ユークリッド原論をどう読むか(10)
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ユークリッド原論
第6巻
命題6ー18(作図.線分上に相似な直線図形)
相似な位置
与えられた線分上に
与えられた直線図形に相似で
かつ
相似な位置にある
直線図形を描くこと。
- 線分は、
定義の補足(命題1ー1)
による。
- 直線図形は、
定義1ー19
による。
- 相似は、
定義6ー1
による。
-
相似な位置は、
指定された2線分が
対応する辺となるような
相似関係の位置
ということである。
また、
対応する辺は平行になっている場合が多い。
(以下、定義の補足(命題6ー18)という。)
与えられた線分をAB、
与えられた直線図形をCEとせよ。
-
準一般的な証明である。
直線図形は、
1つの頂点から
他の頂点へ対角線を引くことにより
三角形に分解できる。
分解した三角形を、
1つずつ、
相似でかつ相似な位置に
描いてゆくことにより、
どのような直線図形であっても
相似なものを描くことができる。
この作図の要点を
四角形を用いて示している。
準一般的な証明は、
コメント2(命題5ー1)参照のこと。
-
線分AB、
直線図形CE
をとっている。
このとき
線分AB上に
直線図形CEに相似で
かつ
相似な位置にある
直線図形を描かねばならぬ。
DFが結ばれたとし、
-
公準1ー1(作図.直線)
による。
-
対角線DF
をとっている。
線分AB上に
その上の点A、Bにおいて
Cにおける角に等しい角GABと、
角CDFに等しい角ABGがつくられたとせよ。
【・・・(a)】
-
命題1ー23(作図・直線上に指定された角)
により、
角GAB、ABG’をつくる。
命題1ー17(三角形の2角の和)
により、
角FCDとCDFとの和は
2直角より小さいから、
公理1ー2(等しいものに等しいものを加える)
、
公理1ー8の補足2(等より大・小、大・小に等)
により、
角GABとABG’との和は
2直角より小さい。
公準1ー5(平行線公準)
により、
AGとAG’とが交わるから、
その交点を改めてGとし、
遡って用いている。
-
点G[同向側(BA,DC,F);;∠GAB=∠FCD]、
点G'[同向側(AB,CD,F);;∠ABG'=∠CDF]、
交点G"(AG,BG')、
G">>G
をとっている。
そうすれば
残りの角CFDは
角AGBに等しい。
-
命題6ー5の補足(2組の角が等しい三角形は他の角も等しい)
による。
-
∠CFD=∠AGB
となっている。
ゆえに
三角形FCDは
三角形GABに等角である。
【・・・(1)】
したがって
[対応する辺が]
比例し、
FDがGBに対するように、
FCがGAに、
CDがABに対する。
【・・・(2)】
-
命題6ー4の補足(等角三角形の対応辺の比例)
による。
-
FD:GB=FC:GA=CD:AB
となっている。
また
線分BG上に
その上の点B、Gにおいて
角DFEに等しい角BGHと、
角FDEに等しい角GBHがつくられたとせよ。
2
-
(a)と同様である。
-
点H[同向側(BG,DF,E);;∠BGH=∠DFE]、
点H'[同向側(GB,FD,E);;∠GBH'=∠FDE]、
交点H"(GH,BH')、
H">>H
をとっている。
そうすれば
残りのEにおける角は
残りのHにおける角に等しい。
-
命題6ー5の補足(2組の角が等しい三角形は他の角も等しい)
による。
-
∠E=∠H
となっている。
ゆえに
三角形FDEは
三角形GHBに等角である。
【・・・(3)】
したがって
比例し、
FDがGBに対するように、
FEがGHに、
EDがHBに対する。
-
命題6ー4の補足(等角三角形の対応辺の比例)
による。
-
FD:GB=FE:GH
=ED:HB
となっている。
ところが
FDがGBに対するように、
FCがGAに、
CDがABに対する
ことが先に証明された。
- (2)
による。
-
FD:GB=FC:GA
=CD:AB
となっている。
それゆえ
FCがAGに対するように、
CDがABに、
FEがGHに、
また
EDがHBに対する。
【・・・(4)】
-
命題5ー11(同一の比に同じ比)
による。
-
FC:AG=CD:AB
=FE:GH=ED:HB
となっている。
そして
角CFDが角AGBに、
角DFEが角BGHに等しいから、
- (1)
(3)
による。
-
∠CFD=∠AGB、
∠DFE=∠BGH
となっている。
角CFE全体は
角AGH全体に等しい。
-
公理1ー2(等しいものに等しいものを加える)
による。
-
∠CFE=∠AGH
となっている。
同じ理由で
角CDEも角ABHに等しい。
ところが
Cにおける角もAにおける角に、
Eにおける角もHにおける角に等しい。
- (1)
(3)
による。
-
∠C=∠A、
∠E=∠H
となっている。
ゆえに
AHはCEに等角である。
そして
それらの等しい角をはさむ辺が比例する。
したがって
直線図形AHは直線図形CEに相似である。
-
定義6ー1(相似)
による。
-
直線図形AH(相似)直線図形CE
となっている。
よって
与えられた線分AB上に
与えられた直線図形CEに相似で
かつ
相似な位置にある
直線図形AHが描かれた。
これが作図すべきものであった。
- 命題6ー18は、
線分AB、
直線図形CE
に対して、
点G[同向側(BA,DC,F);;∠GAB=∠FCD]、
点G'[同向側(AB,CD,F);;∠ABG'=∠CDF]、
交点G"(AG,BG')、
G">>G
点H[同向側(BG,DF,E);;∠BGH=∠DFE]、
点H'[同向側(GB,FD,E);;∠GBH'=∠FDE]、
交点H"(GH,BH')、
H">>H
をとれば、
直線図形AH(相似)直線図形CE
のことである。
- 命題6ー18は作図用命題である。
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