ユークリッド原論をどう読むか(5)
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ユークリッド原論
第2巻
命題2ー5(線分の矩形分割)
線分の矩形分割
もし
線分が
相等および不等な部分に分けられるならば、
不等な[二つの]部分にかこまれた矩形と
二つの区分点の間の線分上の正方形と
の和は
もとの線分の半分の上の正方形に等しい。
任意の線分ABが
Cにおいて等しい[相等な]部分に、
Dにおいて不等な部分に
分けられたとせよ。
-
線分AB、
中点C(AB)、
点D[AB]
をとっている。
AD、DBにかこまれた矩形と
CD上の正方形と
の和は
CB上の正方形に等しい
と主張する。
CB上に
正方形CEFBがえがかれ、
- 命題1−46(作図.線分上に正方形)
による。
-
正方CEFB(_CB)
をとっている。
BEが結ばれ、
- 公準1−1(作図.直線)
による。
-
線分BE
をとっている。
Dを通り
CE、BFのどちらかに平行に
DGがひかれ、
- 命題1−31(作図・平行線)
により一方に平行に引くと、
命題1−30(平行の平行)
により他方とも平行となる。
- 「どちらかに」については、
コメント(命題2ー2)を参照のこと
- BEとBFは交わっており、
DGとBFは平行だから、
命題1−30の補足(交線に平行な線)
により
BEとDGは交わる。
その交点をHとする。
-
交点G(EF,平行線(D,BF))、
交点H(BE,DG)
をとっている。
またHを通り
AB、EFのどちらかに平行に
IKがひかれ、
- 命題1−31(作図・平行線)
により一方に平行に引くと、
命題1−30(平行の平行)
により他方とも平行となる。
- CE、BFとABは交わっており、
IKとABは平行だから、
命題1−30の補足(交線に平行な線)
により
CE、BFとIKは交わる。
その交点をそれぞれJ、(改めて)Kとする。
遡ってKを用いている。
-
交点J(CE,平行線(H,AB))、
交点K(BF,平行線(H,AB))
をとっている。
さらに
Aを通り
CJ、BKのどちらかに平行に
AIがひかれたとせよ。
- 命題1−31(作図・平行線)
により一方に平行に引くと、
命題1−30(平行の平行)
により他方とも平行となる。
- IKとBKは交わっており、
AIとBKは平行だから、
命題1−30の補足(交線に平行な線)
により
IKとAIは交わる。
その交点を改めてIとする。
遡ってIを用いている。
-
交点I(JK,平行線(A,CE))
をとっている。
そうすれば、
補形CHは補形HFに等しいから、
双方にDKが加えられたとせよ。
そうすれば
CK全体はDF全体に等しい。
- 公理1−2(等しいものに等しいものを加える)、
公理1−1の補足(等しいものに等しい)
による。
-
(1)
より
矩形(CH)+矩形(DK)
=矩形(HF)+矩形(DK)
よって
矩形(CK)=矩形(DF)
【・・・(2)】
ところが、
ACはCBに等しいから、
CKはAJに等しい。
-
定義2ー1(かこまれる)
による。
-
矩形(CK)=矩形(AJ)
【・・・(3)】
ゆえに
AJもDFに等しい。
双方にCHが加えられたとせよ。
そうすれば
AH全体はグノーモーンLNMに等しい。
- 公理1−2(等しいものに等しいものを加える)
による。
- 定義2ー2(グノーモーン)
による。
- 公理1ー1の補足(等しいものに等しい)
による。
-
(4)
より
矩形(DF)+矩形(CH)
=矩形(AJ)+矩形(CH)
グ(LNM)
=矩形(DF)+矩形(CH)
よって
矩形(AH)=グ(LNM)
【・・・(5)】
ところが
DHは
DBに等しいから
- 命題2ー4の補足(正方形の対角線をはさむ正方形)
による。
-
DH=DB
となっている。
AHは
矩形AD、DBである。
-
定義2ー1(かこまれる)
による。
- 矩形(AH)=矩形(AD、DB)
【・・・(6)】
CD上の正方形に等しいJGが
-
命題2ー4の補足(正方形の対角線をはさむ正方形)
による。
- 矩形(JG)=正方(_CD)
【・・・(7)】
双方に加えられたとせよ。
そうすれば
グノーモーンLNMとJGとの和は
AD、DBにかこまれた矩形と
CD上の正方形と
の和に等しい。
-
公理1−2(等しいものに等しいものを加える)
による。
- (5)
(6)
(7)
