ユークリッド原論をどう読むか(9508)
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ユークリッド原論
第5巻
命題5ー8
(量の大小と比の大小)
≪任意の≫[ある]
不等
な2
量
のうち、
大きい
量
は
小さい
量
より、
同一の
量
に対して
大きい比
をもち、
同一の
量
は
小さい
量
に対して、
大きい
量
に対するより
大きい比
をもつ。
不等は、
定義の補足(公理1ー4)
による。
量は、
定義5ー1の補足
による。
大きいは、
公理1ー8
による。
小さいは、
公理1ー8の補足
による。
大きい比は、
定義5ー7
による。
AB、Cを
不等
な2
量
とし、
ABを
大きい
とし、
Dを別の任意の
量
とせよ。
量AB
に対して、
量C(;<AB)、
量D
をとっている。
ABはDに対し、
CがDに対するより
大きい比
をもち、
DはCに対し、
ABに対するより
大きい比
をもつと主張する。
ABはCより
大きい
から、
命題の設定
による。
AB>C
となっている。
BEをCに
等しく
せよ。
【・・・(a)】
推論の設定である。
命題1ー3の補足
(作図.等しい線分となる点)
による。
点E(AB;;BE=C)
をとっている。
《そうすれば
AE、EBのうち
小さい
量
は
何
倍
かされると
いつかDより
大きく
なるであろう。
【・・・(1)】
公準1ー2の補足
(アルキメデスの原理)
による。
論証のこのステップは、
後のステップにおける
量M=(n−1)D
が図示されるものとして
とれるようにするためのものである。
しかし、
M=0で、
図示できなくても、
今日的には
論証が成立することを補足した。
[AE、EBについて、
AE<EBの場合、
AE>=EBの場合
がある。
]
まず、
[
AE<EB の場合、
すなわち、]
AEがEBより
小さい
とし、》
場合分けをしている。
AE<EB
としている。
AEが何
倍
かされ、
FGを
Dより
大きい
、
AEの
倍量
とし、
【・・・(b)】
(1)
による。
推論の設定である。
量の倍は、
命題の補足(定義5ー2)
(作図.倍量)
による。
D<m(ABーC)
とすれば、
mC<nD<mAB
となるnがとれる
という見通しで、
推論が進んでいく。
FG(;;=mAE,>D)
をとっている。
FGがAEの何
倍
であろうと、
GHもEBの、
KもCの同じ
倍数
である
ようにされたとせよ。
【・・・(c)】
推論の設定である。
量の倍は、
命題の補足(定義5ー2)
(作図.倍量)
による。
点H(延長FG;;GH=m(EB;=C))
量K(;;=mC)
をとっている。
そして
Dの2
倍
[L]、
3
倍
と
つぎつぎに1つずつ多い
倍量
がとられ、
とられたものがDの
倍量
で
しかもはじめて
Kより
大きく
なるところまでせよ。
(1)
により、
(K;=m(C;=(EB;>AE)))>(FG;>D)
となっている。
量の倍は、
命題の補足(定義5ー2)
(作図.倍量)
による。
量L(;;=2D)、
・・・
をとっている。
nD>(K;=mC)
となっている。
かかる
量
がとられたとし、
《それをDの4
倍
で
しかも》はじめて
Kより《
大きい
》[大きくなったものを]Nと[し、
その直前のものをMと]せよ。
【・・・(d)】
推論の設定である。
準一般的な証明をしている。
ただし、
論証に具体的な数を
明示しているのは初出である。
コメント2(命題5ー1)
を参照のこと。
一般的論証となるよう、[ ]に補足している。
命題の設定
、
(a)
(b)
(c)
(d)
参照のこと
N(;;=nD,>(K;=mC),(n−1)D<=K)、
M(;;=(n−1)D)
をとっている。
(K;=m(C;>AE))>D
となっているので、
n>=2
となっている。
(K;=mC,<=mAE)<D
となる場合は、
n=1
となり、
(M;(n−1)D) が図示される量として存在しない
ので、
その場合には、
以下の推論が
妥当でない
と判断して、
この場合分けを行ったのであろう。
今日的には、
(K;=mC)<D
となる場合、
n=1、
M=0
のままで妥当な推論である。
N(;;=nD,>(K;=mC),(n−1)D<=K)、
M(;;=(n−1)D,<=(K;=mC))
をとっている。
そうすれば
KははじめてN[でDの倍量]より
小さい
から、
KはMより
小さく
ない。
【・・・(2)】
(d)
による。
(K;=mC)>=(M;=(n−1)D)
となっている。
(K;=mC)<D
で、n=1となる場合
K>=0
となっている。
そして
FGはAEの、
GHはEBの
同数
倍
であるから
(c)
による。
FG=mAE、
GH=mEB
となっている。
FGはAEの、
FHはABの
同数
倍
である。
【・・・(3)】
命題5ー1
(同数倍の和1)
による。
FG=mAE、
