ユークリッド原論をどう読むか(10)
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ユークリッド原論
第6巻
命題6ー33(弧と中心角・円周角の比例)
等しい2円において
角は
中心角も円周角も
それらが立つ弧と同じ比をもつ。
ABC、DEFを等しい円とし、
角BGC、EHFを
それらの中心G、Hにおける角とし、
角BAC、EDFを
円周における角とせよ。
-
円ABC[;;(A,B,C);上.円周ABC]
に対して、
命題3ー1(作図.円の中心)
により、
中心G.円ABC
をとり、
公準1ー1の補足(作図.任意の点をとる)
により、
点H
をとり、
命題1ー2(作図・線分)
により、
線分HD[;;=GA]
をとり、
公準1ー3(作図.円)
により、
円DEF(H,HD;;(D,E,F);上.円周DEF)
をとると、
円ABC=円DEF
となっている。
-
円ABC[;;(A,B,C);上.円ABC]
に対して、
中心G.円ABC、
点H、
円DEF(H,;;=円ABC,(D,E,F);上.円DEF)、
をとっている。
弧BCが弧EFに対するように、
角BGCが角EHFに、
角BACが角EDFに対する
と主張する。
任意個のCK、KLが
次々に弧BCに等しくされ、
-
公準1ー1(作図.直線)
により
弦BCを結ぶ。
命題4ー1(作図.線分の挿入)
により
点K(円ABC,外.B;;CK=(挿入)BC)
をとっている。
このとき、
命題3ー28(等しい弦は等しい弧を切り取る)
により
弧BC=弧CK。
必要な回数だけ
この操作を繰り返せばよい。
-
準一般的な証明は、
コメント2(命題5ー1)参照のこと。
命題5ー1(同数倍の和1)
と同様に補足すれば、
一般的な証明となる。
-
弧CK=弧BC
弧KL=弧BC
・・・
となっている。
任意個のFM、MNが
弧EFに等しくされ、
-
上と同様である。
ただし、
倍数(回数)は上と独立である。
-
弧FM=弧EF、
弧MN=弧EF
をとっている。
GK、GL、HM、HNが結ばれたとせよ。
-
公準1ー1(作図.直線)
による。
-
半径GK、GL、HM、HN
をとっている。
そうすれば
弧BC、CK、KLは
互いに等しいから、
角BGC、CGK、KGLは
互いに等しい。
-
命題3ー27(弧が等しければ角も等しい)
による。
-
∠BGC=∠CGK=∠KGL
となっている。
それゆえ
弧BLがBCの何倍であろうと、
角BGLは
角BGCの同じ倍数である。
-
(弧BL、∠BGL)=m(弧BC、∠BGC)
となっている。
同じ理由で
弧NEが弧EFの何倍であろうと、
角NHEは
角EHFの同じ倍数である。
-
角BGLの倍数とNEHの倍数とは
独立である。
-
(弧NE、∠NEH)=n(弧EF、∠EHF)
となっている。
《ゆえに》[ところが]もし
弧BLが弧ENに等しければ、
角BGLも角EHNに等しく、
もし
弧BLが弧ENより大きければ、
角BGLも角EHNより大きく、
もし
小さければ、小さい。
【・・・(1)】
- 論証の流れからすると、
「ところが」という雰囲気がふさわしい。
「ゆえに」はなじまない。
-
命題3ー27(弧が等しければ角も等しい)、
公理1ー8(大きい)、
公理1ー8の補足(小さい)
による。
-
弧BL(<,=,>)弧EN
ならば
∠BGL(<,=,>)∠EHN
となっている。
そこで
4つの量、
2つは弧BC、EF、
2つは角BGC、EHFがあり、
弧BC、角BGCの同数倍なる
弧BL、角BGLと、
弧EF、角EHFの同数倍なる
弧EN、角EHNとがとられている。
-
定義5ー5(同じ比)
にしたがって
同じ比であることを
論証するための前提を
確認している。
-
(弧BL、∠BGL)=m(弧BC、∠BGC)、
(弧EN、∠EHN)=n(弧EF、∠EHF)
となっている。
そしてもし、
弧BLが弧ENより大きければ、
角BGLも角EHNより大きく、
等しければ、等しく、
小さければ小さい
ことが証明された。
-
(1)
による。
-
弧BL(<,=,>)弧EN
ならば
∠BGL(<,=,>)∠EHN
となっている。
したがって
弧BCがEFに対するように、
角BGCが角EHFに対する。
-
定義5ー5(同じ比)
による。
-
弧BC:弧EF=∠BGC:∠EHF
となっている。
《ところが》[また]
角BGCが角EHFに対するように、
角BACが角EDFに対する。
なぜなら
どちらも2倍であるから。
- ここは、
中心角に続けて、
円周角についての論証であり、
「また」の方が妥当である。
-
命題5ー15(同数倍の比)
による。
-
「なぜなら・・・であるから」は、
コメント2(命題1ー16)参照のこと。
-
∠BGC:∠EHF=∠BAC:∠EDF
となっている。
それゆえ
弧BCが弧EFに対するように、
角BGCが角EHFに、
角BACが角EDFに対する。
-
命題5ー11(同一の比に同じ比)
による。
-
弧BC:弧EF
=∠BGC:∠EHF
=∠BAC:∠EDF
となっている。
よって
等しい2円において
角は
中心角も円周角も
それらが立つ弧と同じ比をもつ。
これが証明すべきことであった。
- 直線図形以外の比例の初出である。
- 命題6ー33は、
円ABC[G,GA;;(B,C);上.円ABC]
に対して、
円DEF(H,;;=円ABC,(D,E,F);上.円DEF)、
をとれば、
弧BC:弧EF
=∠BGC:∠EHF (中心角)
=∠BAC:∠EDF (円周角)
のことである。
- 命題6ー33は推論用命題である。
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