ユークリッド原論をどう読むか(5)
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ユークリッド原論
第2巻
命題2ー8(和の平方と差の平方との差)
もし
線分が任意に2分されるならば、
全体と一つの部分とにかこまれた矩形の4倍と
残りの部分の上の正方形と
の和は
全体の線分と先の部分とを
一直線とした線分上の
正方形に等しい。
線分ABが
点Cで任意に分けられたとせよ。
AB、BCにかこまれた矩形の4倍と
AC上の正方形と
の和は
AB、BCを一直線とした[線分]上の
正方形に等しいと主張する。
![](./img/0208.jpg)
BDがABと一直線をなして延長され、
BDがCBに等しくされ、
- 延長された直線上に、
命題1ー3の補足(作図.等しい線分となる点)
により
BからCBの長さに等しいところに
点Dをとる。
-
点D(延長AB;;BD=CB)
をとっている。
AD上に正方形AEFDが描かれ、
- 命題1ー46(作図.線分上に正方形)
による。
-
正方AEFD(_AD)
をとっている。
そして作図が二重に繰り返されたとせよ。
- 公準1ー1(作図.直線)
により対角線DEをひく。
命題1ー31(作図・平行線)
により
Bを通り
AEに平行に直線をひく。
命題1ー30の補足(交線に平行な線)
により、
この直線はDEと交点Iをもち、
EFと交点Jをもつ。
命題1ー31(作図・平行線)
により
Iを通り
ADに平行に直線をひく。
命題1ー30の補足(交線に平行な線)
により、
この直線は
AEと交点Kをもち、
DFと交点Lをもつ。
命題1ー31(作図・平行線)
により
Cを通り
AEに平行に直線をひく。
命題1ー30の補足(交線に平行な線)
により、
この直線は
KLと交点Gをもち、
DEと交点Oをもち、
EFと交点Hをもつ。
命題1ー31(作図・平行線)
により
Oを通り
ADに平行に直線をひく。
命題1ー30の補足(交線に平行な線)
により、
この直線は
AEと交点Mをもち、
BJと交点Pをもち、
DFと交点Nをもつ。
- 原論の図は作図の順に交点の名前を付けていない。
-
線分DE、
交点I(平行線(B,AE),DE)、
交点J(平行線(B,AE),EF)、
交点K(平行線(I,AD),AE)、
交点L(平行線(I,AD),DF)、
交点G(平行線(C,AE),KL)、
交点O(平行線(C,AE),DE)、
交点H(平行線(C,AE),EF)、
交点M(平行線(O,AD),AE)、
交点P(平行線(O,AD),BJ)、
交点N(平行線(O,AD),DF)
をとっている。
そうすれば
CBはBDに等しく、
他方CBはGIに、
BDはILに等しいから、
- 命題1ー34(平行四辺形の対辺・対角・対角線)
による。
-
CB=GI、
BD=IL
となっている。
GIもILに等しい。
- 公理1ー1(同じものに等しい)
による。
-
GI=IL
となっている。
同じ理由でOPもPNに等しい。
そしてBCはBDに、
GIはILに等しいから、
[矩形]CIもIDに、GPもPLに等しい。
- 命題1ー36(平行四辺形の等積変形2)
による。
-
CB=BD、
GI=IL、
矩形(CI)=矩形(ID)、
矩形(GP)=矩形(PL)
【・・・(1)】
ところが
CIはPLに等しい。
なぜなら
平行四辺形CMの補形であるから。
それゆえ
IDもGPに等しい。
ゆえに
DI、CI、GP、PLの四つは
互いに等しい。
-
(1)
(2)
(3)
により
矩形(CI)=矩形(ID)
=矩形(GP)=矩形(PL)
【・・・(4)】
したがって
この四つの和はCIの4倍である。
- 定義の補足(公理1ー5)(同じもののn倍)
による。
-
(4)
により
矩形(CI)=矩形(ID)
=矩形(GP)=矩形(PL)
=4×矩形(CI)
【・・・(5)】
また
CBはBDに等しく、
他方BDはBIすなわちCG等しく、
CBはGIすなわちGOに等しいから、
- 命題2ー4の補足(正方形の対角線をはさむ正方形)
