ユークリッド原論をどう読むか(14)
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目次
ユークリッド原論
第10巻
命題10ー71
(有理面積と中項面積の和に等しい正方形の辺)
有理面積
と
中項面積
が加えられる
ならば、
4種の
無理線分
、
すなわち
二項線分
か
第1の双中項線分
か
優線分
かまたは
中項面積と有理面積の和に等しい正方形の辺
が生ずる。
有理面積は、
定義10ー4の補足
による。
中項面積は、
定義の補足(命題10ー21)
による。
無理線分は、
定義10ー4
による。
二項線分は、
定義の補足(命題10ー36)
による。
第1の双中項線分は、
定義の補足(命題10ー37)
による。
優線分は、
定義の補足(命題10ー39)
による。
中項面積と有理面積の和に等しい正方形の辺は、
定義の補足(命題10ー40)
による。
ABを
有理面積
とし、
CDを
中項面積
とせよ。
矩形AB、矩形CDは、
定義10ー4の補足
(有理面積、無理面積)、
定義の補足2(命題10ー23)
(中項面積)
によるが、
具体的なものではなく、
仮想的なものである。
矩形AB;有理面積
矩形CD;中項面積
となっている。
面積
ADに
等し
い
正方形
の
辺
は
二項線分
か
第1の双中項線分
か
優線分
かまたは
中項面積と有理面積の和に等しい正方形の辺
であると主張する。
ABは
CDより
大き
いか
あるいは
小さ
いかである。
公理1ー7の補足
(線分・角は大か等か小)
に準じ、
定義10ー4の補足
(有理面積、無理面積)
により、
AB=CDとなることはない。
AB><CD
となっている。
記述からすると,
ここから場合分けになる。
しかし,
論理の流れからすると,
(10)
までは,
場合分けの前提であり,
場合分けは(10)から始まる.
AB>CDの場合(case01)
、
AB<CDの場合(case02)
、
場合分け終了(case0e)
(case01)
まず
大き
い
とせよ。
推論の設定である。
論理の流れからすると,
(10)
までは,
場合分けの前提であり,
場合分けは(10)から始まる.
AB>CD
となっている。
そして
有理線分
EFが
定められ、
EF上に
ABに
等し
く
EHを
幅
とするEGが
つくられた
とせよ。
[......(1)]
命題の補足2(定義10ー3)
(作図.任意の有理線分)、
命題6ー16の補足3
(作図.線分上に矩形と等しい矩形)
による。
EF;有理線分、
点H(;矩形EG(EF、EH)=矩形AB
となっている。
そして
DCに
等し
く
EF上にHKを
幅
とする
HIがつくられた
とせよ。
[......(2)]
命題6ー16の補足3
(作図.線分上に矩形と等しい矩形)
による。
点K(;矩形HI(EF、HK)=矩形DC
となっている。
そうすれば
ABは
有理面積
であり
EGに
等し
い
から、
EGも
有理面積
である。
前々節、、
定義10ー4の補足
(有理面積、無理面積)
による。
EG;有理面積
となっている。
そして
EHを
幅
とし、
EF上につくられた。
したがって
EHは
有理線分
であり
EFと
長さにおいて通約
できる。
[......(3)]
(1)
、
命題10ー20
(有理線分上の有理面積の矩形幅は底辺と長さで通約
による。
矩形EH;∩矩形EF、有理線分
となっている。
また
CDは
中項面積
であり
HIに
等し
い
から、
HIも
中項面積
である。
(2)
、
命題10ー23の系
(中項面積と通約なら中項面積)
による。
矩形HI;∩矩形CD、中項面積
となっている。
そして
HKを
幅
としEF上にある。
したがって
HKは
有理線分
であり
EFと
長さにおいて通約
できない。
[......(4)]
(2)
、
命題10ー22
(中項線分上正方形に等矩形で底辺有理線分なら幅は有理で非通約)
による。
HK;¬∩EF、有理線分
となっている。
そして
CDは
中項面積
であり、
ABは
有理面積
である
から、
ABは
CDと
通約
できない。
命題10ー23の補足6
(有理面積と中項面積は非通約)
による。
矩形AB¬∩矩形CD
となっている。
したがって
EGも
HIと
通約
できない。
前節、
命題10ー13
(通約量と非通約なら非通約)
による。
矩形EG¬∩矩形HI
となっている。
ところが
EGが
HIに
対する
ように、
EHが
HKに
対する
。
したがって
EHも
HKと
長さにおいて通約
できない。
[......(5)]
前節、
(1)
、
(2)
、
命題6ー1
(同高の三角形、平行四辺形は底辺と比例)、
命題10ー11
(4量比例で一方が通約なら他方も通約)
による。
矩形EG:矩形HI=EH:HK、
EH¬∩HK
となっている。
そして
両方とも
有理線分
である。
(3)
、
(4)
による。
EH、HK;有理線分
となっている。
したがって
EH、HKは
平方においてのみ
通約
できる
有理線分
