ユークリッド原論をどう読むか(3)
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ユークリッド原論
第1巻
命題1ー29
(平行と錯角、内対角、同側内角)
一つの
直線
が
二つの
平行線
に
交わっ
てなす
錯角
は
互いに
等しく
、
外角
は
内対角
に
等しく
、
同側内角
の和は2
直角
に
等しい
。
直線は、
定義1ー4
による。
平行線は、
定義1ー23
による。
交わるは、
定義1ー8の補足
による。
錯角は、
定義の補足(命題1ー27)
による。
等しいは、
公理1ー7
による。
外角、内対角は、
通常、
定義の補足(命題1ー16)
によるが、
この場合は、
定義の補足(命題1ー28)
による。
同じ側は
定義1ー7の補足
による。
内角は、
定義の補足(公準1ー5)
による。
直角は、
定義1ー10
による。
直線
EFが
平行線
AB、CDに
交わる
とせよ。
直線AB
に対して
平行な直線CDがあり、
直線EFが
AB、CDに交わっている
と仮想して、
推論をすすめる。
錯角
AGH、GHDは
等しく
、
外角
EGBは
内対角
GHDに
等しく
、
同側内角
BGH、GHDの和は
2
直角
に
等しい
と主張する。
もし
角
AGHが
角
GHDに
等しく
ないならば、
背理法の仮定である。
∠AGH≠∠GHD
としている。
それらの一方が
大きい
。
公理1ー7の補足
(線分・角は大か等か小)
による。
角AGHが、角GHDと比べて
大きい場合
小さい場合
等しい場合
がある。
[大きい場合]
角
AGHが
大きい
とせよ。
【・・・(a)】
角GHDが大きい場合も以下と同様の推論ができる。
∠AGH>∠GHD
としている。
双方に
角
BGHが加えられたとせよ。
そうすれば
角
AGH、BGHの和は
角
BGH、GHDの和より
大きい
。
(a)
,
公理1ー4
(不等なものに等しいものを加える)
による。
∠AGH+∠BGH>∠BGH+∠GHD
となっている。
ところが
角
AGH、BGHの和は
2
直角
に
等しい
。
命題1ー13
(直線と2直角1)
による。
∠AGH+∠BGH=2×∠R
となっている。
ゆえに
角
BGH、GHDの和は
2
直角
より
小さい
。
公理1ー8の補足2
(等より大・小、大・小に等)
による。
∠BGH+∠GHD<2×∠R
となっている。
そして
その和が
2
直角
より
小さい
2
角
から
限りなく延長された2
直線
は
交わる
。
それゆえ
AB、CDは限りなく延長されるとき
交わる
であろう。
公準1ー5
(平行線公準)
による。
公準1ー5
(平行線公準)
はここで初めて登場する。
「2直線の交点をとることができる」
と表現すれば、
公準は
作図のためのものであるという本質に
よくマッチする。
ところが
それらは
平行
であると
仮定されているから
命題の設定
による。
交わら
ない。
定義1ー23
(平行(線))
による。
[小さいきい場合も、
同様に証明できる。]
角GHDが大きい場合についての論証を省略している。
[3つの場合のうち、
2つの場合が不可能である。]
ゆえに
角
AGHは
角
GHDに
不等
ではない。
背理法による。
したがって
等しい
。
【・・・(1)】
公理1ー8
(大きい)
による。
∠AGH=∠GHD
となっている。
また
角
AGHは
角
EGBに
等しい
。
命題1ー15
(対頂角)
による。
したがって
角
EGBも
角
GHDに
等しい
。
(1)
,
公理1ー1
(同じものに等しい)
による。
∠EGB=∠GHD
となっている。
双方に
角
BGHが加えられたとせよ。
そうすれば
角
EGB、BGHの和は
角
BGH、GHDの和に
等しい
。
公理1ー2
(等しいものに等しいものを加える)
による。
∠EGB+∠BGH=∠BGH+∠GHD
となっている。
ところが
角
EGB、BGHの和は
2
直角
に
等しい
。
命題1ー13
(直線と2直角1)
による。
∠EGB+∠BGH=2×∠R
となっている。
ゆえに
角
BGH、GHDの和も
2
直角
に
等しい
。
公理1ー1
(同じものに等しい)
による。
∠BGH+∠GHD=2×∠R
となっている。
よって
一つの
直線
が
二つの
平行線
に
交わっ
てなす
錯角は
互いに
等しく
、
外角は
内対角
に
等しく
、
同側内角
の和は2
直角
に
等しい
。
これが証明すべきことであった。
公準1ー5
(平行線公準)
が初めて登場する命題である。
命題1ー29
は
公準1ー5
(平行線公準)
と同値である。
命題1ー29
が成立すると、
その対偶命題
「1直線が2直線に交わっているとき、
同側内角が2直角でないなら、
2直線は平行でない」
が成立する。
今、
同側内角を2直角より小さいとするならば、
対偶命題より2直線は平行でなく、
定義1ー23
(平行(線))
により交点が存在する。
命題1ー17
(三角形の2角の和)
により
交点のある側が2直角より小さい。
よって
公準1ー5
(平行線公準)
が成立する。
逆に
公準1ー5
(平行線公準)
が成立すると、
1直線が2直線に交わっているとき、
同側内角が2直角でないなら、
どちらかの同側内角が
2直角より小さくなるので、
2直線は平行でない。
よって、
その対偶命題である
命題1ー29
が成立する。
命題1-29
は、
直線AB、CD、EF
について、
AB‖CD、
点G(EF,AB)、
点H(EF,CD)、
ならば、
∠AGH=∠GHD、
外角EGB=内対角GHD、
同側内角∠BGH+∠GHD=2×∠R
のことである。
命題1-29
は推論用命題である。
前提
作図
推論
定義
1-23
公準
1-5
公理
1-1
、
1-2
、
1-4
、
1-7補
、
1-8
、
1-8補2
命題
1-13
、
1-15
その他
背理法、場合分け
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