と命題1ー34(平行四辺形の対辺・対角・対角線)
とによる。
-
BD=BI=CG、
CB=GI=GO
となっている。
CGもGOに等しい。
- 公理1ー1(同じものに等しい)
による。
-
CG=GO
となっている。
そして
CGはGOに、
OPはPNに等しいから
- 先に証明されている。
-
CG=GO、
OP=PN
となっている。
[矩形]AGもKOに、OJもPFに等しい。
- 命題1ー34(平行四辺形の対辺・対角・対角線)
により、
ACとKGとが等しく、
PJとNFとが等しいので、
定義2ー1(かこまれる)
による。
-
矩形(AG)=矩形(KO)、矩形(OJ)=矩形(PF)
【・・・(6)】
ところが
KOはOJに等しい。
なぜなら
平行四辺形KJの補形であるから。
それゆえ
AGもPFに等しい。
ゆえに
AG、KO、OJ、PFの四つは
互いに等しい。
-
(6)
(7)
(8)
により
矩形(AG)=矩形(KO)
=矩形(OJ)=矩形(PF)
【・・・(9)】
したがって
この四つの和はAGの4倍である。
- 定義の補足(公理1ー5)(同じもののn倍)
による。
-
(9)
により
矩形(AG)=矩形(KO)
=矩形(OJ)=矩形(PF)
=4×矩形(AG)
【・・・(10)】
しかも
CI、ID、GP、PL四つの和が
CIの4倍であることも先に証明された。
-
(5)
による。
-
矩形(CI)=矩形(ID)
=矩形(GP)=矩形(PL)
=4×矩形(CI)
となっている。
それゆえ
グノーモーンQRSを構成する八つの和は
AIの4倍である。
そして
BIがBDに等しいため、
AIは
矩形AB、BDに等しいから、
- 定義2−1(かこまれる)
による。
-
矩形(AI)=矩形(AB、BD)
【・・・(12)】
矩形AB、BDの4倍は
AIの4倍である。
また
グノーモーンQRSも
AIの4倍であることが
先に証明された。
それゆえ
矩形AB、BDの4倍は
グノーモーンQRSに等しい。
- 公理1ー1(同じものに等しい)
による。
-
(11)
(13)
により
グ(QRS)=4×矩形(AI)
よって
グ(QRS)=4×矩形(AB、BD)
【・・・(14)】
双方に
AC上の正方形に等しいMHが
加えられたとせよ。
- 命題2ー4の補足(正方形の対角線をはさむ正方形)
による。
-
矩形(MH)=正方(_AC)
【・・・(15)】
そうすれば
AB、BDにかこまれた矩形の4倍と
AC上の正方形と
の和は
グノーモーンQRSとMHと
の和に等しい。
- 公理1ー2(等しいものに等しいものを加える)
による。
-
(14)
(15)
により
グ(QRS)+矩形(MH)
=4×矩形(AB、BD)+正方(_AC)
【・・・(16)】
ところが
グノーモーンQRSとMHと
の和は
AD上の正方形AEFDに等しい。
- 公理1ー7(等しい)
による。
-
グ(QRS)+矩形(MH)
=正方(_AD)
【・・・(17)】
しかも
BDはBCに等しい。
- 作図の設定である。
-
したがって
矩形(AB、BD)=矩形(AB、BC)
【・・・(18)】
それゆえ
AB、BCにかこまれた矩形の4倍と
AC上の正方形と
の和は
AD上の正方形、
すなわち
AB、BCを一直線とした上の正方形に等しい。
- 公理1ー1(同じものに等しい)、
公理1ー2(等しいものに等しいものを加える)
による。
- (16)
(17)
(18)
により
4×矩形(AB、BD)+正方(_AC)=正方(_AD)
したがって
4×矩形(AB、BC)+正方(_AC)=正方(_AD)
よってもし
線分が
任意に2分されるならば、
全体と一つの部分とにかこまれた矩形の4倍と
残りの部分の上の正方形と
の和は
全体の線分と先の部分とを一直線とした
線分上の正方形に等しい。
これが証明すべきことであった。
- 以下の証明が可能である。
矩形AB、BCの2倍とCA上の正方形と
の和は
命題2ー7(差の平方)
により
AB上の正方形とBC上の正方形と
の和に等しい。
-
2×矩形(AB、BC)+正方(_CA)
