ユークリッド原論をどう読むか(10)
頁末
前
次
目次
ユークリッド原論
第6巻
命題6ー20
(相似多角形の相似三角形分解と2乗の比)
(系.相似四辺形の比は対応辺の比の2乗)
相似
な
多角形
は
同数の、
相似
な、しかも全体と
同じ比
をもつ
三角形
に分けられ、
そして
多角形
は
多角形
に
対し
、
対応する
辺
が対応する
辺
に
対する
比
の
2乗の比
をもつ。
相似は、
定義6ー1
による。
多角形は、
定義1ー19の補足2
による。
同じ比は、
定義5ー5
による。
三角形は、
定義1ー19の補足2
による。
対する・ようには
定義の補足3(命題5ー11)
による。
辺は、
定義1ー19の補足
による。
比は、
定義5ー3
による。
2乗の比は、
定義5ー9
による。
ABCDE、FGHKLを
相似
な
多角形
とし、
ABがFGに対応するとせよ。
命題6ー18
による。
作図の際に用いた
相似な三角形だけでなく、
別の三角形の分割においても
成立する
というのがこの命題の趣旨である。
準一般的な証明である。
多角形
ABCDE、FGHKLは
同数の、
相似
な、しかも全体と
同じ比
をもつ
三角形
に分けられ、
そして
多角形
ABCDEは
多角形
FGHKLに
対し
、
ABがFGに
対する
比
の
2乗の比
をもつと主張する。
BE、EC、GL、LHが結ばれたとせよ。
公準1ー1
による。
そして
多角形
ABCDEは
多角形
FGHKLに
相似
であるから、
角
BAEは
角
GFLに
等しい
。
そして
BAがAEに
対するように
、
GFがFLに
対する
。
定義6ー1
による。
そこで
ABE、FGLは
1つの
角
を
等しく
し、
等しい
角
をはさむ
辺
が
比例
する
2つの
三角形
であるから、
三角形
ABEは
三角形
FGLに
等角
である。
命題6ー6
による。
それゆえ
相似
でもある。
【・・・(1)】
命題6ー4
による。
ゆえに
角
ABEは
角
FGLに
等しい
。
定義6ー1
による。
ところが
2つの
多角形
が
相似
であるから、
角
ABC全体も
角
FGHに
等しい
。
定義6ー1
による。
したがって
残りの
角
EBCは
角
LGHに
等しい
。
公理1ー3
による。
そして
三角形
ABE、FGLが
相似
であるため、
(1)
による。
EBがBAに
対するように
LGがGFに
対し
、
定義6ー1
による。
また
2つの
多角形
が
相似
であるため、
ABがBCに
対するように
FGがGHに
対する
から、
定義6ー1
による。
等間隔比
により
EBがBCに
対するように
、
LGがGHに
対し
、
命題5ー20
による。
等しい
角
EBC、LGHをはさむ
辺
が
比例
する。
それゆえ
三角形
EBCは
三角形
LGHに
等角
である。
【・・・(2)】
命題6ー6
による。
ゆえに
三角形
EBCは
三角形
LGHに
相似
でもある。
同じ理由で
三角形
ECDも
三角形
LHKに
相似
である。
したがって
相似
な
多角形
ABCDE、FGHKLは
同数の
相似
な
三角形
に分けられた。
(1)
(2)
にもよる。
それらの
三角形
が全体と
同じ比
をもつ、
すなわち
三角形
が
比例
し、
ABE、EBC、ECDが
前項
であり、
FGL、LGH、LHKが
それらに
対する
後項
であること、
そしてまた
多角形
ABCDEが
多角形
FGHKLに
対し
、
対応する
辺
が対応する
辺
に
対する
比
、
すなわち
ABがFGに
対する
比
の
2乗の比
をもつことを主張する。
AC、FHが結ばれたとせよ。
公準1ー1
による。
そうすれば
2つの
多角形
が
相似
であるため、
角
ABCは
角
FGHに
等しく
、
ABがBCに
対するように
、
FGがGHに
対する
から、
定義6ー1
による。
三角形
ABCは
三角形
FGHに
等角
である。
命題6ー6
による。
それゆえ
角
BACは
角
GFHに、
角
BCAは
角
GHFに
等しい
。
【・・・(3)】
定義6ー1
による。
そして
角
BAMは
角
GFNに
等しく
、
(3)
による。
角
ABMも
角
FGNに
等しい
から
(1)
による。
、残りの
角
AMBも残りの
角
FNGに
等しい
、
命題1ー32
,
公理1ー3
による。
ゆえに
三角形
ABMは
三角形
FGNに
等角
である。
定義の補足(命題4ー2)
による。
同様にして
三角形
BMCも
三角形
GNHに
等角
である
ことを証明しうる。
(2)
(3)
,
命題6ー5の補足,
定義6ー1
による。
したがって
比例
し、
AMがMBに
対するように
、
FNがNGに
対し
、
BMがMCに
対するように
GNがNHに
対する
。
定義6ー1
による。
したがって
等間隔比
により、
AMがMCに
対するように
、
FNがNHに
対する
。
