ユークリッド原論をどう読むか(10)
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ユークリッド原論
第6巻
命題6ー29
(作図.線分の平行四辺形外分割(コ))
線分の平行四辺形外分割(コ)
与えられた
線分
上に
与えられた
直線図形
に
等しく
、
与えられた
平行四辺形
に
相似
な
平行四辺形
だけはみだす、
平行四辺形
を描くこと。
線分は、
定義の補足(命題1ー1)
による。
直線図形は、
定義1ー19
による。
等しくは、
公理1ー7
による。
平行四辺形は、
定義1ー22の補足2
による。
相似は、
定義6ー1
による。
与えられた線分上に
与えられた図形に等しく、
与えられた平行四辺形に
相似な平行四辺形だけはみだす
平行四辺形をつくること
を、
線分の平行四辺形外分割
という。
(以下、
コメントでの定義(命題6ー29)
(線分の平行四辺形外分割(コ))という。)
この定義は、
コメントを簡潔に記述する
ためにだけ用いる。
原論の本文には登場しない。
与えられた
線分
をABとし、
Cを
AB上にそれに
等しい
平行四辺形
を描かねばならぬ
与えられた
図形
とし、
Dを
それに
相似
な
図形
だけ
はみださねばならぬ
図形
とせよ。
線分AB、直線図形C、平四D
をとっている。
このとき
線分
AB上に
直線図形
Cに
等しく
、
Dに
相似
な
平行四辺形
だけはみだす、
平行四辺形
を描かねばならぬ。
ABが
Eにおいて2
等分
されたとし、
【・・・(a)】
命題1ー10
(作図・線分の2等分)
による。
中点E(AB)
をとっている。
EB上に
Dに
相似
でかつ
相似な位置
にある
平行四辺形
BFが描かれ、
【・・・(b)】
命題6ー18
(作図.線分上に相似な直線図形)
による。
平四BF(_EB,∽平四D)
をとっている。
BF、Cの和に
等しく
Dに
相似
でかつ
相似な位置
にある
GHがつくられたとせよ。
【・・・(c)】
公準1ー2
(作図.直線の延長)、
公準1ー1の補足
(作図.任意の点をとる)
により
点T[延長EF]
をとる。
命題1ー45の補足2
(作図.直線図形,線分,直線角と平行四辺形)
により
点S(ET
;;平四FLRS(FL,FS;;=直線図形C))
をとり、
命題6ー25
(作図.直線図形に等しく別の直線図形に相似)
により
平四GKHU[∽平四D,=平四EBRS] をとっている。
平四GH;∽D,=平四BF+直線図形C
となっている。
そして
KHがFLに
KGがFEに対応するとせよ。
作図の設定である。
辺KH.平四GH:辺FL.平四BF
=辺KG.平四GH:辺FE.平四BF
となっている。
GHは
FBより
大きい
から、
(c)
による。
平四GH>平四FB
となっている。
KHもFLより、
KGもFEより
大きい
。
命題6ー20
(相似多角形の相似三角形分解と2乗の比)
により、
平四GH:平四FB
=(KH:FL)^2
となっている。
命題6ー11
(作図.比例第3項)
により
KH、FLに対し
第3の比例項F'L'を見いだすと、
平四GH:平四FB=KH:F'L'。
定義5ー5
(同じ比)
により
平四GH>平四FB
となり
KH>F'L'。
命題6ー22の補足
(3項比例の1,2項と1,3項の大等小)
により
KH>FL。
同様にして、
KG>FE。
KH>FL、
KG>FE
となっている。
FL、FEが延長され、
公準1ー2
(作図.直線の延長)
による。
FLMがKHに
等しく
され、
FENがKGに
等しく
され、
命題1ー3の補足
(作図.等しい線分となる点)
による。
点M(延長FL;;FM=KH)、
点N(延長FE;;FN=KG)
をとっている。
MNが完結されたとせよ。
「[平行四辺形の]完結」は、
コメント2(命題6ー14)
参照のこと。
平四MN(FM,FN)
をとっている。
そうすれば
MNは
GHに
等しく
、かつ
相似
である。
【・・・(1)】
命題1ー34
(平行四辺形の対辺・対角・対角線)、
定義6ー1
(相似)
により、
相似である。
また、
命題6ー20
(相似多角形の相似三角形分解と2乗の比)
により、
等しい。
平四MN;=平四GH,∽平四GH
