ユークリッド原論をどう読むか(16)
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ユークリッド原論
第10巻
命題10ー110
(中項面積から通約できない中項面積を引いた残りの面積に等しい正方形の辺は第2の中項余線分か中項面積の差に等しい正方形の辺)
中項面積
から全体と
通約
できない
中項面積
が
ひかれる
ならば,
残りの2種の
無理線分
,
すなわち
第2の中項余線分
か
または
二つの中項面積の差に等しい正方形の辺
が
生ずる。
中項面積は、
定義の補足2(命題10ー23)
による。
通約は、
定義10ー1
による。
無理線分は、
定義10ー4
による。
第2の中項余線分は、
定義の補足(命題10ー75)
による。
二つの中項面積の差に等しい正方形の辺は、
定義の補足(命題10ー78)
による。
先の図形におけると同様に
中項面積
BCから
全体と
通約
できない
中項面積
BDが
ひかれた
とせよ。
前命題と同様にということである。
2つの中項面積は、この段階では仮想的である。
命題10ー108、命題10ー109においては、
一般的な有理面積、中項面積を取ることが
原論が構成する世界において可能である。
しかし、
命題10ー110における
通約できない2つの中項面積を取ることは、
これまでの理論構成では、
命題10ー28
(作図.2中項線分;矩形が中項面積、平方でのみ通約)、
命題10ー35
(作図.2線分;平方で非通約,平方和が中項面積,矩形は中項面積で平方和と非通約)
によって取る以外になく、
それは、
命題10ー75
(中項線分から平方のみ通約で中項面積をかこむ中項線分を引くと第2の中項余線分)、
命題10ー78
(平方和が中項面積、かこむ矩形が中項面積、平方で非通約の2線分の差は2中項面積の差に等しい正方形の辺)
に直結することになり、
本命題の結論を先取りすることになる
から、
一般的に構成することができないのである。
なお、さらに、
この後に以下の内容が入るであろう。
「有理線分FGが
定められ,
FG上にBC
に等しい
矩形GHが
つくられ,
DB
に等しい
GKが
つくられたとせよ。」
[......(1)]
命題の補足2(定義10ー3)
(作図.任意の有理線分)
により、
FGをとり、
命題6ー16の補足3
(作図.線分上に矩形と等しい矩形)
により、
FH、FKをとる。
矩形BC(AB、AC)、矩形BD(AB、AD);中項面積、
矩形BC(AB、AC)¬∩矩形BD(AB、AD)
FG;有理線分、
矩形BC=矩形GH
矩形DB=矩形GK
となっている。
ECに
等し
い正方形の辺は
2種の
無理線分
の一,
すなわち
第2の中項余線分
か
または
二つの中項面積の差に
等し
い正方形の辺
になる
と主張する。
BC、BDの双方は
中項面積
であり,
BCは
BDと
通約
できない
前節
による。
矩形BC、矩形BD;中項面積、
矩形BC¬∩矩形BD
となっている。
から,
その結果
FH, FKの双方は
有理線分
であり
FGと
長さにおいて通約
できないであろう。
[......(2)]
前節、前々節、
命題10ー20
(有理線分上の有理面積の矩形幅は底辺と長さで通約)
命題10ー22
(中項線分上正方形に等矩形で底辺有理線分なら幅は有理で非通約)
による。
FH;有理線分、∩FG、
FK;有理線分、¬∩FG
となっている。
そして
BCは
BDと,
すなわち
GHは
GKと
通約
できない
命題の設定、
(1)
命題10ー13
(通約量と非通約なら非通約)
による。
BC¬∩BD、
GH¬∩GK
となっている。
から,
HFも
FKと
通約
できない。
前節、
命題6ー1
(同高の三角形、平行四辺形は底辺と比例)
による。
HF¬∩FK
となっている。
したがって
FH, FKは
平方においてのみ通約
できる
有理線分
である。
前節、
(2)
による。
FH∩^^2 FK
となっている。
ゆえに
FKは
余線分
である。
[......(4)]
前節、
定義の補足(命題10ー73)
(余線分)
となっている。
FK;余線分、
FH、FK;有理線分、
FH∩^^2 FK
となっている。
そこで
[
HF上の
正方形
は
FK上の
正方形
より
HFと
通約
できる
か
または
通約
できない
線分
上の
正方形
だけ
大き
い。
[......(3)]
]
前命題にならって、
この1文を挿入する。
場合分けを明示するためである。
命題10ー14助
(作図.線分上の正方形の差となる正方形の辺)
による。
正方(_HF)=正方(_FK)+正方(_X)、
X∩HF xor ¬∩HF
となっている。
もし
FH上の
正方形
が
FK上の
正方形
より
HFと
通約
できる
線分
上の
正方形
だけ
大き
く
FH, FKのいずれも
定められた
有理線分
FGと
長さにおいて通約
できない
ならば,
第1の場合である。
前節、
(2)
による。
正方(_HF)=正方(_FK)+正方(_X)、
X∩HF
FH、FK¬∩FG
となっている。
KHは
第3の余線分
である。
前節、
(4)
