ユークリッド原論をどう読むか(5)
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目次
ユークリッド原論
第2巻
命題2ー9
(線分の正方形分割)
もし
線分
が
相等
および
不等
な部分に分けられるならば、
不等
な部分の上の
正方形
の和は
もとの
線分
の
半分
の上の
正方形
と
二つの区分
点
の間の
線分
上の
正方形
と
の和の2
倍
である。
線分は、
定義の補足(命題1ー1)
による。
相等、不等は、
定義の補足(公理1ー4)
による。
正方形は、
定義1ー22
による。
半分は、
定義の補足(公理1ー6)
による。
点は、
定義1ー1
による。
倍は、
定義の補足(公理1ー5)
による。
線分
ABが
Cにおいて
等しい
部分に、
Dにおいて
不等
な部分に
分けられたとせよ。
Cは、
命題1ー10
(作図・線分の2等分)
による。
Dは、
公準1ー1の補足
(作図.任意の点をとる)
による。
C;中点(AB)、
D;点(AB;;AD≠DB)
とする。
AD、DB上の
正方形
の和は
AC、CD上の
正方形
の和の2
倍
であると主張する。
Cから
ABに
直角
に
CEがひかれ、
【・・・(a)】
命題1ー11
(作図・線分からの垂線)
による。
垂線CE(C,AB)
をとる。
CEが
AC、CBの双方に
等しく
され、
【・・・(b)】
十分長くひいた線分CE上に、
命題1ー3の補足
(作図.等しい線分となる点)
により、
CからACに等しいところに点をとる。
この点を改めてEとしている。
E';点(半直線CE;;CE'=AC=CB)
をとり、
改めて、
E;点(E')
としている。
EA、EBが結ばれ、
公準1ー1
(作図.直線)
による。
線分EA、線分EB
をとっている。
Dを通り
ECに
平行
にDFがひかれ、
[......(c))]
命題1ー31
(作図・平行線)
により
Dを通り
ECに平行な直線をひくと、
ECとEBは交わっている
ので、
命題1ー30の補足
(交線に平行な線)
により
EBと交点をもち、
それをFとしている。
F;交点(EB,平行線(D,EC))
をとる。
Fを通り
ABに
平行
にFGがひかれ、
【・・・(d)】
命題1ー31
(作図・平行線)
により
Fを通り
ABに平行な直線をひくと、
ABとECは交わっているので、
命題1ー30の補足
(交線に平行な線)
により
ECと交点をもち、
それをGとしている。
G;交点(EC,平行線(F,AB))
をとる。
AFが結ばれたとせよ。
公準1ー1
(作図.直線)
による。
線分AF
をとっている。
そうすれば
ACはCEに
等しい
(b)
による。
AC=CE
となっている。
から、
角
EACは
角
AECに
等しい
。
【・・・(1)】
前節、
命題1ー5
(2等辺三角形の底角)
による。
∠EAC=∠AEC
となっている。
そして
Cにおける
角
は
直角
である
(a)
による。
∠C=直角
となっている。
から、
残りの
角
EAC、AECの和は
直角
である。
前節、
命題1ー32
(三角形の内対角・内角の和)、
公理1ー3
(等しいものから等しいものをひく)
による。
∠EAC+∠AEC=直角
となっている。
しかも
それらは
等しい
。
(1)
による。
∠EAC=∠AEC
となっている。
それゆえ
角
EAC、AECの双方は
直角
の
半分
である。
前節、前々節、
公理1ー6
(同じものの半分)
による。
∠EAC=∠AEC=直角/2
となっている。
同じ理由で
角
CEB、EBCの双方も
直角
の
半分
である。
【・・・(2)】
∠CEB=∠EBC=直角/2
となっている。
ゆえに
角
AEB全体は
直角
である。
[......(3)]
前節、前々節、
公理1ー2
(等しいものに等しいものを加える)
による。
∠AEB=直角
となっている。
そして
角
GEFは
直角
の
半分
であり、
[......(4)]
公理1ー7
(等しい)
により、
∠GEF=∠CEB
となり、
前々節による。
∠GEF=直角/2
となっている。
角
EGFは
内対角
ECBに
等しい
(d)