より
矩形(AH)+矩形(JG)
=矩形(AD、DB)+矩形(JG)
よって
グ(LNM)+矩形(JG)
=矩形(AD、DB)+正方(_CD)
【・・・(8)】
ところが
グノモーンLNMとJGとの和は
CB上にある正方形CEFB全体に等しい。
-
公理1−7(等しい)
による。
-
グ(LNM)+矩形(JG)=正方(_CB)
【・・・(9)】
したがって
AD、DBにかこまれた矩形と
CD上の正方形と
の和は
CB上の正方形に等しい。
- 公理1−1(同じものに等しい)
による。
- (8)
(9)
より
矩形(AD、DB)+正方(_CD)
=正方(_CB)
よってもし
線分が
相等および不等な部分に分けられるならば、
不等な[二つの]部分にかこまれた矩形と
二つの区分点の間の線分上の正方形と
の和は
もとの線分の半分の上の正方形に等しい。
これが証明すべきことであった。
- 第2巻の命題によると、以下のような証明が可能である。
矩形CB、BDは
命題2−3(2分線分の全体と一つとによる矩形)
により
矩形CD、BDとBD上の正方形との和
に等しい。
-
矩形(CB、BD)
=矩形(CD、DB)+正方(_BD)
【・・・(10)】
矩形AC、BDは、
定義2−1(かこまれる)
により
矩形CB、BDである。
-
矩形(CB、BD)=矩形(AC、BD)
【・・・(11)】
よって、
公理1ー1(同じものに等しい)
により、
矩形AC、BDは、
矩形CD、BDとBD上の正方形との和
に等しい。
-
(10)
(11)
により
矩形(CD、BD)+正方(_BD)
=矩形(AC、BD)
【・・・(12)】
双方に
CD上の正方形と矩形CD、BDとの和を加えると、
公理1ー2(等しいものに等しいものを加える)
により、
矩形AC、BDとCD上の正方形と矩形CD、BDとの和は、
矩形CD、BDの2倍とBD上の正方形とCD上の正方形との和に等しい。
-
(12)
から
矩形(CD、BD)+正方(_BD)
+正方(_CD)+矩形(CD、BD)
=矩形(AC、BD)+正方(_CD)+矩形(CD、BD)
【・・・(13)】
-
(13)
から 定義の補足(公理1−5)(同じもののn倍)、
公理1−1(同じものに等しい)
により
2×矩形(CD、BD)+正方(_BD)+正方(_CD)
=矩形(AC、BD)+正方(_CD)+矩形(CD、BD)
【・・・(14)】
矩形AC、BDと矩形CD、BDとの和は、
命題2−1(任意個分割との矩形)
により、
矩形AD、BDに等しいので、
-
矩形(AC、BD)+矩形(CD、BD)=矩形(AD、BD)
【・・・(15)】
矩形AC、BDとCD上の正方形と矩形CD、BDとの和は、
公理1ー2(等しいものに等しいものを加える)
により、
矩形AD、BDとCD上の正方形との和に等しい。
-
(15)
から
矩形(AC、BD)+正方(_CD)+矩形(CD、BD)
=矩形(AD、BD)+正方(_CD)
【・・・(16)】
矩形CD、BDの2倍とBD上の正方形とCD上の正方形との和は、
命題2−4(2分線分上の正方形)
により、
CB上の正方形に等しい。
-
2×矩形(CD、BD)+正方(_BD)+正方(_CD)
=正方(_CB)
【・・・(17)】
よって、
矩形AD、BDとCD上の正方形との和は、
公理1ー1の補足(等しいものに等しい)
により、
CB上の正方形に等しい。
- (16)
(14)
(17)
から
矩形(AD、BD)+正方(_CD)
=正方(_CB)
- 命題2-5は第2巻の命題によると次のようになる。
- 命題2-5は、
本質的には、和と差の積は平方の差である。
X=AB/2、Y=CD
とおくと、
矩形(X+Y、XーY)=正方(_X)ー正方(_Y)
-
和AC+CBと積AC×CBの値
を既知として、
ACとCB
を求める方法、
つまり、
今日的にいう2次方程式の解の公式
を図形的に示している。
すなわち、
Z;正方(_Z)=正方(_和/2)ー積
をとると、
AC=和/2+Z、
CB=和/2ーZ
として求められる。
- 命題2-5は、
AB;線分
に対して、
C;点[AB;;中点でない]、
D;中点(AB)
をとるならば、
正方(_AD)=正方(_CD)+矩形(AC,CB)
のことである。
- 命題2-5は推論用命題である。
-
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