ユークリッド原論をどう読むか(7)
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ユークリッド原論
第3巻
命題3ー36
(いわゆる方べきの定理2)
(いわゆる方べきの定理3)
もし
円
の外部に1
点
がとられ、
それから
円
に
2つの
直線
がひかれ、
それらの一方は
円
を
切り
、
他方は
接する
とすれば、
切る
線分
の全体と、
外部に
その
点
と
凸型の弧
との間に
切り取られた
線分
とに
かこまれた
矩形
は
接線
の上の
正方形
に
等しい
であろう。
円は、
定義1ー15
による。
点は、
定義1ー1
による。
直線は、
定義1ー4
による。
切るは、
定義3ー2の補足2
による。
接するは、
定義3ー2
による。
線分は、
定義の補足(命題1ー1)
による。
凸型の弧は、
定義の補足3(命題3ー8)
による。
かこまれたは、
定義2ー1
による。
矩形は、
定義1ー22
による。
接線は、
定義3ー2の補足3
による。
正方形は、
定義1ー22
による。
等しいは、
公理1ー7
による。
円
ABCの外部に
任意の
点
Dがとられ、
公準1ー1の補足
による。
Dから
円
ABCに
2
線分
DCA、DBがひかれたとせよ。
そして
DCAは
円
ABCを
切り
、
円を切る直線の引き方は、
この後、
2つの場合に分けられる。
BDは
接する
とせよ。
命題3ー17
による。
AD、DCに
かこまれた
矩形
は
DB上の
正方形
に
等しい
と主張する。
そこで
DCAは
中心
を通るか
通らないか
である。
場合分けである。
まず
中心
を通るとし、
第1の場合である。
Fを
円
ABCの
中心
とし、
【・・・(a)】
命題3ー1
により、
中心をとり、
それをFとする。
公準1ー1
により
FとDとを結ぶ。
定義の補足3(命題3ー8)
、
命題3ー8の補足4
により
線分FDは
円周と1つの交点をもち、
それをCとする。
公準1ー2
により
線分FDをFの方向に延長する。
命題の補足3(定義1ー14)
により、
必要なだけ延長すれば
延長した部分は
交点をもつ。
定義の補足(命題3ー8)
、
命題3ー8の補足2
により、
交点は1つあり、
それをAとする。
A、Cを溯って用いている。
FBが結ばれたとせよ。
命題3ー17
により
Dから円ABCに
接線をひき、
接点をBとする。
Bを溯って用いている。
公準1ー1
により
FとBとを結ぶ。
そうすれば、
角
FBDは
直角
である。
命題3ー18
による。
そして
弦
ACは
Fにおいて2
等分
され、
定義1ー17
により
ACは
直径であり、
定義1ー16
による。
それに
CDが加えられたから、
矩形
AD、DCと
FC上の
正方形
との和は
FD上の
正方形
に
等しい
。
【・・・(1)】
命題2ー6
による。
ところが
FCは
FBに
等しい
。
(a)
,
定義1ー15
による。
ゆえに
矩形
AD、DCと
FB上の
正方形
との和は
FD上の
正方形
に
等しい
。
(1)
,
公理1ー2
、
公理1ー1
による。
そして
FB、BD上の
正方形
の和は
FD上の
正方形
に
等しい
。
命題1−47
による。
したがって
矩形
AD、DCと
FB上の
正方形
との和は
FB、BD上の
正方形
の和に
等しい
。
公理1ー1
による。
双方から
FB上の
正方形
がひかれたとせよ。
そうすれば
残りの
矩形
AD、DCは
接線
のDB上の
正方形
に
等しい
。
公理1ー3
による。
三平方の定理により
FD^2=FB^2+BD^2
であるが、
FD^2ーFB^2=BD^2
と変形して、
(FDーFB)(FD+FB)=BD^2
と因数分解すると、
FB=FC=FAであることに注意すれば、
(FDーFC)(FD+FA)=BD^2
となり、
CD×AD=BD^2
となる。
この式が求めるものであった。
また、
FD^2ーFC^2=(FDーFC)(FD+FC)
=CD×AD
この式こそが
命題2ー6
である。
逆に言えば、
円外の点から引いた
接線と
中心を通る線分と
における上記の関係から
命題2ー6
に注目することになったのではないか
とも考えられる。
次に
DCAが
円
ABCの
中心
を通らないとし、
第2の場合である。
中心
Eがとられ、
命題3ー1
による。
EからACに
垂線
EFがひかれ、
【・・・(b)】
公準1ー1の補足
により、
円内の中心E以外のところに
点Fをとり、
公準1ー1
により
FとDとを結ぶ。
定義の補足3(命題3ー8)
、
命題3ー8の補足4
により
線分FDは
円周と1つの交点をもち、
それをCとする。
公準1ー2
により
線分FDをFの方向に延長する。