である。
前節、前々節、
定義10ー3の補足
(有理線分)
による。
EH∩^^2 HK
となっている。
それゆえ
EKは
Hで分けられた
二項線分
である。
前節、
定義の補足(命題10ー36)
(二項線分)
による。
EK;H分点の二項線分
となっている。
[......(10)]
そして
ABは
CDより
大き
く、
ABは
EGに、
CDは
HIに
等し
い
から、
EGも
HIより
大き
い。
場合分けの設定、
(1)
(2)
公理1ー8の補足2
(等より大・小、大・小に等)
による。
矩形EG>矩形HI
となっている。
ゆえに
EHも
HKより
大き
い。
前節、
(5)
命題5ー14
(同じ比の前(後)項の大等小)
による。
EH>HK
となっている。
そこで
EH上の
正方形
は
HK上の
正方形
より
EHと
長さにおいて通約
できる
線分
上の
正方形
だけ
大き
いか
または
通約
できない
線分
上の
正方形
だけ
大き
い。
命題10ー14助
(作図.線分上の正方形の差となる正方形の辺)、
定義10ー1
(通約)
による。
正方(_EH)=正方(_HK)+正方(_X)
X;∩EH、または、¬∩EH
となっている。
X;∩EH、または、¬∩EH
となっている。
場合分けになる。
X∩EHの場合(case11)
、
X;¬∩EHの場合(case12)
、
場合分け終了(case1e)
(case11)
まず
EHと
通約
できる
線分
上の
正方形
だけ
大き
い
とせよ。
そして
大き
い
線分
HEは
定められた
有理線分
EFと
通約
できる。
場合分けの設定、
(3)
による。
正方(_EH)=正方(_HK)+正方(_X)、
X∩EH、
HE∩EF
となっている。
したがって
EKは
第1の二項線分
である。
前節、
定義10Uー1
(第1の二項線分)
による。
EK;第1の二項線分
となっている。
ところが
EFは
有理線分
である。
(1)
による。
EF;有理線分
となっている。
そして
もし
面積
が
有理線分
と
第1のニ項線分
とによって
かこま
れる
ならば、
その
面積
に
等し
い
正方形
の
辺
は
二項線分
である。
したがって
EIに
等し
い
正方形
の
辺
は
二項線分
である。
[......(6)]
命題10ー54
(有理線分と第1の二項線分の矩形に等しい正方形の辺は二項線分) による。
辺X(;正方(_X)=矩形EI);二項線分
となっている。
それゆえ
ADに
等し
い
正方形
の
辺
も
二項線分
である。
前節、
(1)
(2)
による。
辺X(;正方(_X)=矩形AD);二項線分
となっている。
(case12)
次に
EH上の
正方形
が
HK上の
正方形
より
EHと
通約
できない
線分
上の
正方形
だけ
大き
い
とせよ。
そして
大き
い
線分
EHが
定められた
有理線分
EFと
長さにおいて通約
できる。
場合分けの設定、
(3)
による。
正方(_EH)=正方(_HK)+正方(_X)、
X¬∩EH、
EH∩EF
となっている。
したがって
EKは
第4の二項線分
である。
前節、
定義10Uー4
(第4の二項線分)
による。
EK;第4の二項線分
となっている。
ところが
EFは
有理線分
である。
そして
もし
面積
が
有理線分
と
第4の二項線分
とによって
かこま
れる
ならぱ、
その
面積
に
等し
い
正方形
の
辺
は
優線分
とよばれる
無理線分
である。
したがって
面積
EIに
等し
い
正方形
の
辺
は
優線分
である。
前節、
(3)
、
命題10ー57
(有理線分と第4の二項線分の矩形に等しい正方形の辺は優線分)
による。
辺X(;正方(_X)=矩形EI);優線分
となっている。
それゆえ
ADに
等し
い
正方形
の
辺
も
優線分
である。
[......(7)]
前節、
(1)
(2)
による。
辺X(;正方(_X)=矩形AD);優線分
となっている。
(case1e)
(case02)
次に
ABが
CDより
小さ
い
とせよ。
そうすれば
EGも
HIより
小さ
い。
場合分けの設定、
(1)
(2)
公理1ー8の補足2
(等より大・小、大・小に等)
による。
矩形EG<矩形HI
となっている。
ゆえに
EHも
HKより
小さ
い。
前節、
(5)
命題5ー14
(同じ比の前(後)項の大等小)
による。
EH<HK
となっている。
そして
HK上の
正方形
は
EH上の
正方形
より
HKと
通約
できる
線分
上の
正方形
か
または
通約
できない
線分
上の
正方形
だけ
大き
い。
命題10ー14助
(作図.線分上の正方形の差となる正方形の辺)、
定義10ー1
(通約)
による。
正方(_EH)=正方(_HK)+正方(_X) X;∩EH、または、¬∩EH
となっている。
正方(_HK)=正方(_EH)+正方(_X)、
X;∩HK、または、¬∩HK
となっている。
場合分けになる。
X∩HKの場合(case21)
、
X;¬∩HKの場合(case22)
、
