ユークリッド原論をどう読むか(4)
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ユークリッド原論
第1巻
命題1−47(三平方の定理)
直角三角形において
直角の対辺の上の正方形は
直角をはさむ2辺の上の
正方形の和に等しい。
ABCを
角BACを直角とする
直角三角形とせよ。
-
線分AB
線分AC[;;∠BAC=∠R]
△ABC
をとっている。
BC上の正方形は
BA、AC上の正方形の和に等しい
と主張する。
BC上に正方形BDECが、
BA、AC上に正方形GB、HCが
描かれ、
【・・・(a)】
- 命題1−46(作図.線分上に正方形)
による。
-
正方BDEC(_CB,反対側(CB,A))
正方AGFB(_BA,反対側(BA,C))
正方CKHA(_AC,反対側(AC,B))
をとっている。
Aを通り
BD、CEのどちらかに平行に
ALがひかれたとせよ。
【・・・(b)】
- 命題1−31(作図・平行線)
による。
-
交点L(DE,平行線(A,BD))
線分AL
をとっている。
そして
AD、FCが結ばれたとせよ。
- 公準1−1(作図.直線)
による。
-
線分AD、線分FC
をとっている。
そうすれば
角BAC、BAGの双方は
直角であるから、
- (a)
による。
-
∠BAC=∠BAG=∠R
となっている。
任意の線分BAに対して
その上の点Aにおいて
同じ側にない
2線分AC、AGが
接角を2直角に等しくする。
それゆえ
CAはAGと一直線をなす。
- 命題1−14(直線と2直角2)
による。
-
CA;AGと一直線
となっている。
同じ理由で
BAもAHと一直線をなす。
そして
角DBCは
角FBAに、
ともに直角であるがゆえに
等しいから、
- (a)
による。
-
∠DBC=∠FBA
となっている。
双方に
角ABCが加えられたとせよ。
そうすれば
角DBA全体は角FBC全体に等しい。
【・・・(1)】
- 公理1−2(等しいものに等しいものを加える)
による。
-
∠DBA=∠FBC
となっている。
そして
DBはBCに等しく、
FBはBAに等しいから、
2辺DB、BAは
2辺FB、BCにそれぞれ等しい。
そして
角DBAは角FBCに等しい。
したがって
底辺ADは底辺FCに等しく、
三角形ABDは三角形FBCに等しい。
そして
平行四辺形BLは
三角形ABDの2倍である。
なぜなら
それらは
同じ底辺BDをもち
かつ
同じ平行線BD、ALの間にある
から≪、≫[。]
そして
正方形GBは
三角形FBCの2倍である。
なぜなら
これらもまた
同じ底辺FBをもち
かつ
同じ平行線FB、GCの間にある
から。
それゆえ
平行四辺形BLは
正方形FBに等しい。
- 公理1−1(同じものに等しい)
による。
-
平四BL=正方(_FB)
となっている。
同様にして
AE、BKが結ばれれば、
平行四辺形CLが
正方形HCに等しい
ことも証明されうる。
ゆえに
正方形BDEC全体は
二つの正方形GB、HCの和に等しい。
- 公理1−2(等しいものに等しいものを加える)
による。
-
正方BDEC=正方GB+正方HC
となっている。
そして
正方形BDECは
BC上に描かれ、
GB、HCは
BA、AC上に描かれている。
-
正方BDEC;正方(_BC)
正方GB;正方(_BA)
正方HC;正方(_AC)
となっている。
したがって
辺BC上の正方形は
辺BA、AC上の正方形の和に等しい。
-
前節、前々節による。
-
正方(_BC)=正方(_BA)+正方(_AC)
となっている。
よって
直角三角形において
直角の対辺の上の正方形は
直角をはさむ2辺の上の正方形の和に等しい。
これが証明すべきことであった。
- いわゆる三平方の定理である。
今日の教科書でも使われている図が
原論においても使われている。
この証明は、
三角形の合同と
平行線による等積変形によっている。
したがって、
原論第一巻の集大成といえる。
- この図において、
直線AL、BK、CFが
一点において交わっている。
これは、
相似比を考えると、
三平方の定理とチェバの定理を用いて証明できるが、
原論のこの段階では、証明できない。
- 命題1-47は、
△ABC(_AB;;∠BAC=∠R)
に対して、
正方(_BC)=正方(_BA)+正方(_AC)
のことである。
- 命題1-47は推論用命題である。
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