ユークリッド原論をどう読むか(9)
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ユークリッド原論
第6巻
□定義
<相似>
定義6ー1(相似)
相似な直線図形とは、
角がそれぞれ等しく
かつ
等しい角をはさむ辺が比例する
ものである。
- 円においては、
定義3ー11
において、
相似な切片が定義されている。
- ここの比例を論じるために、
第5巻が準備されている。
定義6ー2(逆比例)
2つの図形の[対応する2辺の]双方に
前項と後項の比があるとき、
2つの図形[の各辺]は逆比例する。
- 反比例ともいう。
- 一方の図形にA、Bの2辺があり、
他方にC、Dがあって、
A:C=D:B
となっているとき、
(AとB)と(CとD)とのことをいう。
それぞれの比の前項、後項に
双方の辺が前後を変えてある。
図形が三角形の場合、
一定の角をはさむ辺が逆比例(反比例)すれば、
面積が一定であり、
逆も成立する。
命題6ー15参照のこと。
-
今日のような
比例定数を想定していないので、
上記のような表現となる。
定義6ー3(外中比)
線分は、
不等な部分に分けられ、
全体が大きい部分に対するように、
大きい部分が小さい部分に対するとき、
外中比に分けられたといわれる。
- いわゆる黄金比のことである。
-
外中比という用語は、
この巻がふさわしい。
命題6ー30が、
第6巻における比例を活用した
作図であるが、
面積を活用した
命題2ー11の作図の方が
簡明である。
比例について
外項の積と内項の積が等しい
という見方をすれば、
矩形の面積に関する命題となる。
この観点からすれば、
第2巻に登場する。
定義6ー4(高さ)
すべての図形において
高さとは
頂点から底辺にひかれた垂線である。
-
底辺とは、
高さの基準であり、
頂点とは、
底辺に対して、
高さを定める点であり、
角をなす2つの辺の交点である。
(以下、定義6ー4の補足
(底辺・頂点)という。)
原論では、
底辺に対応するものとして、
頂点という用語が
ここで初めて登場する。
底辺の初出は、
命題1ー4(2辺挟角相等)
「もし
二つの三角形が
2辺が2辺にそれぞれ等しく、
その等しい2辺に
はさまれる角が等しい
ならば、
底辺は底辺に等しく、
三角形は三角形に等しく、
残りの2角は残りの2角に、
すなわち
等しい辺が対する角は
それぞれ等しい
であろう。」
定義6ー5(合成・積)
比の大きさがかけあわされて
ある比をつくるとき、
この比は
比から合成される
といわれる。
- [比の]積ともいう。
AのBに対する比と
CのDに対する比との積
(C:D)×(A:B)は、
命題6ー12(作図.比例第4項)
により
CがDに対するように、
Bに対するEをもとめたとき、
AのEに対する比(A:E)
のことである。
すなわち、
(C:D)×(A:B)
=(B:E)×(A:B)
=A:E
命題6ー23参照のこと。
- 定義5ー3
では、
量に関して大きさが語られる。
ここでは、
比に関して大きさが語られる。
-
同じ比との合成・積は
同じ比である。
(以下、公理の補足(定義6ー5)(同じ比の合成・積は同じ)という)
なぜなら、
以下の通りである。
C:D=E:F
とする。
前節、
命題5ー9(同一比の量)
により
B:G=C:D
となるGと
B:H=E:F
となるHについて
G=H
となる。
定義6ー5(合成・積)
により、
B:G=C:D
となるGについて
(C:D)×(A:B)
=(B:G)×(A:B)
=A:G
となり、
B:H=E:F
となるHについて
(E:F)×(A:B)
=(B:H)×(A:B)
=A:H
となっている。
前節、前々節
命題5ー7(同一量の比)、
命題5ー11(同一の比に同じ比)
により、
(C:D)×(A:B)
=(E:F)×(A:B)
となる。
公理の補足2(定義6ー5)(比の合成・積は可換)
により、
(A:B)×(C:D)
=(A:B)×(E:F)
ともなる。
-
第1の比と第2の比の合成・積と、
第2の比と第1の比の合成・積は、
等しい。
(以下、公理の補足2(定義6ー5)
(比の合成・積は可換)という。)
なぜなら、
以下の通りである。
定義6ー5(合成・積)
により、
B:O=C:D
となるOに対して
(C:D)×(A:B)
=A:O、
D:P=A:B
となるPに対して
(A:B)×(C:D)
=C:P
となっている。
第1の3つの量、A、B、Oと
第2の3つの量、C、D、P
において、
A:B=D:P、B:O=C:D
となっているから、
命題5ー23(乱比例の等間隔比は同じ比)
により、
A:O=C:P
となっている。
前節と前々節
命題5ー7(同一量の比)、
命題5ー11(同一の比に同じ比)
により、
(C:D)×(A:B)
=(A:B)×(C:D)
となる。
-
大きい(小さい)比との
合成・積の方が大きい(小さい)。
(以下、公理の補足3(定義6ー5)
(大きい(小さい)比との合成・積の方が大(小さい))という。)
なぜなら、
以下の通りである。
C:D>E:F
とすると、
命題5ー10(比の大小と量の大小)
により、
B:O=C:D
となるOと、
B:P=E:F
となるPとは、
O<P
となっている。
定義6ー5(合成・積)
により、
B:O=C:D
となるOに対して
(C:D)×(A:B)
=A:O、
B:P=E:F
となるPに対して
(E:F)×(A:B)
=A:P
となっている。
前節、前々節、
命題5ー8(量の大小と比の大小)
により、
A:O>A:P
となり、
命題5ー13の補足4(異なる比に同じ比は異なる)
により、
(C:D)×(A:B)
>(E:F)×(A:B)
となる。
公理の補足2(定義6ー5) (比の合成・積は可換)
により、
(A:B)×(C:D)
>(A:B)×(E:F)
ともなる。
小さい比との
合成・積の方が小さい
ことも同様である。
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