、
命題1ー29
(平行と錯角、内対角、同側内角)
による。
∠EGF=∠ECB
となっている。
ため
直角
であるから、
[......(5)]
前節、
(a)
、
公理1ー1(同じものに等しい)
による。
∠EGF=直角
となっている。
残りの
角
EFGは
直角
の
半分
である。
命題1ー32
(三角形の内対角・内角の和)
により、
EFG+EGF+GEF=2直角
となり、
前節、
公理1ー3(等しいものから等しいものをひく)
により、
EFG+GEF=直角
となり、
さらに、
(4)
、
公理1ー3
(等しいものから等しいものをひく)
による。
∠EFG=直角/2
となっている。
したがって
角
GEFはEFGに
等しい
。
前節、
(4)
、
公理1ー1
(同じものに等しい)
による。
命題1ー29
(平行と錯角、内対角、同側内角)
により
∠EFG=∠EBC
となり、
∠EBC=∠CEB=∠GEF
となり、
公理1ー1
(同じものに等しい)
によるともできる。
∠GEF=∠EFG
となっている。
ゆえに
辺
EGもGFに
等しい
。
[......(6)]
前節、
命題1ー6
(等しい底角なら二等辺三角形)
による。
EG=GF
となっている。
また
Bにおける
角
は
直角
の
半分
であり、
(2)
による。
∠B=直角/2
となっている。
角
FDBは
内対角
ECBに
等しい
(a)
,
命題1ー29
(平行と錯角、内対角、同側内角)
による。
∠FDB=∠ECB
となっている。
ため
直角
である
[......(7)]
前節、
公理1ー1
(同じものに等しい)
による。
∠FDB=直角
となっている。
から、
残りの
角
BFDは
直角
の
半分
である。
前節、前々々節、
命題1ー32
(三角形の内対角・内角の和)、
公理1ー3
(等しいものから等しいものをひく)
による。
命題1ー29
(平行と錯角、内対角、同側内角)
により論証することもできる。
∠BFD=直角/2
となっている。
それゆえ
Bにおける
角
は
角
DFBに
等しい
。
前節、
(2)
、
公理1ー1
(同じものに等しい)
による。
∠B=∠DFB
となっている。
ゆえに
辺
FDも
辺
DBに
等しい
。
[......(8)]
前節、
命題1ー6
(等しい底角なら二等辺三角形)
による。
FD=DB
となっている。
そして
ACはCEに
等しい
から、
(b)
による。
AC=CE
となっている。
AC上の
正方形
も
CE上の
正方形
に
等しい
。
前節、
公理1ー7
(等しい)
による。
正方(_AC)=正方(_CE)
となっている。
したがって
AC、CE上の
正方形
の和は
AC上の
正方形
の2
倍
である。
前節、
公理1ー2
(等しいものに等しいものを加える)、
定義の補足(公理1ー5)
(同じもののn倍)
による。
正方(_AC)+正方(_CE)=2×正方(_AC)
となっている。
【・・・(9)】
ところが
角
ACEは
直角
であるから、
(a)
による。
∠ACE=直角
となっている。
EA上の
正方形
は
AC、CE上の
正方形
の和に
等しい
。
前節、
命題1ー47
(三平方の定理)
による。
正方(_EA)=正方(_AC)+正方(_CE)
となっている。
それゆえ
EA上の
正方形
は
AC上の
正方形
の2
倍
である。
前節、
(9)
、
公理1ー1
(同じものに等しい)
による。
2×正方(_AC)=正方(_EA)
となっている。
【・・・(10)】
また
EGはGFに
等しい
から、
(6)
による。
EG=GF
となっている。
EG上の
正方形
も
GF上の
正方形
に
等しい
。
前節、
公理1ー7
(等しい)
による。
正方(_EG)=正方(_GF)
となっている。
ゆえに
EG、GF上の
正方形
の和は
GF上の
正方形
の2
倍
である。
前節、
公理1ー2
(等しいものに等しいものを加える)、
定義の補足(公理1ー5)
(同じもののn倍)
による。
正方(_EG)+正方(_GF)=2×正方(_GF)
となっている。
ところが
EF上の
正方形
は
EG、GF上の
正方形
の和に
等しい
。
(5)
、
