ユークリッド原論をどう読むか(13)
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ユークリッド原論
第9巻
命題9ー36
(完全数)
(同じ比の2つの順次比例の各項は一方の初項と他方の末項の積の約数)
もし
単位
から始まり
順次に1
対
2の
比
をなす
任意個の
数
が定められ、
それらの総和が
素数
になるようにされ、
そして
全体が
最後の
数
に
かけ
られて
ある
数
をつくる
ならば、
その
積
は
完全数
であろう。
単位は、
定義7ー1
による。
対は、
定義の補足(命題8ー2)
による。
比は、
定義5ー3
による。
数は、
定義7ー2
による。
素数は、
定義7ー12
による。
かけるは、
定義7ー16
による。
積は、
定義7ー16の補足2
による。
完全数は、
定義7ー23
による。
単位
から始まり
1
対
2の
比
をなす
任意個の
数
A、B、C、Dが定められ、
それらの総和が
素数
になるようにし、
そして
Eを全体に
等しく
し、
EがDに
かけ
て
FGをつくる
とせよ。
「
数
(について)・・・とせよ」は、
コメント4(命題7ー1)
参照のこと。
準一般的な証明である。
コメント2(命題5ー1)
参照のこと。
1、A、B、C、D=順次に1:2
1+A+B+C+D=素数=E
E×D=FG
となっている。
FGは
完全数
であると主張する。
A、B、C、Dの
個数
がいくつ
であろうと、
同じ
個数
の、
Eから始まり
1
対
2の
比
をなす
E、HK、L、Mがとられた
とせよ。
[......(a)]
1、A、B、C、D=順次に1:2
E、HK、L、M=順次に1:2
となっている。
等間隔比
により
AがDに
対するように
、
EがMに
対する
。
前節、
命題7ー14
(数の等間隔比)
による。
A:D=E:M
となっている。
それゆえ
E、Dの
積
はA、Mの
積
に
等しい
。
前節、
命題7ー19
(4数の比例と内項・外項の積)
による。
E×D=A×M
となっている。
そして
E、Dの
積
はFGである。
命題の設定
による。
ゆえに
A、Mの
積
もFGである。
前節、前々節、
公理1ー1
(同じものに等しい)
による。
したがって
AはMに
かけ
てFGをつくった。
前節による。
A×M=FG
となっている。
それゆえ
MがFGを
割っ
た
商
は
Aのなかにある
単位
の
個数
である。
前節、
定義7ー8の補足
(商)
による。
FG/M=A
となっている。
そして
Aは2である。
命題の設定
による。
A=2
となっている。
ゆえに
FGはMの2
倍
である。
FG=2×M
となっている。
したがって、
M:FG=1:2
となる。
ところが
M、L、HK、Eも
順次に互いの2
倍
である。
命題の設定
による。
したがって
E、HK L、M、FGは
順次に1
対
2の
比
をなして
比例
する
[......(1)]
前節、前々節
命題7ー19
(4数の比例と内項・外項の積)
による。
そこで
第2
項
HKと
末項
FGから
初項
に
等しい
HN、FOが
それぞれ引き去られた
とせよ。
[......(b)]
HKーHN=HKーE=NK
FGーFO=FGーE=OG
となっている。
そうすれば
第2
項
と
初項
との差が
初項
に
対するように
、
末項
と
初項
との差が
末項
の前のすべての
項
の和に
対する
。
前々節、
命題9ー35
(順次比例の2項ー初項:末項ー初項)
による。
ゆえに
NKがEに
対するように
、
OGがM、L、KH、Eの和に
対する
。
前節による。
NK:E=OG:M+L+KH+E
となっている。
そして
NKはEに
等しい
。
(a)
、
(b)
による。
HK=2×E、
NK=HKーHN=HKーE
=E
となっている。
したがって
OGはM、L、HK、Eの和に
等しい
。
前節、前々節、
定義7−21
(比例)
による。
OG=M+L+HK+E
となっている。
ところが
FOはEに、