FH=mAB
となっている。
ところが
FGはAEの、
KはCの
同数
倍
である。
(c)
による。
FG=mAE、
K=mC
となっている。
それゆえ
FHはABの、
KはCの
同数
倍
である。
(3)
、
公理の補足3(命題5ー1)
(1対1対応)
による。
FH=mAB、
K=mC
となっている。
ゆえに
FH、Kは
AB、Cの同数
倍
である。
【・・・(4)】
(FH、K)=m(AB、C)
となっている。
また
GHはEBの、
KはCの
同数
倍
であり、
(c)
による。
GH=mEB、
K=mC
となっている。
EBはCに
等しい
から、
(a)
による。
EB=C
となっている。
GHもKに
等しい
。
【・・・(5)】
公理1ー5の補足2
(等しいもののn倍、n倍に等しいもの)
による。
GH=(K;=mC)
となっている。
ところが
KはMより
小さく
ない。
(2)
による。
(K;=mC)>=(M;=(n−1)D)
となっている。
(K;=mC)<D
で、n=1となる場合
K>(M;=O)
となっている。
したがって
GHもMより
小さく
ない。
【・・・(6)】
(5)
、
公理1ー8の補足2
(等より大・小、大・小に等)
による。
(GH;=(K;=mC))>=(M;=(n−1)D)
となっている。
(K;=mC)<D
となる場合で、
n=1のときも、
M=0
として、
GH>(M;=0)
となっている。
そして
FGはDより
大きい
。
(b)
による。
(FG;=mAE)>D
となっている。
それゆえ
FH全体はD、Mの和より
大きい
。
【・・・(7)】
(6)
、
公理1ー4の補足3
(大きい(小さい)ものどうしを加える)
による。
(FH;=(FG+GH;=mAE+mC))
>D+(M;=(n−1)D)
となっている。
(K;=mC)<D
となる場合で、
n=1のときも、
FH>((D+(M;=0));=D)
となっている。
ところが
D、Mの和はNに
等しい
。
【・・・(8)】
(d)
による。
D+(M;=(n−1)D)
=(N;=nD)
となっている。
(K;=mC)<D
となる場合で、
n=1のときも、
D+(M;=0)=D
となっている。
《なぜなら
MはDの3
倍
であり、
M、Dの和はDの4
倍
であり、
NもDの4
倍
であるから。
ゆえに
M、Dの和はNに
等しい
。》
「なぜなら・・・であるから」については、
コメント2(命題1ー16)
を参照のこと。
原論の証明では、
この部分で、
(K;=mC)<D
となる場合、
n=1としたときに
(M;(n−1)D)
が図示される量として存在しないので
妥当性が欠ける
としたのであろう。
ところが
FHはM、Dの和より
大きい
。
(7)
による。
(FH;=(FG+GH=mAE+mC))
>((D+(M;=(n−1)D));=nD)
となっている。
(K;=mC)<D
となる場合で、
n=1のときも、
FH>((D+M);=D)
となっている。
したがって
FHはNより
大きい
。
【・・・(9)】
(8)
、
公理1ー8の補足2
(等より大・小、大・小に等)
による。
(FH;=(FG+GH=mAE+(mC;=K)=mAB))
>(N;=nD)
となっている。
(K;=mC)<D
となる場合で、
n=1のときも、
FH>(N;=D)
となっている。
しかも
KはNより《
大きく
ない》[小さい]。
【・・・(10)】
(d)
による。
(K;=mC)<(N;=nD)
となっている。
(K;=mC)<D
となる場合で、
n=1のときも、
K<N
となっている。
そして
FH、KはAB、Cの[ある]同数
倍
であり、
NはDの別の《任意の》[ある]
倍量
である。
(4)
、
(d)
による。
《任意の》[ある]については、
任意が通常意味する「勝手なある」ではなく、
単に「ある」ということで、
それは、一定の手続きにしたがって、
AB、C、Dから定まるものである。
《任意の》は、記述しないほうがよい。
(以下、
コメント(命題5−8)
(≪任意の≫[ある])という。)
(FH、K)=m(AB、C)
N=nD
となっているので、
mAB>nD、
mC<nD
となっている。
(K;=mC)<D
となる場合で、
n=1のときも
mAB>D、
mC<D
となっている。
ゆえに
ABはDに対し、
CがDに対するより
大きい比
をもつ。
(9)
(10)
、
定義5ー7
(大きい比)
による。
AB:D>C:D
となっている。
(K;=mC)<D
となる場合で、
n=1のときも、
AB:D>C:D
となっている。
次に
DはCに対し、
DがABに対するより
大きい比
をもつと主張する。
同じ作図がなされたとき、
同様にして
NはKより
大きく
、
NはFHより
大きく
ない
【・・・(11)】
ことを証明しうる。
(N;=nD)
<(FH;=FG+GH=mAE+mC=mAB)
(N;=nD)
>(K;=mC)
となっている。
(K;=mC)<D