=正方(_AB)+正方(_BC)
【・・・(19)】
BCは
命題の設定により
BDに等しいから、
BC上の正方形は
定義1ー22(正方形・矩形・菱形・長斜方形・トラペジオン)
により
BD上の正方形に等しい。
-
正方(_BC)=正方(_BD)
【・・・(20)】
また
矩形AB、BCは
定義2ー1(かこまれる)
により
矩形AB、BDに等しい。
-
矩形(AB、BC)=矩形(AB、BD)
【・・・(21)】
AB上の正方形とBC上の正方形と
の和は
公理1ー2(等しいものに等しいものを加える)
により
AB上の正方形とBD上の正方形と
の和に等しく、
-
(20)
により
正方(_AB)+正方(_BC)=正方(_AB)+正方(_BD)
【・・・(22)】
矩形AB、BCの2倍とCA上の正方形と
の和は
矩形AB、BDの2倍とCA上の正方形と
の和は等しいから、
-
(21)
により
2×矩形(AB、BC)+正方(_CA)
=2×矩形(AB、BD)+正方(_CA)
【・・・(23)】
矩形AB、BDの2倍とCA上の正方形と
の和は
公理1ー1の補足(等しいものに等しい)
により
AB上の正方形とBD上の正方形と
の和に等しい。
-
(19)
(22)
(23)
により
2×矩形(AB、BD)+正方(_CA)
=正方(_AB)+正方(_BD)
【・・・(24)】
双方に
矩形AB、BDの2倍が加えられたとせよ。
矩形AB、BDの4倍とCA上の正方形は、
公理1ー2(等しいものに等しいものを加える)
により
矩形AB、BDの2倍と
AB上の正方形とBD上の正方形と
の和に等しい。
-
(24)
により
2×矩形(AB、BD)+正方(_CA)
+2×矩形(AB、BD)
=正方(_AB)+正方(_BD)
+2×矩形(AB、BD)
となるので、
4×矩形(AB、BD)+正方(_CA)
=2×矩形(AB、BD)
+正方(_AB)+正方(_BD)
【・・・(25)】
AB上の正方形とBD上の正方形と
矩形AB、BDの2倍と
の和は
命題2ー4(2分線分上の正方形)
により
AD上の正方形に等しい。
-
2×矩形(AB、BD)
+正方(_AB)+正方(_BD)
=正方(_AD)
【・・・(26)】
よって、
矩形AB、BDの4倍とCA上の正方形と
の和は
公理1ー1(同じものに等しい)
により
AD上の正方形に等しい。
-
(25)
(26)
により
4×矩形(AB、BD)+正方(_CA)
=正方(_AD)
【・・・(27)】
ところが
矩形AB、BDは
定義2ー1(かこまれる)
により
矩形AB、BCに等しい。
-
矩形(AB、BD)=矩形(AB、BC)
【・・・(28)】
したがって、
公理1ー2(等しいものに等しいものを加える)、
公理1ー1(同じものに等しい)
により
矩形AB、BCの4倍とCA上の正方形と
の和はAD上の正方形に等しい。
-
(27)
(28)
により
4×矩形(AB、BC)+正方(_CA)
=正方(_AD)
【・・・(29)】
- 命題2-8は第2巻の命題によると次のようになる。
- 本質的には、和の平方と差の平方との差のことである。
4×BC+正方(_ABーBC)
=正方(_AB+BC)
となるが、
正方(_ABーBC)
を移項して
4×BC=正方(_AB+BC)ー正方(_ABーBC)
となる。
- 命題2-8は、
AB;線分
に対して、
C;点(AB)、
D;点(ABの延長上、BD=BC)
をとれば
4×矩形(AB、BC)+正方(_ABーBC)
=正方(_AB+BC)
のことである。
- 命題2-8は推論用命題である。
前提 | 作図 | 推論 |
定義 | |
補(理1-5),2-1 |
公準 | 1-1,1-2 |
|
公理 | |
1-1,1-1補,1-2,1-7 |
命題 | 1-3補,1-30補,1-31,1-46 |
1-30,1-34,1-36,1-43,2-4補 |
その他 | |
コ2(題1-16)f |
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