となっている。
ところが
GHは
EL[すなわちBF]に
相似
である。
(b)
,
(c)
による。
平四GH∽平四EL
となっている。
それゆえ
MNもELに
相似
である。
命題6ー21
(同じ直線図形に相似な図形)
による。
平四MN∽平四EL
となっている。
ゆえに
ELは
MNと同じ
対角線
をはさんでいる。
命題6ー26
(共通角の平行四辺形の相似と対角線)
による。
平四EL(同じ対角線)平四MN
となっている。
それらの
対角線
FOがひかれ、
公準1ー1
(作図.直線)
による。
対角線FO
をとっている。
そして作図がなされたとせよ。
公準1ー2
(作図.直線の延長)
により
ABを延長すると
命題1ー30の補足
(交線に平行な線)
により、
MOと交わり、
その交点をPとする。
同様にして
LBを延長すると、
NOと交わり、
その交点をQとする。
さらに
平行四辺形ANを完結させる。
交点P(延長AB,MO)、
交点Q(延長LB,NO)、
平四AN(EA,AN)
をとっている。
GHは
EL[すなわちBF]、Cの和に
等しく
、
他方
GHは
MNに
等しい
から、
(c)
,
(1)
による。
平四GH=平四EL+直線図形C、
=平四MN
となっている。
MNもEL、Cの和に
等しい
。
公理1ー1
(同じものに等しい)
による。
平四MN=平四EL+直線図形C
となっている。
双方から
ELがひかれたとせよ。
そうすれば
残りの
グノーモーン
XWVはCに
等しい
。
【・・・(2)】
公理1ー3
(等しいものから等しいものをひく)
による。
グノーモーンXWV=直線図形C
となっている。
そして
AEはEBに
等しい
から、
(a)
による。
AE=EB
となっている。
ANもNBに、
すなわちLPに
等しい
。
命題6ー1
(同高の三角形、平行四辺形は底辺と比例)
による。
平四AN=平四NB
=平四LP
となっている。
双方に
EOが加えられたとせよ。
そうすれば
AO全体は
グノーモーン
VWXに
等しい
。
公理1ー2
(等しいものに等しいものを加える)
による。
平四AO=グノーモーンVWX
となっている。
ところが
グノーモーンVWXはCに
等しい
。
(2)
による。
グノーモーンVWX=直線図形C
となっている。
ゆえに
AOもCに
等しい
。
公理1ー1
(同じものに等しい)
による。
平四AO=直線図形C
となっている。
よって
与えられた
線分
AB上に
与えられた
直線図形
Cに
等しく
、
Dに
相似
な
平行四辺形
QPだけはみだす
平行四辺形
AOが描かれた、
平四AO
;平四(_AB(+)BP
;;=直線図形C
,≡平四AQ(+)平四QP;∽平四D)
となっている。
なぜなら
PQは
ELにも
相似
であるから。
「なぜなら・・・であるから」は、
コメント2(命題1ー16)
参照のこと。
前項、
(b)
、
命題6ー21
(同じ直線図形に相似な図形)
により、
平四PQ∽平四D、
となっている。
これが作図すべきものであった。
命題6ー29
は、
線分AB、直線図形C、平四D
に対して、
中点E(AB)、
平四BF(_EB,∽平四D)、
点S(延長EF
;;平四FLRS(FL,FS;;=直線図形C))、
平四GKHU[∽平四D,=平四EBRS]
をとると、
平四GH;∽D,=平四BF+直線図形C
となり、
点M(延長FL;;FM=KH)、
点N(延長FE;;FN=KG)、
平四MFNO(FM,FN)、
交点P(延長AB,MO)、
交点Q(延長LB,NO)、
平四AN(EA,AN)、
平四AO
;平四(_AB(+)BP
;;=直線図形C
,≡平四AQ(+)平四QP;∽平四D)
のことである。
命題6ー29
は作図用命題である。
前提
作図
推論
定義
5-5
,
6-1
公準
1-1
,
1-1補
,
1-2
公理
1-1
,
1-2
,
1-3
命題
1-3
,
1-10
,
1-30補
,
1-45補2
,
6-11
,
6-18
,
6-25
1-34
,
6-1
,
6-20
,
6-21
,
6-22補
,
6-26
その他
コ2(題6-14)
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