側に
E3(;D1E3=C1C3、E2E3=C2C3)
をとると、
命題1ー8の補足(3辺相等による合同)
により、
△C1C2C3≡△D1E2E3
となる。
同様に、
D1D2について、Bの他の頂点と異なる側に
E4(;D1E4=C1C4、E3E4=C3C4)
をとると、
命題1ー8の補足(3辺相等による合同)
により、
△C1C3C4≡△D1E3E4
となる。
以下、順に繰り返しすと、
△C1Cn-1Cn≡△D1En-1En
となり、
図形D1E2…En≡A
となる。
よって、
どのような直線図形でも、
図形の内部は重ならずに、
それぞれの任意の1頂点を共有し、
その頂点をつくる1辺を
1直線となるように移動することができる。
(以下、命題6−14の補足
(作図.直線図形の頂点共有と辺の1直線)という。)
-
2つの平行四辺形において、1組の角が等しければ、等角である。
(以下、命題6−14の補足3
(1組の角が等しい平行四辺形と等角)という。)
平行四辺形ADBFとCGBEにおいて、
∠DBF=∠GBE
ならば、
命題1ー29(平行と錯角、内対角、同側内角)
により、
∠DBF+∠BDA
=∠GBE+∠BGC=∠R、
公理1ー3(等しいものから等しいものをひく)
により
∠BDA=∠BGC。
また、
命題1ー34(平行四辺形の対辺・対角・対角線)
により
∠DBF=∠FAD、
∠GBE=∠ECG
となり
∠DBF=∠GBE
となっているから、
公理1ー1の補足(等しいものに等しい)
により
∠FAD=∠ECG。
同様にして、
∠ADB=∠CGB。
したがって、
平四ADBF;(等角)平四CGBE
となる。
-
1組の角が等しい(よって等角な)平行四辺形を作図すること。
(以下、命題6ー14の補足4(作図.1組の角が等しい(よって等角な)平行四辺形)という。)
作図の方法は次のとおり。
平行四辺形ABと線分BE、BG’があるとき、
命題1ー23(作図・直線上に指定された角)
により、
半直線BG"(;;∠EBG”=∠DBF,同向側(EB,DB,F))を引き、
命題1ー3の補足(作図.等しい線分となる点)
により
G(BG";;BG=BG')
をとる。
命題1ー31(作図・平行線)
により
平行線EC'(E,BG)、
平行線GC"(G,BE)
をひく。
命題1ー30の補足(交線に平行な線)
により、
交点C(EC',GC")
をとる。
定義の補足(命題1ー34)(平行四辺形・対角線)
により、
BECGは平行四辺形である。
-
本命題の前半においては、
平行四辺形AB
に対して、
等しい平行四辺形を
まえもって作図すること
を前提としていない。
仮想的に作図できたとして
推論を進めている。
本命題の後半により、
等しい平行四辺形が
実際的に作図できる
ことになる。
-
平行四辺形BECG(BE,BG
;;G;上.延長FB,∠FBD=∠EBG
,平四BECG=平四AFBD)
をとっている。
そうすれば
FB、BGも1直線をなす。
- DB、BEが1直線となっているから、
角FBDと角EBFの和は2直角である。
角EBGと角FBGが
命題の設定により等しいので、
公理1ー2(等しいものに等しいものを加える)
により、
角EBGと角EBFの和も2直角である。
したがって、
命題1ー14(直線と2直角2)
により、FB、BGが1直線をなす。
-
G;上.FB
となっている。
AB、BCの等しい角をはさむ辺は
逆比例する。
すなわち
DBがBEに対するように、
GBがBFに対する
と主張する。
平行四辺形FEが完結されたとせよ。
-
[平行四辺形の]完結とは、
作図を完成するさせることである。
(以下、コメント2(命題6ー14)([平行四辺形の]完結)という。)
公準1ー2(作図.直線の延長)
により
延長AF、延長EC
をとる。
AF(交)BG、