命題の補足3(定義1ー14)
により、
必要なだけ延長すれば
延長した部分は
交点をもつ。
定義の補足(命題3ー8)
、
命題3ー8の補足2
により、
交点は1つあり、
それをAとする。
A、Cを溯って用いている。
命題1ー12
により、
EからACに垂線をひく。
命題3ー3
により
垂線は
弦ACを2等分する。
この点を改めてFとする。
Fを溯って用いている。
EB、EC、EDが結ばれたとせよ。
公準1ー1
による。
そうすれば
角
EBDは
直角
である。
(b)
,
命題3ー18
による。
そして
中心
を通る
線分
EFが
中心
を通らない
弦
ACを
直角
に
切る
から、
それをまた2
等分
する。
(b)
,
命題3ー3
による。
それゆえ
AFは
FCに
等しい
。
そして
弦
ACは
点
Fにおいて2
等分
され、
それに
CDが加えられたから、
矩形
AD、DCと
FC上の
正方形
との和は
FD上の
正方形
に
等しい
。
命題2ー6
による。
双方に
FE上の
正方形
が加えられたとせよ。
そうすれば
矩形
AD、DCと
CF、FE上の
正方形
との和は
FD、FE上の
正方形
の和に
等しい
。
【・・・(2)】
公理1ー2
による。
ところが
角
EFCは
直角
であるから、
(b)
による。
EC上の
正方形
は
CF、FE上の
正方形
の和に
等しい
。
命題1−47
による。
これにより、
(2)
の左辺、
すなわち、
矩形AD、DCと
CF、FE上の正方形との和は、
矩形AD、DCとEC上の正方形との和
に等しい。
【・・・(3)】
そして
ED上の
正方形
は
DF、FE上の
正方形
の和に
等しい
。
命題1−47
による。
これにより、
(2)
の右辺、
すなわち、
FD、FE上の正方形の和は
ED上の正方形に等しい。
したがって
矩形
AD、DCと
EC上の
正方形
との和は
ED上の
正方形
に
等しい
。
【・・・(4)】
(2)
,
(3)
、
公理1ー1の補足
による。
ところが
ECは
EBに
等しい
。
(b)
,
定義1ー15
による。
それゆえ
矩形
AD、DCと
EB上の
正方形
との和は
ED上の
正方形
に
等しい
。
【・・・(5)】
(4)
,
公理1ー2
による。
また
角
EBDは
直角
であるから、
命題3ー18
による。
EB、BD上の
正方形
の和は
ED上の
正方形
に
等しい
。
命題1−47
による。
ゆえに
矩形
AD、DCと
EB上の
正方形
との和は
EB、BD上の
正方形
の和に
等しい
。
(5)
,
公理1ー1
による。
双方から
EB上の
正方形
がひかれたとせよ。
残りの
矩形
AD、DCは
DB上の
正方形
に
等しい
。
公理1ー3
による。
したがって、
2つの場合の結果により
矩形AD、DCは
接線のDB上の正方形に等しい
よってもし
円
の外部に1
点
がとられ、
それから
円
に
2つの
直線
がひかれ、
それらの一方は
円
を
切り
、
他方は
接する
とすれば、
切る
線分
の全体と、
外部に
その
点
と
凸型の弧
との間に
切り取られた
線分
とに
かこまれた
矩形
は
接線
の上の
正方形
に
等しい
であろう。
これが証明すべきことであった。
本命題により、
「
もし
円の外部に1点がとられ、
それから円に
2つの直線がひかれ、
ともに
円を切るとすれば、
それぞれの線分の全体と、
外部に
その点と凸型の弧との間に
切り取られた線分とに
かこまれた矩形は
互いに等しい
」
ことが証明される。
(以下、「
命題3ー36の補足
」(いわゆる方べきの定理3)という。)
命題3ー17
(作図.円外の点から円への接線)
により、
円外の点から円に接線となる線分をひくと
命題3ー36
(いわゆる方べきの定理2)
により、
円を切るそれぞれの線分の全体と、
外部に
その点と凸型の弧との間に
切り取られた線分とに
かこまれた矩形は
ともに
接線の上の正方形に
等しくなるからである。
命題3ー35
とあわせて、いわゆる方べきの定理となる。
「命題3ー36の補足」(いわゆる方べきの定理3)
前提
作図
推論
定義
公準
公理
命題
3-17
3-36
その他
命題3ー36
は推論用命題である。
前提
作図
推論
定義
1-15
,
1-16
,
1-17
,
補(題3-8)
,
補3(題3-8)
公準
1-1
,
1-1補
,
1-2
公理
1-1
,
1-1補
,
1-2
,
1-3
命題
補3(題1-14)
,
1-12
,
3-1
,
3-8補2
,
3-8補4
,
3-17
1-47
,
2-6
,
3-3
,
3-18
その他
場合分け
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