場合分け終了(case2e)
(case21)
まず
HKと
長さにおいて通約
できる
線分
上の
正方形
だけ
大き
い
とせよ。
そして
小さ
い
線分
EHは
定められた
有理線分
EFと
長さにおいて通約
できる。
場合分けの設定、
(3)
による。
正方(_HK)=正方(_EH)+正方(_X)、
X∩HK、
EH∩EF
となっている。
ゆえに
EKは
第2の二項線分
である。
前節、
定義10Uー2
(第2の二項線分)
による。
EK;第2の二項線分
となっている。
ところが
EFは
有理線分
である。
(1)
による。
EF;有理線分
となっている。
そして
もし
面積
が
有理線分
と
第2の二項線分
とによって
かこま
れる
ならば、
その
面積
に
等し
い
正方形
の
辺
は
第1の双中項線分
である。
したがって
面積
EIに
等し
い
正方形
の
辺
は
第1の双中項線分
である。
[......(8)]
命題10ー55
(有理線分と第2の二項線分の矩形に等しい正方形の辺は第1の双中項線分) による。
辺X(;正方(_X)=矩形EI);第1の双中項線分
となっている。
それゆえ
ADに
等し
い
正方形
の
辺
も
第1の双中項線分
である。
前節、
(1)
(2)
による。
辺X(;正方(_X)=矩形AD);第1の双中項線分
となっている。
(case22)
次に
HK上の
正方形
が
HE上の
正方形
より
HKと
通約
できない
線分
上の
正方形
だけ
大き
い
とせよ。
そして
小さ
い
線分
EHは
定められた
有理線分
EFと
通約
できる。
場合分けの設定、
(3)
による。
正方(_HK)=正方(_HE)+正方(_X)
X¬HK
EH∩EF
となっている。
したがって
EKは
第5の二項線分
である。
前節、
定義10Uー5
(第5の二項線分)
による。
EK;第5の二項線分
となっている。
ところが、
EFは
有理線分
である。
そして
もし
面積
が
有理線分
と
第5の二項線分
とによって
かこま
れる
ならば、
その
面積
に
等し
い
正方形
の
辺
は
中項面積と有理面積の和に等しい正方形の辺
である。
ゆえに
面積
EIに
等し
い
正方形
の
辺
は
中項面積と有理面積の和に等しい正方形の辺
である。
前節、
(3)
命題10ー58
(有理線分と第5の二項線分の矩形に等しい正方形の辺は中項面積と有理面積の和に等しい正方形の辺)
による。
辺X(;正方(_X)=矩形AD);中項面積と有理面積の和に等しい正方形の辺
となっている。
したがって
面積
ADに
等し
い
正方形
の
辺
も
中項面積と有理面積の和に等しい正方形の辺
である。
[......(9)]
前節、
(1)
(2)
による。
辺X(;正方(_X)=矩形AD);中項面積と有理面積の和に等しい正方形の辺
となっている。
(case2e)
(case0e)
よって
有理面積
と
中項面積
か加えられる
ならば、
4種の
無理線分
、
すなわち
二項線分
か
第1の双中項線分
か
優線分
か
または
中項面積と有理面積の和に等しい正方形の辺
が生ずる。
(6)
(8)
(7)
(9)
による。
これが証明すべきことであった。
命題10ー71
は、
定義10ー4の補足 (有理面積、無理面積)、
定義の補足2(命題10ー23)(中項面積)
により
矩形AB、矩形CD
をとり、
命題の補足2(定義10ー3)(作図.任意の有理線分)、
命題6ー16の補足3(作図.線分上に矩形と等しい矩形)
により、
EF;有理線分、
点H(;矩形EG(EF、EH)=矩形AB
点K(;矩形HI(EF、HK)=矩形DC
をとると、
矩形AB>矩形CD、
正方(_EH)=正方(_HK)+正方(_X)、
X∩EH
なら、
辺Y(;正方(_Y)=矩形AD);二項線分
矩形AB>矩形CD、
正方(_EH)=正方(_HK)+正方(_X)、
X¬∩EH
なら、
辺Y(;正方(_Y)=矩形AD);優線分
矩形AB<矩形CD、
正方(_HK)=正方(_EH)+正方(_X)、
X∩EH
なら、
辺Y(;正方(_Y)=矩形AD);第1の双中項線分
矩形AB<矩形CD、
正方(_HK)=正方(_EH)+正方(_X)、
X¬∩EH
なら、
辺Y(;正方(_Y)=矩形AD)
;中項面積と有理面積の和に等しい正方形の辺
のことである。
命題10ー71
は推論用命題である。
前提
作図・構成
推論
定義
10-3補
,
10-4補
,
補2(題10-23)
,
補(題10-36)
,
10U-1
,
10U-2
,
10U-4
,
10U-5
公準
公理
1-7補
,
1-8補2
命題
6-16補3
,
補2(義10-3)
,
10-14助
5-14
,
6-1
,
10-11
,
10-13
,
10-20
,
10-22
,
10-23系
,
10-23補6
,
10-54
,
10-55
,
10-57
,
10-58
その他
2段階の場合分け
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