命題1ー30の補足(交線に平行な線)
により、
交点H(延長AF,延長EC)
をとると、
命題の設定により、
FB‖HE、BE‖FH
だから、
定義の補足(命題1ー34)(平行四辺形・対角線)
により、
HFBE;平行四辺形
となる。
-
平四FE
となっている。
そうすれば
平行四辺形ABは
平行四辺形BCに等しく、
FEは別の平行四辺形であるから、
ABがFEに対するように、
BCがFEに対する。
-
命題5ー7(同一量の比)
による。
-
平四AB:平四FE=平四BC:平四FE
となっている。
ところが
ABがFEに対するように
DBがBEに対し、
BCがFEに対するように、
GBがBFに対する。
-
命題6ー1(同高の三角形、平行四辺形は底辺と比例)
による。
-
平四AB:平四FE=DB:BE、
平四BC:平四FE=GB:BF
となっている。
それゆえ
DBがBEに対するように、
GBがBFに対する。
-
命題5ー11(同一の比に同じ比)
による。
-
DB:BE=GB:BF
となっている。
ゆえに
平行四辺形AB、BCの
等しい角をはさむ辺は
逆比例する。
-
定義6ー2(三角形の辺の平行線による辺の比例区分)
による。
次に
DBがBEに対するように、
GBがBFに対するとせよ。
-
等しい角Bをはさむ辺が逆比例する
等角な2つの平行四辺形AB、BCを
命題6−14の補足(作図.直線図形の頂点共有と辺の1直線)
により、
DB、BEが1直線となるようにすると、
前半と同じように、
公準1ー2(作図.直線の延長)、
命題1ー30の補足(交線に平行な線)、
定義の補足(命題1ー34)(平行四辺形・対角線)
により、
平行四辺形FEが完結する。
-
本命題の後半においては、
作図が可能であり、
実際的である。
-
平行四辺形ADBFと線分BE'
に対して、
E(延長DB;;BE=BE')、
G(延長FB;;DB:BE=GB:BE)、
平四BGCE(BG,BE)、
平四(BE,BF)
をとっている。
平行四辺形ABは
平行四辺形BCに等しい
と主張する。
DBがBEに対するように、
GBがBFに対し、
- 命題の設定
による。
-
DB:BE=GB:BF
となっている。
他方
DBがBEに対するように、
平行四辺形ABが平行四辺形FEに対し、
GBがBFに対するように
平行四辺形BCが平行四辺形FEに対する
-
DB:BE=平四AB:平四FE、
GB:BF=平四BC:平四FE
となっている。
から、
ABがFEに対するように、
BCがFEに対する。
-
命題6ー1(同高の三角形、平行四辺形は底辺と比例)、
命題5ー11(同一の比に同じ比)
による。
-
平四AB:平四FE=平四BC:平四FE
となっている。
それゆえ
平行四辺形ABは
平行四辺形BCに等しい。
-
命題5ー9(同一比の量)
による。
-
平四AB=平四BC
となっている。
よって
等しくかつ等角 な2つの平行四辺形の
等しい角をはさむ辺は
逆比例する。
そして
等しい角をはさむ辺が逆比例する
等角 な2つの平行四辺形は
等しい。
これが証明すべきことであった。
- 命題6ー14は、
平四(DB,BF)、平四(GB,BE)
∠DBF=∠GBE
に対して、
平四(DB,BF)=平四(GB,BE)
ならば
DB:BE=GB:BF、
逆に、
DB:BE=GB:BF
ならば
平四(DB,BF)=平四(GB,BE)
のことである。
-
命題6−14の補足 (作図.直線図形の頂点共有と辺の1直線)
-
命題6−14の補足3 (1組の角が等しい平行四辺形と等角)
-
命題6ー14の補足4(作図.1組の角が等しい(よって等角な)平行四辺形)
- 命題6ー14は推論用命題である。
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