ユークリッド原論をどう読むか(10)
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(10)はじめに

今回は、第6巻である。
この巻で扱う内容の中心は、
 異なる2種類の量の比、比例である。
第5巻では、
 線分で量を一般的に表現して、
 第6巻以降の具体的な量の
 比例関係を扱う準備をしていた。
したがって、
 第6巻の巻頭は
 面積と長さの比例関係を
 扱うものとなっている。
命題6ー1 である。
今日の学校教育では、
 面積を底辺×高さというように式で与えて、
 その後を論じているが、
 これと全く対照的である。
もっとも、
 原論の立場の方が、
 あくまで論理的であり、
 原則的であるのだが、
 初めて接する際には
 違和感が拭えないであろう。
また、
 証明の論述は
 一般的に通用するものであるが、
 図となると
 準一般的なものとならざるを得ない
 ところがあって、
 このあたりにも
 ある種の慣れが必要である。
その上で、
 同じ比であることを
 定義5ー5 にしたがって
 論証するのであるから、
 敷居が高いと感じられるであろう。
ところが、
 論証は
 方向を意識しておけば
 さほど混乱するところはない。
参照のための番号や記号を
 振っておいたので
 楽しんでいただけると思う。
第6巻は、
 長さと面積の比例から始まり、
 相似、線分の区分などの作図、逆比例、
 相似な図形や外中比(黄金比)
 などの作図を経て、
 最後が
 命題6ー33 の弧と中心角、円周角の比例で終わる。
直線図形でないものの比例である。
しかし、
 この巻のハイライトは
 やはり外中比(黄金比)の
 作図命題(6ー30) であろう。
作図そのものは
 命題2ー11 で、より簡明なものが
 与えられているが、
 比例論の流れの中で位置づけて
 命題(6ー29) の流れに沿った方法で
 作図することの意味は大きいであろう。
最後に、
 定義6ー2 の逆比例について触れておく。
原文のままでは
 意味が極めて取りにくい。
用例である命題6ー14 を踏まえながら、
 原文を補った。
もちろん
 補ったところは
 明確に示してある。
読者の皆さんなら
 どう補っていただけるだろうか?

なお、
 本文を読むに当たって、
 次のことに留意いただきたい。
 第6巻にあたり、繰り返しておく。
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