定義10Vー3
(第3の余線分)
による。
KH;第3の余線分、
FH、FK;有理線分、
正方(_HF)=正方(_FK)+正方(_X)、
X∩HF
FH、FK¬∩FG
となっている。
ところが
KLは
有理線分
であり,
(1)
による。
KL;有理線分
となっている。
有理線分
と
第3の余線分
によって
かこまれる
矩形
は
無理面積
であり,
それ
に
等し
い
正方形
の
辺
は
無理線分
であり,
第2の中項余線分
とよばれる。
命題10ー93
(有理線分と第3の余線分の矩形に等しい正方形の辺は第2の中項余線分)
による。
したがって
LH,
すなわち
EC
に
等し
い
正方形
の
辺
は
第2の中項余線分
である。
前節、前々節、
(1)
による。
辺.正方(_;=矩形LH=矩形EC);第2の中項余線分
となっている。
ところが
もし
FH上の
正方形
が
FK上の
正方形
より
HFと
通約
できない
線分
上の
正方形
だけ
大き
く
HF、FKのいずれも
FGと
長さにおいて通約
できない
第2の場合である。
(2)
(3)
による。
正方(_HF)=正方(_FK)+正方(_X)、
X∩HF
FH、FK¬∩FG
となっている。
ならば,
KHは
第6の余線分
である。
前節、
(4)
定義10Vー6
(第6の余線分)
による。
KH;第6の余線分
FH、FK;有理線分、
正方(_HF)=正方(_FK)+正方(_X)、
X∩HF
FH、FK¬∩FG
となっている。
そして
有理線分
と
第6の余線分
によって
かこまれる
矩形
に
等し
い
正方形
の
辺
は
ニつの中項面積の差に等しい正方形の辺
である。
命題10ー96
(有理線分と第6の余線分の矩形に等しい正方形の辺は中項面積の差に等しい正方形の辺)
による。
したがって
LH
すなわち
EC
に
等し
い
正方形
の
辺
は
二つの中項面積の差に等しい正方形の辺
である。
前節、前々節、
(1)
による。
辺.正方(_;=矩形LH=矩形EC);二つの中項面積の差に等しい正方形の辺
となっている。
これが証明すべきことであった。
本命題
により、
中項面積から
通約
できない
中項面積を
引いた
残りの面積に等しい正方形の辺は
第2の中項余線分か
中項面積の差に等しい正方形の辺
のみである
ことがわかり、
通約
できない
2つの中項面積を
作図する
場合、
第2の中項余線分か
中項面積の差に等しい正方形の辺を
考慮すれば十分である
ことがわかり、
現実的に
作図できるようになる。
すなわち、
第2の中項余線分
となる場合は以下による。
命題10ー28
(作図.2中項線分;矩形が中項面積、平方でのみ通約)
により、
2中項線分
をとり、
大きい方をFH、
小さい方をFK
として、
KH=FHーFK
をとると、
命題10ー75
(中項線分から平方のみ通約で中項面積をかこむ中項線分を引くと第2の中項余線分)
により
KHは第2の中項余線分
となり、
命題2ー7
(差の平方)
により、
正方(_KH)
=正方(_FH)+正方(_FK)ー2矩形(FH、FK)
となり、
命題10ー28
(作図.2中項線分;矩形が中項面積、平方でのみ通約)の設定
により、
正方(_FH)+正方(_FK)と2矩形(FH、FK)は
通約できない中項面積
となる。
また、
中項面積の差に等しい正方形の辺
となる場合は、以下による。
命題10ー35
(作図.2線分;平方で非通約,平方和が中項面積,矩形は中項面積で平方和と非通約)
により、
2線分を
とり、
大きい方をAB、
小さい方をBC
として、
KH=FHーFK
をとると、
命題10ー78
(平方和が中項面積、かこむ矩形が中項面積、平方で非通約の2線分の差は2中項面積の差に等しい正方形の辺)
により
KHは中項面積の差に等しい正方形の辺
となり、
命題2ー7
(差の平方)
により、
正方(_KH)
=正方(_FH)+正方(_FK)ー2矩形(FH、FK)
となり、
命題10ー35
(作図.2線分;平方で非通約,平方和が中項面積,矩形は中項面積で平方和と非通約)の設定
により、
正方(_FH)+正方(_FK)と2矩形(FH、FK)は
通約できない中項面積
となる。
命題10ー110
は、
何等かの方法
により、
通約
できない
2つの中項面積、矩形BC、BDを
とり、
命題の補足2(定義10ー3)
(作図.任意の有理線分)
により、
FGをとり、
命題6ー16の補足3
(作図.線分上に矩形と等しい矩形)
により、
FH(;矩形(FG、FH)=矩形BC)、
FK(;矩形(FG、FK)=矩形BD)
をとると、
辺.正方(_;=矩形LH=矩形EC);二つの中項面積の差に等しい正方形の辺
のことである。
命題10ー110
は推論用命題である。
前提
作図・構成
推論
定義
補(題10-73)
,
10V-3
,
10V-6
公準
公理
命題
6-16補3
,
補2(義10-3)
,
10-14助
6-1
,
10-13
,
10-20
,
10-22
,
10-93
,
10-96
その他
場合分け
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