ユークリッド原論をどう読むか(1)
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ユークリッド原論
第1巻
命題1ー5(2等辺三角形の底角)
二等辺三角形の
底辺の上にある角は
互いに等しく、
等しい辺が延長される
とき、
底辺の下の角は
互いに等しい
であろう。
ABCを
辺ABが辺ACに
等しい二等辺三角形
とし、
線分BD、CEが
AB、ACと一直線をなして
延長された
とせよ。
-
線分AB、
点C'[外.線分AB]、
点C(半直AC';;AC=AB)、
線分BC、
点D[延長AB]、
点E[延長AC]
をとる。
角ABCは角ACBに、
角CBDは角BCEに等しい
と主張する。
BD上に任意の点Fがとられ、
- 公準1ー1の補足(作図.任意の点をとる)
による。
-
点F[BD]
をとっている。
大きい線分AEから
小さい線分AFに
等しいAGが切り取られ、
【・・・(a)】
- 命題1ー3(作図・等しい線分を切り取る)
による。
- 命題1ー3(作図・等しい線分を切り取る)
は
実質的には線分上に点をとることを
保証する命題である。
-
点G(AE;;AG=AF)
をとっている。
線分FC、GBが結ばれた
とせよ。
-
公準1ー1(作図.直線)
による。
-
線分(F,C)、線分(G,B)
をとる。
そうすれば
AFはAGに、
ABはACに等しい
から、
2辺FA、ACは
2辺GA、ABにそれぞれ等しい。
-
三角形の2辺を指示する
とき、
原論では
FA、ACのように、
共通な頂点が真ん中にくる
ように表現している。
-
(FA,AC)=(GA,AB)
となっている。
そして
共通の角FAGをはさむ。
それゆえ
底辺FCは
底辺GBに等しく、
三角形AFCは
三角形AGBに等しく、
残りの角は
残りの角に、
等しい辺が対する角は
等しくなる、
- 命題1ー4(2辺挟角相等)
のことである。
-
FC=GB、
△AFC≡△AGB
となっている。
すなわち
角ACFは角AGBに、
角AFCは角AGBに等しい
であろう。
【・・・(1)】
-
前節の結果による。
-
∠ACF=∠ABG、
∠AFC=∠AGB
となっている。
そして
AF全体はAG全体に等しく、
そのうち
ABはACに等しい
から、
残りのBFは残りのCGに等しい
。
ところが
FCがGBに等しい
ことも先に証明された。
-
(1)
のことである。
-
FC=GB
となっている。
かくて
2辺BF、FCは
2辺CG、GBにそれぞれ等しい。
-
前節、前々節による。
-
(BF,FC)=(CG,GB)
となっている。
しかも
角BFCは角CGBに等しく、
- (1)
による。
-
∠BFC=∠CGB
となっている。
≪底辺BCはそれらに共通である。≫
それゆえ
三角形BFCも三角形CGBに等しく、
残りの角は残りの角に、
すなわち
等しい辺が対する角は
それぞれ等しい
であろう。
-
前節、前々節、命題1ー4(2辺挟角相等)
による。
- 命題1ー4(2辺挟角相等)
の成立に
「底辺BCはそれらに共通である」は必要ない。
-
△BFC≡△CGB
となっている。
したがって
角FBCは角GCBに、
角BCFは角CBGに等しい。
【・・・(2)】
-
前節による。
-
∠FBC=∠GCB、
∠BCF=∠CBG
となっている。
すると
角ABG全体が
角ACF全体に等しい
ことは先に証明されており、
- (1)
による。
-
平角ABF、ACG
は、
原論において
角として認められていない
ので、
∠ABG、∠ACF
が注目されることになる。
-
∠ABG=∠ACF
となっている。
そのうち
角CBGは角BCFに等しい
-
(2)
による。
-
∠CBG=∠BCF
となっている。
から、
残りの角ABCは残りの角ACBに等しい。
-
前節、前々節,公理1ー3(等しいものから等しいものをひく)
による。
-
∠ABC=∠ACB
となっている。
そして
それらは
三角形ABCの底辺の上にある。
-
∠ABC、∠ACB
;底辺BCについて、
Aと同じ側
となっている。
また
角FBCが角GCBに等しい
ことも先に証明された。
そして
これらは底辺の下にある。
- (2)
による。
-
∠FBC=∠GCB
∠FBC、∠GCB
;底辺BCについて、
Aと反対側
となっている。
よって
二等辺三角形の底辺の上にある角は
互いに等しく、
等しい辺が延長される
とき、
底辺の下の角は互いに等しい
であろう。
これが証明すべきことであった。
-
今日においては、
二等辺三角形ABCをひっくりかえし、
三角形ABCと三角形ACBが合同であることを
二角挟辺相等で証明する
ことも多い。
この方が補助線を必要とせず、
簡明である
が、
原論としては
ひっくりかえすという方法を
できるだけ用いたくなかった
ものと見られる。
原論の公理論的志向の現れ
と見ることができる。
-
点F、Gをとって、
三角形AFC、ABGをつくるのは、
ひっくり返すということを
実質的にに行っている
と見ることもできる。
なお、
F、Gを
辺AB、AC上にとることは、
原論第一巻の論証過程においては、
証明完了までに至らない。
底辺の外角に注目することは
必然である。
-
蛇足ながら、
この命題は、
俗にロバの橋と呼ばれている
ものである。
循環論を
ユークリッドがどのように回避したか、
味わったいただくことになる。
- 命題1-5は、
△ABC
について、
AB=AC、
点D(延長AD)
点E(延長AE)
をとると、
∠ABC=∠ACB、
∠CBD=∠BCE
のことである。
- 命題1-5は推論用命題である。
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