ユークリッド原論をどう読むか(7)
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ユークリッド原論
第3巻
命題3ー35(いわゆる方べきの定理1)
もし
円において
2つの弦が
互いに交わるならば、
一方の弦の
2つの部分にかこまれた矩形は
他方の弦の
2つの部分にかこまれた矩形に
等しい。
円ABCDにおいて
2つの弦AC、BDが
点Eにおいて
互いに交わるとせよ。
-
円ABCD
に対して、
点A[円周ABCD]、
点C[円周ABCD,外.A]、
点B[内.弧AC]、
点D[円周ABCD,内.反対側(AC,B)]、
交点E(AC,BD)
をとっている。
AE、ECにかこまれた矩形は
DE、EBにかこまれた矩形に
等しいと主張する。
[
AC、BDが
ともに中心を通る場合、
ともに中心を通らない場合
一方だけが中心を通る場合、
がある。
ともに中心を通る場合、
]
そこでもし
AC、BDが中心を通り
Eが
円ABCDの中心である
ならば、
- AC、BDが
中心を通るかどうかで
場合分けを行っているが、
後半の
AC、BDがともに中心を通らない場合の
証明を見ると、
中心から垂線をひくことができるかどうか
という観点から
場合分けを行っている
ことがわかる。
とすれば、
AC、BDが
ともに中心を通る場合、
ともに中心を通らない場合
一方だけが中心を通る場合、
の3つの場合に分けなければならない。
原論の証明では、
第3の場合が抜けている。
- 場合分けの第1の場合である。
-
E;中心.円ABCD
となっている。
AE、EC、DE、EBは
等しいから
-
定義1ー15
(円)
による。
-
AE=EC=DE=EB
となっている。
AE、ECにかこまれた矩形も
DE、EBにかこまれた矩形に
等しいことは明らかである。
-
定義2ー1
(かこまれる)
による。
-
矩形(AE、EC)=矩形(DE、EB)
となっている。
[
ともに中心を通らない場合]
次に
AC、DBが中心を通らないとし、
円ABCDの中心がとられ、
それをFとし、
- 場合分けの第2の場合である。
-
命題3ー1
(作図.円の中心)
による。
-
中心F.円ABCD
をとっている。
Fから
弦AC、DBに
垂線FG、FHがひかれ、
【・・・(a)】
-
命題1ー12
(作図・線分への垂線)
による。
弦ACと
FからACにおろした垂線と
の交点をG、
弦DBと
FからDBにおろした垂線と
の交点をH
としている。
-
垂線FG(F,AC)、
垂線FH(F,DB)
をとっている。
FB、FC、FEが結ばれたとせよ。
-
公準1ー1
(作図.直線)
による。
-
線分FB、FC、FE
をとっている。
そうすれば
中心を通る線分GFが
中心を通らない弦ACを
直角に切るから、
- (a)
による。
-
GF;(通)中心.円ABCD
AC;¬(通)中心.円ABCD
GF⊥AC
となっている。
それをまた2等分する。
-
命題3ー3
(直径と弦)
による。
-
G;中点(AC)
となっている。
それゆえ
AGはGCに等しい。
そこで
弦ACが
Gにおいて等しい部分に、
Eにおいて不等な部分に
分けられたから、
AE、ECにかこまれた矩形と
EG上の正方形との和は
GC上の正方形に等しい。
-
命題2ー5
(線分の矩形分割)
による。
-
EとGが一致してても、
等式は成立する。
-
矩形(AE,EC)+正方(_EG)=正方(_GC)
となっている。
双方に
GF上の正方形が加えられたとせよ。
そうすれば
矩形AE、ECとGE、GF上の正方形との和は
CG、GF上の正方形の和に等しい。
【・・・(1)】
-
公理1ー2
(等しいものに等しいものを加える)
による。
-
矩形(AE,EC)+正方(_EG)+正方(_GF)
=正方(_GC)+正方(_GF)
となっている。
ところが
FE上の正方形は