命題1ー47
(三平方の定理)
による。
正方(_EG)+正方(_GF)=正方(_EF)
となっている。
したがって
EF上の
正方形
は
GF上の
正方形
の2
倍
である。
前節、前々節、
公理1ー1
(同じものに等しい)
による。
2×正方(_GF)=正方(_EF)
しかも
GFはCDに
等しい
。
(c)
、
(d)
、
命題1ー34
(平行四辺形の対辺・対角・対角線)
による。
GF=CD
となっていて、
正方(_GF)=正方(_CD)
となる。
それゆえ
EF上の
正方形
は
CD上の
正方形
の2
倍
である。
前節、前々節、
定義の補足(公理1ー5)
(同じもののn倍)、
公理1ー1
(同じものに等しい)
による。
正方(_EF)=2×正方(_CD)
となっている。
ところが
EA上の
正方形
も
AC上の
正方形
の2
倍
である。
(10)
による。
正方(_EA)=2×正方(_AC)
となっている。
ゆえに
AE、EF上の
正方形
の和は
AC、CD上の
正方形
の和の2
倍
である。
前節、前々節、
公理1ー2
(等しいものに等しいものを加える)、
定義の補足(公理1ー5)
(同じもののn倍)
による。
正方(_AE)+正方(_EF)=2×(正方(_AC)+正方(_CD))
となっている。
ところが
角
AEFは
直角
であるから、
(3)
による。
∠AEF=直角
となっている。
AF上の
正方形
は
AE、EF上の
正方形
[の和]に
等しい
。
前節、
命題1ー47
(三平方の定理)
による。
正方(_AF)=正方(_AE)+正方(_EF)
となっている。
したがって
AF上の
正方形
は
AC、CD上の
正方形
の和の2
倍
である。
前節、前々々節、
公理1ー1
(同じものに等しい)
により
正方(_AF)=2×(正方(_AC)+正方(_CD))
となっている。
また
Dにおける
角
は
直角
である
(7)
による。
∠ADF=直角
となっている。
から、
AD、DF上の
正方形
の和は
AF上の
正方形
に
等しい
。
前節、
命題1ー47
(三平方の定理)
による。
正方(_AF)=正方(_AD)+正方(_DF)
となっている。
それゆえ
AD、DF上の
正方形
の和は
AC、CD上の
正方形
の和の2
倍
である。
前節、前々々節、
公理1ー1
(同じものに等しい)
による。
正方(_AD)+正方(_DF)=2×(正方(_AC)+正方(_CD)
となっている。
そして
DFはDBに
等しい
。
(8)
による。
DF=DB
となっていて、
正方(_DF)=正方(_DB)
となる。
ゆえに
AD、DB上の
正方形
の和は
AC、CD上の
正方形
の和の2
倍
である。
前節、前々節、
公理1ー2
(等しいものに等しいものを加える)、
公理1ー1
(同じものに等しい)
による。
正方(_AD)+正方(_DB)=2×(正方(_AC)+正方(_CD))
となっている。
よって
もし
線分
が
相等
および
不等
な部分に分けられるならば、
不等
な部分の上の
正方形
の和は
もとの
線分
の
半分
の上の
正方形
と
二つの区分
点
の間の
線分
上の
正方形
と
の和の2
倍
である。
これが証明すべきことであった。
この証明は
2巻のこれまでの命題とはまったく趣が異なる。
第2巻の命題によると次のようになる。
AB上の正方形は、
命題2ー4
(2分線分上の正方形)
により
AD上の正方形とDB上の正方形と
矩形AD、DBの2倍との和
に等しい。
【・・・(11)】
正方(_AB)
=正方(_AD)+正方(_DB)+2×矩形(AD、DB)
となっている。
また、
AB上の正方形は、
命題2ー4
(2分線分上の正方形)
により
AC上の正方形とCB上の正方形と
矩形AC、CBの2倍との和
に等しい。
正方(_AB)
=正方(_AC)+正方(_CB)+2×矩形(AC、CB)
となっている。
AC上の正方形とCB上の正方形と
矩形AC、CBと
は、
命題の設定
、
定義2ー1
(かこまれる)
により
等しい。
正方(_AC)=正方(_CB)=矩形(AC、CB)
となっている。
よって、
AB上の正方形は、
前節、前々節、
