ユークリッド原論をどう読むか(3)
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ユークリッド原論
第1巻
命題1ー30(平行の平行)
(交線に平行な線)
同一の直線に平行な2直線は
また互いに平行である。
直線AB、CDの双方が
EFに平行であるとせよ。
ABはCDに平行であると主張する。
直線GKがそれらに交わるとせよ。
- 平行な2直線と交わる直線は
存在する。
なぜなら、
公準1ー1の補足(作図.任意の点をとる)
により
それぞれの直線上に1点ずつとり、
公準1ー1(作図.直線)
により2点を結び、
公準1ー2(作図.直線の延長)
により直線に延長すればよい。
しかし
3本目の直線に交わるかどうかは
保証がない。
ここは、
原論のギャップである。
このギャップを埋めるために
「異なる2直線が1点で交わるとき、
一方の直線に平行な直線は
他方の直線と交わり、
交点をとることができる。」
(以下、命題1ー30の補足(交線に平行な線)という)
を証明する。
2直線AB、CDがGで交わり、
2直線AB、EFが平行であるならば、
CDとEFは交わると主張する。
EF上に
公準1ー1の補足(作図.任意の点をとる)
により点Hをとり、
公準1ー1(作図.直線)
によりGとHを結び
CDとGHがGで交わるようにする。
直線CDは、
GでABとGHと双方に交わるから、
定義1ー8の補足(交わる(直線))
により
角AGHを通る場合]
角BGHを通る場合]
がある。
[
角AGHを通る場合]
AB、EFは平行だから、
命題1ー29(平行と錯角、内対角、同側内角)
により
角BGHと角GHFの和は2直角である。
今、
公理1ー8(大きい)
により、
角BGHは角DGHより大きい。
したがって、
公理1ー4(不等なものに等しいものを加える)
により
角BGHと角GHFの和は
角DGHと角GHFの和より大きいので、
公理1ー8の補足2(等より大・小、大・小に等)
により
角DGHと角GHFの和は2直角より小さい。
公準1ー5(平行線公準)
により、
2直線CDとEGは交わる。
[
角AGHを通る場合]
角AGHを通る場合も同様に論証できる。
ゆえに
[2つの場合より]
2直線AB、CDがGで交わり、
2直線AB、EFが平行であるならば、
CDとEFは交わる。
これで命題1ー30の補足が証明された。
- 公準1ー1の補足(作図.任意の点をとる)
により、
CD上にH、EF上にKをとり、
公準1ー1(作図.直線)
によりHKを結び、
公準1ー2(作図.直線の延長)
によりHKを延長する。
命題1ー30の補足(交線に平行な線)
により、
EFと1点で交わるHKは
EFに平行なABと交わる。
その交点をGとすれば、
直線EFと、
それに平行な2直線AB、CDとの3直線に交わる
直線GKが存在する。
-
直線GK╂(AB、CD、EF)、
交点G(GK,AB)、
交点H(GK,CD)、
交点K(GK,EF)
をとっている。
直線GKが
平行な2直線AB、EFに交わる
から、
角AGKは角GKFに等しい。
【・・・(1)】
また
直線GKが
平行な2直線EF、CDに交わる
から、
角GHDは角GKFに等しい。
- 命題1ー29(平行と錯角、内対角、同側内角)
による。
-
∠GHD=∠GKF
となっている。
そして
角AGKが
角GKFに等しいことも証明された。
- (1)
による。
-
∠AGK=∠GKF
となっている。
ゆえに
角AGKも角GHDに等しい。
- 公理1ー1(同じものに等しい)
による。
-
∠AGK=∠GHD
となっている。
そして錯角である。
したがって
ABはCDに平行である。
- 命題1ー27(錯角と平行)
による。
-
AB‖CD
となっている。
これが証明すべきことであった。
- この命題1ー30は
この命題1ー30の補足(交線に平行な線)
により、
より簡潔に次のように証明される。
背理法の仮定として、
AB、CDが平行でないとすると、
定義1ー23(平行(線))
により、
点Lで交わる。
AB、EFが、
命題の仮定により平行である
から、
この命題の補足により、
CDはEFに交わる。
しかし、
CDとEFは
命題の仮定により平行である
から、
矛盾である。
背理法により
AB、CDは平行である。
- この命題1ー30から
この命題1ー30の補足を
次のように論証することもできる。
背理法の仮定として、
CDとEFが交わらないとすると、
CDとEFは平行である。
ABとEFは、
命題1ー30の補足の仮定により、
平行である。
したがって
ABとCDは
この命題1ー30により平行となる。
しかし、
ABとCDは
この命題の補足の仮定により
交わっているから、
矛盾である。
背理法により
CDとEFは交わる。
- したがって、
この命題1ー30と
この命題1ー30の補足は同値である。
- 命題1-30補は、
直線AB、CD、EF
について、
AB╂CD、
AB‖EF
ならば、
CD╂CD
のことである。
- 命題1-30は、
直線AB、CD、EF
について、
AB‖EF、
CD‖EF
ならば、
AB‖CD
のことである。
-
命題1ー30の補足(交線に平行な線)
- 命題1-30は推論用命題である。
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