EG、GF上の正方形の和に等しく、
-
命題1−47
(三平方の定理)
による。
-
したがって、
(1)により、
矩形AE、ECとGE、GF上の正方形との和は
矩形AE、ECとFE上の正方形に等しくなる。
-
正方(_FE)=正方(_EG)+正方(_GF)
となり、
矩形(AE,EC)+正方(_GE)+正方(_GF)
=矩形(AE,EC)+正方(_FE)
となっている。
FC上の正方形は
CG、GF上の正方形の和に等しい。
-
命題1−47
(三平方の定理)
による。
-
したがって、
(1)により、
矩形AE、ECとGE、GF上の正方形との和は
FC上の正方形に等しくなる。
-
正方(_FC)=正方(_CG)+正方(_GF)
となり、
矩形(AE,EC)+正方(_GE)+正方(_GF)
=正方(_FC)
となっている。
したがって
矩形AE、ECとFE上の正方形との和は
FC上の正方形に等しい。
- 公理1ー1(同じものに等しい)
による。
-
矩形(AE,EC)+正方(_EF)=正方(_FC)
となっている。
ところが
FCは
FBに等しい。
それゆえ
矩形AE、ECとEF上の正方形との和は
FB上の正方形に等しい。
【・・・(2)】
-
定義1ー22
(正方形・矩形・菱形・長斜方形・トラペジオン)
、
公理1ー1
(同じものに等しい)
による。
-
矩形(AE,EC)+正方(_EF)=正方(_FB)
となっている。
同じ理由で
矩形DE、EBとFE上の正方形との和は
FB上の正方形に等しい。
しかも
矩形AE、ECとFE上の正方形との和は
FB上の正方形に等しいことも
先に証明された。
- (2)による。
-
矩形(DE,EB)+正方(_EF)=正方(_FB)、
矩形(AE,EC)+正方(_EF)=正方(_FB)
となっている。
ゆえに
矩形AE、ECとFE上の正方形との和は
矩形DE、EBとFE上の正方形との和
に等しい。
-
公理1ー1
(同じものに等しい)
による。
-
矩形(DE,EB)+正方(_EF)
=矩形(AE,EC)+正方(_EF)
となっている。
双方から
FE上の正方形がひかれたとせよ。
そうすれば
残りのAE、ECにかこまれた矩形は
DE、EBにかこまれた矩形
に等しい。
-
公理1ー3
(等しいものから等しいものをひく)
による。
-
矩形(DE,EB)=矩形(AE,EC)
となっている。
-
一方だけが中心を通る
第3の場合、
次のようになる。
BDだけが
中心を通っているとする。
命題3ー1
(作図.円の中心)
により、
円ABCDの中心をとり、
それをFとする。
命題1ー12
(作図・線分への垂線)
により、
Fから
弦ACに
垂線をひき、
その交点をGとする。
公準1ー1
(作図.直線)
により、
FC、FEを結ぶ。
そうすれば
中心を通る線分GFが
中心を通らない弦ACを
直角に切るから、
-
GF;(通)中心F.円ABCD
AC;¬(通)中心F.円ABCD
GF⊥AC
となっている。
命題3ー3
(直径と弦)
により、
それをまた2等分する。
それゆえ
AGはGCに等しい。
そこで
弦ACが
Gにおいて等しい部分に、
Eにおいて不等な部分に
分けられたから、
命題2ー5
(線分の矩形分割)
により、
AE、ECにかこまれた矩形と
EG上の正方形との和は
GC上の正方形に等しい。
-
矩形(AE,EC)+正方(_EG)
=正方(_GC)
となっている。
双方に
GF上の正方形を加えると、
公理1ー2
(等しいものに等しいものを加える)
により、
矩形AE、ECとGE、GF上の正方形との和は
CG、GF上の正方形の和に等しい。
【・・・(3)】
-
矩形(AE,EC)+正方(_GE)+正方(_GF)
=正方(_CG)+正方(_GF)
となっている。
ところが
GE、GF上の正方形の和は
命題1−47
(三平方の定理)
により、
FE上の正方形に等しく、
-
正方(_GE)+正方(_GF)