EはA、B、C、Dと
単位
との和に
等しい
。
(b)
、
命題の設定
による。
公理1ー1
(同じものに等しい)
により
FO=A+B+C+D+1
となっている。
それゆえ
全体FGは
E、HK、L、Mと
A、B、C、Dと
単位
との和に
等しい
。
[......(2)]
(b)
、
公理1ー8の補足5
(全体、ひく部分、残る部分)
により、
FG=OG+FO
となっており、
前節、前々節、
公理1ー2
(等しいものに等しいものを加える)、
公理1ー1
(同じものに等しい)
による。
FG=E+HK+L+M
+1+A+B+C+D
となっている。
そして
それらに
割り切ら
れる。
命題の設定
、
(a)
、
(1)
、 により、
1、A、B、C、D
と
E、HK、L、M、FG
は、
順次に1対2に比例している
から、
命題9ー36の補足
により、
E×D=FG
は、
2つの数列の各項に割り切られる。
E|FG、HK|FG、L|FG、M|FG、
A|FG、 B|FG、C|FG、D|FG、
となっている。
ともに同じ比で順次に比例する
A1、A2、・・・、Am
と
B1、B2、・・・、Bm
があるとき、
Am-n、Am-n+1、・・・、Am
と
B1、B2、・・・、B1+n
はともに
同じ比で順次に比例する
から、
命題7ー14
(数の等間隔比)
により、
Am-n:Am=B1:B1+n
となるので
命題7ー19
(4数の比例と内項・外項の積)
により
Am×B1=Am-n×B1+n
となる。
したがって、
同じ比の2つの順次に比例する数列の各項は、
一方の初項と他方の末項の積の約数である。
(以下、
命題9ー36の補足
(同じ比の2つの順次比例の各項は一方の初項と他方の末項の積の約数)という。)
FGは
また
A、B、C、D、E、HK L、Mと
単位
以外の他のいかなる
数
にも
割り切ら
れないであろう
と主張する。
もし可能ならば、
背理法の仮定を述べようとしている。
何らかの
数
PがFGを
割り切る
とし、
そして
Pが
A、B、C、D、E、HK、L、Mの
いずれとも同じでない
とせよ。
背理法の仮定である。
P|FG、
Pnot=A、B、C、D、E、HK、L、M
となっている。
そして
PがFGを
割っ
た
商
に
等しい
個数
の
単位
が
Qのなかにある
とせよ。
FG/P=Q
となっている。
そうすれば
QはPに
かけ
てFGをつくった。
前節、
命題の補足4(定義7ー16)
(商を割る数にかけると割られる数)
による。
Q×P=FG
となっている。
ところが
EもDに
かけ
てFGをつくった。
命題の設定
による。
E×D=FG
となっている。
ゆえに
EがQに
対するように
、
PがDに
対する
。
[......(3)]
前節、前々節、
命題7ー19
(4数の比例と内項・外項の積)
による。
E:Q=P:D
となっている。
そして
A、B、C、Dは
単位
から始まり
順次に比例
する
から、
命題の設定
による。
DはA、B、C以外の
他のいかなる
数
にも
割り切ら
れない
であろう。
[......(4)]
前節、
命題9ー13
(素数の累乗はその累乗だけが割り切る)
による。
そして
PはA、B、Cのいずれとも同じでない
と仮定されている。
背理法の仮定
による。
したがって
PはDを
割り切ら
ない
であろう。
前節、前々節による。
Pnot|D
となっている。
ところが
PがDに
対するように
、
EがQに
対する
。
(3)
による。
それゆえ
EはQを
割り切ら
ない。
背理法の仮定として、
EがQを割り切る
とすると、
定義7−21(比例)
により、
PがDを割り切る
ことになるが、
前々節により
これはありえない
ので
矛盾する。
よって、
背理法による。
Enot|Q
となっている。
そして
Eは
素数
である。
命題の設定
による。
ところが
すべての
素数
は
それが
割り切ら
ない
すべての
数
に
対して素
である。
命題7ー29
(素数は倍数以外に対して素)
のことである。
ゆえに
E、Qは
互いに素