となる場合で、
n=1のときも、
N<FH、
N>K
となっている。
そして
NはDの
倍量
であり、
【・・・(12)】
(d)
による。
N=nD
となっている。
(K;=mC)<D
で、n=1となる場合
N=D
となっている。
FH、Kは
AB、Cの別の《任意の》同数
倍
である。
(4)
による。
(FH、K)=m(AB、C) となっている。
したがって
DはCに対し、
DがABに対するより
大きい比
をもつ。
(11)
(12)
、
定義5ー7
(大きい比)
による。
N=nD
(FH、K)=m(AB、C)
となっているので、
nD>mC、
nD<mAB
となっており、
D:C>D:AB
となっている。
(K;=mC)<D
となる場合で、
n=1のときも、
D>mC、
D<mAB
となっており、
D:C>D:AB
となっている。
《次に
[AE>=EB の場合、
すなわち、]
AEがEBより《
大きい
》[
小さく
ない]とせよ。
【・・・(e)】
もう1つの場合を論じている。
最初の場合において、
(K;=mC)<D
となる場合で、
n=1のときの推論に
妥当性を認める
とすれば、
場合分けは不要で、
以下の推論も不要
となる。
《
小さい
》[
大きく
ない]EBは
何
倍
かされると
いつかDより
大きく
なるであろう。
公準1ー2の補足
(アルキメデスの原理)
による。
mEB>D
となっている。
何
倍
かされ、
GHをDより
大きい
、
EBの
倍量
とせよ。
【・・・(f)】
推論の設定である。
量の倍は、
命題の補足(定義5ー2)
(作図.倍量)
による。
GH(;;=mEB,>D)
をとっている。
そして
GHがEBの何
倍
であろうと、
FGはAEの、
KはCの
同じ
倍数
であるとせよ。
【・・・(g)】
推論の設定である。
量の倍は、
命題の補足(定義5ー2)
(作図.倍量)
による。
(GH;=mEB)>D
となるmに対して、
FG(;;=mAE)、
K(;;=mC)
をとっている。
同様にして
FH、KはAB、Cの同数
倍
である
ことを証明しうる。
(a)
,
(g)
により、
GHがKに等しいこともしたがう。
【・・・(13)】
FH=mAB、
K=mC、
GH=(K;=mC)
となっている。
そして同様にして
Dの
倍量
であり
しかもはじめて
FGより
大きい
Nがとられたとせよ。
【・・・(h)】
推論の設定である。
量の倍は、
命題の補足(定義5ー2)
(作図.倍量)
による。
N(;;=nD,>(FG;>=(n−1)D)
をとっている。
(FG;=m(AE;>=EB))>=(GH;=mEB,>D)
となっているので、
n>=2
となり、
(M;(n−1)D)
が図示される量として存在する。
そうすれば
FGは
また
Mより
小さく
ない。
【・・・(14)】
(h)
による。
FG>=(M;(n−1)D)
となっている。
しかも
GHはDより
大きい
。
(f)
による。
(GH;=(K;=mC))>D
となっている。
ゆえに
FH全体は
D、Mの和、
すなわち
Nより
大きい
。
【・・・(15)】
(14)
、
(h)
、
公理1ー4の補足3
(大きい(小さい)ものどうしを加える)
による。
(FH;=FG+GH=mAE+mEB=mAB)
>(((M;=(n−1)D)+D);=(N;=nD))
となっている。
そして
GHより、
すなわち
Kより《
大きい
》[
小さく
ない]FGが
Nより《
大きく
ない》[
小さい
]から、
KはNより《
大きく
ない》[
小さい
]。
【・・・(16)】
(13)
(g)
(e)
(h)
公理1ー8の補足2
(等より大・小、大・小に等)
による。
(GH;=(K;=mC))<=FG<(N;=nD)
すなわち、
(K;=mC)<(N;=nD)
となっている。
そして同様にして
上述するところにしたがって
証明を完結する。》
FH、KはAB、Cの同数倍である。
(15)
(16)
より、
mAB>nD、
mC<nD
となっているので、
定義5ー7
(大きい比)
により、
AB:D>C:D
D:C>D:AB
となっている。
よって
[以上の2つの場合から、
]
不等
な2
量
のうち、
大きい
量
は
小さい
量
より、
同一の
量
に対して
大きい比
をもち、
同一の
量
は
小さい
量
に対して、
大きい
量
に対するより
大きい比
をもつ。
これが証明すべきことであった。
命題5ー8
は、
A>B
ならば
A:C>B:C、
C:B>C:A
のことである。
命題5ー8
は推論用命題である。
前提
作図
推論
定義
5-7
公準
1-2補
公理
1-4補3
,
1-5補2
,
1-8補2
,
補3(題5-1)
命題
1-3補
,
補(義5-2)
5-1
その他
コ2(題5-1)
,
コ2(題1-16)inas
(,場合分け)
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