=正方(_FE)
となっている。
CG、GF上の正方形の和は
命題1−47
(三平方の定理)
により、
FC上の正方形に等しい。
-
正方(_CG)+正方(_GF)
=正方(_FC)
となっている。
したがって
(3)により、
矩形AE、ECとFE上の正方形との和は
FC上の正方形に等しい。
-
矩形(AE,EC)+正方(_FE)=正方(_FC)
となっている。
ところが
定義1ー15
(円)
により、FCは
FBに等しい。
それゆえ
定義1ー22
(正方形・矩形・菱形・長斜方形・トラペジオン)
、
公理1ー1
(同じものに等しい)
により、
矩形AE、ECとEF上の正方形との和は
FB上の正方形に等しい。
-
矩形(AE,EC)+正方(_EF)=正方(_FB)
となっている。
【・・・(4)】
弦BDは
中心Fにおいて等しい部分に、
Eにおいて不等な部分に
分けられているから、
命題2ー5
(線分の矩形分割)
により、
BE、EDにかこまれた矩形と
EF上の正方形との和は
FB上の正方形に等しい。
-
矩形(BE,ED)+正方(_EF)=正方(_FB)
となっている。
しかも
矩形AE、ECとFE上の正方形との和は
FB上の正方形に等しいことも
先に証明された。
- (4)による。
-
矩形(AE,EC)+正方(_FE)
=正方(_FB)
となっている。
ゆえに
公理1ー1
(同じものに等しい)
により、
矩形AE、ECとFE上の正方形との和は
矩形DE、EBとFE上の正方形との和
に等しい。
-
矩形(AE,EC)+正方(_FE)
=矩形(DE,EB)+正方(_FE)
となっている。
双方から
FE上の正方形がひかれたとせよ。
そうすれば
公理1ー3
(等しいものから等しいものをひく)
により、
残りのAE、ECにかこまれた矩形は
DE、EBにかこまれた矩形
に等しい。
-
矩形(AE,EC)=矩形(DE,EB)
となっている。
-
第2の場合は、
上記の証明を前提とすれば、
弦ACとBDとの交点Eと
中心Fと
を通る直径GHをひき、
矩形AE、ECと
矩形BE、EDと
がともに
矩形GE、EHに等しい
ことから証明できる。
-
第3の場合の特別な場合として、
BDは中心を通り、
ACは中心を通らず、
かつACをBDが垂直2等分している
場合について、
命題の論証とは別に考える。
このとき、
三平方の定理により
FC^2=FE^2+EC^2
であるが、
FC^2ーFE^2=EC^2
と変形して、
(FCーFE)(FC+FE)=EC^2
と因数分解すると、
FC=FB=FD、EC=EAであることに注意すれば、
(FBーFE)(FD+FE)=AE×EC
となり、
BE×ED=AE×EC
となる。
この式が求めるものであった。
また、
FD^2ーFE^2
=(FDーFE)(FD+FE)
=(BFーFE)(FD+FE)
=BE×ED
この式こそが
命題2ー5(線分の矩形分割)
である。
逆に言えば、
円内の点から引いた
直径と
その直径に直交する弦と
における上記の関係から
命題2ー5(線分の矩形分割)
に注目することになったのではないか
とも考えられる。
[
したがって、
3つの場合の結果により、
AE、ECにかこまれた矩形は
DE、EBにかこまれた矩形に
等しい]
-
矩形(AE,EC)=矩形(DE,EB)
となっている。
よってもし
円において
2つの弦が互いに交わるならば、
一方の弦の2つの部分にかこまれた矩形は
他方の弦の2つの部分にかこまれた矩形
に等しい。
これが証明すべきことであった。
- 命題3ー35は、
円ABCD
に対して、
弦AC..円ABCD、
弦BD..円ABCD、
交点E(AC,BD)
をとれば、
矩形(AE,EC)=矩形(BE,ED)
のことである。
- 命題3ー35は推論用命題である。
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