である。
前節、前々節、前々々節による。
ところが
[互いに]素
である
数
は
最小
であり、
命題7ー21
(互いに素な数は同じ比の最小)
のことである。
最小
である
数
は
同じ比
をもつ
数
を割り切り、
前
項
が前
項
を、
後
項
が後
項
を
割っ
た
商
は
等しい
。
命題7ー20
(同じ比なら最小のが割り切る)
のことである。
そして
EがQに
対するように
、
PがDに
対する
。
(3)
による。
したがって
EがPを、
QがDを
割っ
た
商
は
等しい
。
前節、前々節による。
P/E=D/Q
となっている。
ところが
DはA、B、C以外の
他のいかなる
数
にも
割り切ら
れない。
(4)
による。
それゆえ
A、B、Cの一つと同じである。
前節による。
Bと同じである
とせよ。
[......(C)]
Q=B
としている。
したがって、
P/E=D/B
となっている。
そして
B、C、Dの
個数
がいくつであろうと、
Eから始まり
同じ
個数
のE、HK、Lがとられた
とせよ。
E、 HK、Lは
B、C、Dと
同じ比
をなす。
(a)
による。
ゆえに
等間隔比
により
BがDに
対するように
、
EがLに
対する
。
前節、
命題7ー14
(数の等間隔比)
による。
B:D=E:L
となっている。
したがって
B、Lの
積
はD、Eの
積
に
等しい
。
前節、
命題7ー19
(4数の比例と内項・外項の積)
による。
ここの論証は
命題9ー36の補足
(2つの順次比例の一方の初項と他方の末項の積)
と同じである。
B×L=D×E
となっている。
ところが
D、Eの
積
は
Q、Pの
積
に
等しい
。
(2)により
E:Q=P:D
となり、
命題7ー19
(4数の比例と内項・外項の積)
による。
D×E=Q×P
となっている。
したがって
Q、Pの
積
はB、Lの
積
に
等しい
。
前節、前々節、
公理1ー1
(同じものに等しい)
による。
Q×P=B×L
となっている。
それゆえ
QがBに
対するように
、
LがPに
対する
。
前節、
命題7ー19
(4数の比例と内項・外項の積)
による。
Q:B=L:P
となっている。
そして
QはBと同じである。
(c)
による。
ゆえに
LもPと同じである。
前節、
定義7−21
(比例)
による。
L=P
となっている。
[(c)において、
QをA、C
としても、
同様に
Pは、それぞれ、M、HKとなる。 ]
これは不可能である。
なぜなら
Pは定められた
数
の
いずれとも同じでない
と仮定されているから。
背理法の仮定
による。
したがって
A、B、C、D、E、HK、L、Mと
単位
以外の他のいかなる
数
も
FGを
割り切ら
ない
であろう。
背理法による。
そして
FGは
A、B、C、D、E、HK、L、Mと
単位
との和に
等しい
ことが証明された。
(2)
による。
FG=1+A+B+C+D
+E+HK+L+M
となっている。
ところが
完全数
とは
自分自身の
約数
の和に
等しい
数
である。
定義7−23
(完全数) による。
よって
FGは
完全数
である。
前節、前々節による。
これが証明すべきことであった。
命題9ー36
は、
Sn;Sn=1十2^1十2^2十……+2^(n-1)
のとき、
Sn;素数
ならば、
Sn×2^(n-1);完全数
のことである。
命題9ー36の補足 (同じ比の2つの順次比例の各項は一方の初項と他方の末項の積の約数)
前提
作図
推論
定義
公準
公理
命題
7-14
,
7-19
その他
命題9ー36
は推論用命題である。
前提
作図
推論
定義
7-8補
,
7-21
,
7-23
公準
公理
1-1
,
1-2
,
1-8補5
命題
補4(義7-16)
,
7-14
,
7-19
,
7-20
,
7-21
,
7-29
,
9-13
,
9-35
,
9-36補
その他
コ4(題7-1)
コ2(題5-1)
,背理法
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