【・・・(4)】
命題5ー20
による。
ところが
AMがMCに
対するように
、
ABMがMBCに、
AMEがEMCに
対する
。
なぜなら
互いに底
辺
に
比例
するから。
命題6ー1
による。
「なぜなら・・・であるから」については、
コメント2(命題1ー16)
参照のこと。
それゆえ
前項
の1つが
後項
の1つに
対するように
前項
の総和が
後項
の総和に
対する
。
命題5ー12
による。
ゆえに
三角形
AMBがBMCに
対するように
、
ABEがCBEに
対する
。
ところが
AMBがBMCに
対するように
AMがMCに
対する
。
命題6ー1
による。
したがって
AMがMCに
対するように
、
三角形
ABEが
三角形
EBCに
対する
。
命題5ー11
による。
同じ理由で
FNがNHに
対するように
、
三角形
FGLは
三角形
GLHに
対する
。
そして
AMがMCに
対するように
FNがNHに
対する
。
(4)
による。
それゆえ
三角形
ABEが
三角形
BECに
対するように
、
三角形
FGLが
三角形
GLHに
対し
、
命題5ー11
による。
いれかえて
三角形
ABEが
三角形
FGLに
対するように
、
三角形
BECが
三角形
LGHに
対する
。
命題5ー16
による。
同様にして、
BD、GKが結ばれるとき、
三角形
BECが
三角形
LGHに
対するように
、
三角形
ECDが
三角形
LHKに
対する
ことを証明しうる。
三角形ABE、BEC、ECDが前項となり、
FGL、LGH、LHKが後項となって
同じ比となる
ことが示された。 この後、
その比が
総和である相似な多角形の比であり、
しかも、
辺の比の2乗の比である
ことが示される。
そして
三角形
ABEが
三角形
FGLに
対するように
、
EBCがLGHに、
また
ECDがLHKに
対する
から、
前項
の1つが
後項
の1つに
対するように
、
前項
の総和が
後項
の総和に
対する
。
命題5ー12
による。
ゆえに
三角形
ABEが
三角形
FGLに
対するように
、
多角形
ABCDEが
多角形
FGHKLに
対する
。
ところが
三角形
ABEは
三角形
FGLに
対し
、
対応する
辺
ABが対応する
辺
FGの
2乗の比
をもつ。
なぜなら
相似
な
三角形
は
対応する
辺
の
2乗の比
をもつから。
命題6ー19
による。
したがって
多角形
ABCDEは
多角形
FGHKLに
対し
、
対応する
辺
ABが対応する
辺
FGに
対する
比
の
2乗の比
をもつ。 よって
相似
な
多角形
は
同数の、
相似
な、しかも全体と
同じ比
をもつ
三角形
に分けられ、
そして
多角形
は
多角形
に
対し
、
対応する
辺
が対応する
辺
に
対する
比
の
2乗の比
をもつ。
系
同様にして
四辺形
についても、
それらが対応する
辺
の
比
の
2乗の比
をもつ
(以下、
命題6ー20の系
(系.相似四辺形の比は対応辺の比の2乗)という。)
ことが証明されうる。
そして
三角形
についても先に証明された。
命題6ー19
による。
したがって一般に
相似
な
直線図形
は
互いに対応する
辺
の
2乗の比
をもつ。
準一般的な証明である。
コメント2(命題5ー1)
参照のこと。
これが証明すべきことであった。
前半で
相似な多角形が
相似な三角形に分解できる
ことが示されている。
そこから、
それぞれの相似な三角形の比が同じである
ことを示すことができる。
その方が
今日的には素直である
と考えられる。
すなわち、
命題6ー19
により、
三角形ABEは
三角形FGLに対し、
対応する辺BEが対応する辺GLの2乗の比をもつ。
また
三角形BECは
三角形GLHに対し、
対応する辺BEが対応する辺GLの2乗の比をもつ。
よって
命題5ー11
により、
三角形ABEが三角形FGLに対するように、
三角形BECが三角形GLHに対する。
同様に
三角形BECが三角形GLHに対するように、
三角形CEDが三角形HLKに対する
ことが証明できる。
したがって、
命題5ー12
により、
三角形ABEが三角形FGLに対するように、
前項の総和である多角形ABCDEが
後項の総和である多角形FGHKLに対する。
そして、
三角形ABEが三角形FGLに対し、
対応する辺ABが
対応する辺FGの2乗の比をもつので、
多角形ABCDEが多角形FGHKLに対し、
同じ比をもつことが証明される。
命題6ー20の系 (系.相似四辺形の比は対応辺の比の2乗)
前提
作図
推論
定義
公準
公理
命題
6-19
,
6-20
その他
命題6ー20
は推論用命題である。
前提
作図
推論
定義
補(題4-2)
,
6-1
公準
1-1
公理
1-3
命題
6-18
1-32
,
5-11
,
5-12
,
5-16
,
5-20
,
6-4
,
6-5補
,
6-6
,
6-19
その他
前
次
目次
頁頭