定義の補足(公理1−5)
(同じもののn倍)
により、
AC上の正方形の4倍に等しい。
正方(_AB)=4×正方(_AC)
となっている。
したがって、
AD上の正方形とDB上の正方形と
矩形AD、DBの2倍との和
は、
前節、
(11)
、
公理1−1
(同じものに等しい)
により、
AC上の正方形の4倍に等しい。
【・・・(12)】
正方(_AD)+正方(_DB)+2×矩形(AD、DB)
=4×正方(_AC)
となっている。
一方、
矩形AD、DBとCD上の正方形との和
は、
命題の設定
、
命題2ー5
(線分の矩形分割)
により
AC上の正方形に等しい。
矩形(AD、DB)+正方(_CD)=正方(_AC)
となっている。
双方から
CD上の正方形をひく
と、
公理1−3
(等しいものから等しいものをひく)
により、
矩形AD、DB
は
AC上の正方形から
CD上の正方形をひいた
残りに等しい。
矩形(AD、DB)=正方(_AC)ー正方(_CD)
となっている。
よって、
矩形AD、DBの2倍
は
前節、
公理1−5
(同じものの2倍)
により、
AC上の正方形から
CD上の正方形をひいた
残りの2倍に等しい。
【・・・(13)】
2×矩形(AD、DB)=2×(正方(_AC)ー正方(_CD))
となっている。
AD上の正方形とDB上の正方形と
矩形AD、DBの2倍との和
は
(12)
により、
AC上の正方形の4倍に等しい。
正方(_AD)+正方(_DB)+2×矩形(AD、DB)
=4×正方(_AC)
となっている。
AD上の正方形とDB上の正方形と
矩形AD、DBの2倍との和
は、
前節、
(13)
、
公理1−2
(等しいものに等しいものを加える)
により
AD上の正方形とDB上の正方形と
AC上の正方形から
CD上の正方形をひいた
残りの2倍との
和に等しい
正方(_AD)+正方(_DB)+2×矩形(AD、DB)
=正方(_AD)+正方(_DB)+2×(正方(_AC)ー正方(_CD))
となっている。
ので、
AC上の正方形の4倍
は、
前節、
(12)
、
公理1−1
(同じものに等しい)
により、
AD上の正方形とDB上の正方形と
AC上の正方形から
CD上の正方形をひいた
残りの2倍との
和に等しい。
4×正方(_AC)
=正方(_AD)+正方(_DB)+2×(正方(_AC)ー正方(_CD))
となっている。
双方に
CD上の正方形の2倍を加える
と、
公理1−2
(等しいものに等しいものを加える)
により、
AC上の正方形の4倍とCD上の正方形の2倍との和
は
AD上の正方形とDB上の正方形と
AC上の正方形の2倍との
和に等しい。
4×正方(_AC)+2×正方(_CD)
=正方(_AD)+正方(_DB)+2×正方(_AC)
となっている。
双方から
AC上の正方形の2倍をひく
と、
公理1−3
(等しいものから等しいものをひく)
により、
AC上の正方形の2倍とCD上の正方形の2倍との和
は
AD上の正方形とDB上の正方形との和
に等しい。
命題2-9
は第2巻の命題によると次のようになる。
前提
作図
推論
定義
補(理1-5)
,
2-1
公準
公理
1-1
,
1-2
,
1-3
,
1-5
命題
2-4
,
2-5
その他
矩形という表現が命題には登場しないので、
三平方の定理による証明となったと思われる。
本質的には、
和の平方と差の平方との和
のことである。
正方(_AC+CD)+正方(_ACーCD)
=2×(正方(_AC)+正方(_CD))
となっている。
線分AB
に対して、
C;中点(AB)、
D;点[AB;;AD≠DB]
をとるならば、
正方(_AD)+正方(_DB)
=2×(正方(_AC)+正方(_CD))
のことである。
命題2-9
は推論用命題である。
前提
作図
推論
定義
公準
1-1
,
1-1補
公理
1-1
,
1-2
,
1-3
,
1-6
,
1-7
命題
1-3補
,
1-10
,
1-11
,
1-30補
,
1-31
1-5
,
1-6
,
1-29
,
1-32
,
1-34
,
1-47
その他
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