ユークリッド原論をどう読むか(3)
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ユークリッド原論
第1巻
命題1ー32(三角形の内対角・内角の和)
すべての三角形において
1辺が延長されるとき、
外角は二つの内対角の和に等しく、
三角形の三つの内角の和は2直角に等しい。
ABCを三角形とし、
その1辺BCがDまで延長されたとせよ。
- 公準1ー2(作図.直線の延長)
による。
-
三角形ABC、
点D[延長BC]、
線分CD
をとっている。
外角ACDは
二つの内対角CAB、ABCの和に等しく、
三角形の三つの内角ABC、BCA、CABの和は
2直角に等しいと主張する。
点Cを通り
線分ABに平行に
CEがひかれたとせよ。
【・・・(a)】
- 命題1ー31(作図・平行線)
による。
-
平行線CE(C,AB)
をとっている。
そうすれば
ABはCEに平行であり、
ACが
それらに交わるから、
錯角BAC、ACEは互いに等しい。
【・・・(1)】
- 公準1ー5(平行線公準)
を認めなくても、
直線ABと点Cについて、
直線ACを使って平行線CEを引くことができる。
-
∠BAC=∠ACE
となっている。
また
ABはCEに平行であり、
線分BDがそれらに交わるから、
外角ECDは内対角ABCに等しい。
- 命題1ー29(平行と錯角、内対角、同側内角)
による。
- 公準1ー5(平行線公準)
を認めないと
平行線CEにおいて
外角ECDと内対角ABCが等しいとはいえない。
言い換えると、
直線ABと点Bについて、
直線BCを使って引いた平行線が
CEと一致することを論証できない。
-
∠ECD=∠ABC
となっている。
そして
角ACEが角BACに等しいことも
先に証明された。
- (1)
による。
-
∠ACE=∠BAC
となっている。
ゆえに
角ACD全体は
二つの内対角BAC、ABCの和に等しい。
- 公理1ー2(等しいものに等しいものを加える)
による。
-
∠ACD=∠BAC+∠ABC
となっている。
双方に
角ACBが加えられたとせよ。
そうすれば
角ACD、ACBの和は
三つの角ABC、BCA、CABの和に等しい。
- 公理1ー2(等しいものに等しいものを加える)
による。
∠ACD+∠ACB
=∠ABC+∠BCA+∠CAB
となっている。
ゆえに
角ABC、BCA、CABの和も
2直角に等しい。
よって
すべての三角形において
1辺が延長されるとき、
外角は二つの内対角の和に等しく、
三角形の三つの内角の和は2直角に等しい。
これが証明すべきことであった。
- 命題1ー32(三角形の内対角・内角の和)
により、
命題1ー31(作図・平行線)
における疑問Aが解決される。
命題1ー30(平行の平行)
により、
直線BCに平行で
点Aを通り、
錯角BDAとFADが等しい直線EFを引く。
公準1ー1(作図.直線)
により、
直線BC上にあって
Dと異なる点Gとを結ぶ。
このとき、
錯角BGAとFAGとが等しいことを
次のように示すことができる。
命題1ー32(三角形の内対角・内角の和)
により、
角BDAは
内対角DAGとDGAの和に等しくなる。
公理1ー1(同じものに等しい)
により、
角FADはDAGとDGAの和に等しくなる。
公理1ー7(等しい)
により、
角FADはFAGとDAGの和に等しくなる。
公理1ー3(等しいものから等しいものをひく)
により、
角DGAとFAGは等しくなる。
よって、
角BGAとFAGとが等しい
- 命題1ー32(三角形の内対角・内角の和)
から
公準1ー5(平行線公準)
を
以下のように導くことができる。
2直線AB、CDに
直線EFが
それぞれG、Hで交わっており、
同側内角BGHとGHDの和が
2直角より小さいものとする。
命題1ー31(作図・平行線)
(公準1ー5(平行線公準)
を前提としない)
により、
Gを通りCDに平行な直線KLを、
錯角GHCとLGHが等しくなるように引く。
このとき、
角GHDとLGHの和は
角GHDとGHCの和に等しく、
後者は
2直角であるから、
公理1ー2(等しいものに等しいものを加える)
により、
角GHDとLGHの和も2直角である。
角GHDとBGHの和は
2直角より小さいので、
公理1ー8の補足(小さい)
により、
角BGHはLGHより小さい。
よって
半直線GBは角LGHの内部にある。
命題1ー2(作図・線分)
により、
半直線HD上に点H1を、
HH1がHGと等しくなるようにとり、
公準1ー1(作図.直線)
によりGとH1を結ぶ。
三角形HGH1は
HGとHH1が等しい二等辺三角形であるから、
命題1ー5(2等辺三角形の底角)
により、
角HGH1とHH1Gは等しい。
また、
命題1ー32(三角形の内対角・内角の和)
により、
角HGH1とHH1Gの和は角CHGと等しい。
平行線を引く作図の設定により、
錯角CHGとLGHは等しいので、
公理1ー1(同じものに等しい)
により、
角HGH1とHH1Gの和は角LGHに等しい。
公理1ー3(等しいものから等しいものをひく)
により、
角LGH1は角HGH1と等しくなるので、
公理1ー1(同じものに等しい)
により
角HGH1とLGH1は等しく、
GH1は角LGHの2等分線となっている。
次に、
命題1ー2(作図・線分)
により、
半直線H1D上に、
点H2をH1H2がH1Gと等しくなるようにとり、
公準1ー1(作図.直線)
により
GとH1を結ぶと、
GH2が
角LGH1の2等分線となることが
同様にしてわかる。
同じ操作をn回繰り返すと、
公準1ー2の補足(アルキメデスの原理)
により
CD上に点Hnがあって、
角LGHnは角LGHの1/2nとなるので、
十分大きいmをとると角LGHmは
角LGBより小さくなる。
このとき、
HmはCD上にあり、
公理1ー8の補足(小さい)
により、
角BGHはHGHmより小さくなるので、
半直線GBは角HGHmの内部にある。
よって、
定義1ー14の補足(交わる(図形))
により、
GBはCDと交点をもつ。
すなわち
直線EFについて
同側内角が2直角より小さい側で
交点をもつ。
よって公準1ー5(平行線公準)
が成立する。
- したがって
命題1ー29(平行と錯角、内対角、同側内角)、
命題1ー30(平行の平行)、
命題1ー30の補足(交線に平行な線)
、
命題1ー31の補足(与点を通る平行線は唯一)、
命題1ー32(三角形の内対角・内角の和)
は
公準1ー5(平行線公準)
と同値である。
- 命題1-32は、
三角形ABC
において、
点D[延長BC]、
線分CD
をとれば、
∠ACD=∠CAB+∠ABC、
∠ABC+∠BCA+∠CAB
=2∠R
のことである。
- 命題1-32は推論用命題である。
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