ユークリッド原論をどう読むか(2)
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ユークリッド原論
第1巻
命題1ー12(作図・線分への垂線)
(垂線は唯一)
(直線と円との交点は2つ以下)
与えられた無限直線に
その上にない与えられた点から
垂線を下ろす
こと。
与えられた無限直線をAB
とし、
その上にない与えられた点をC
とせよ。
このとき
与えられた無限直線ABに
その上にない与えられた点Cから
垂線を下ろさ
ねばならぬ。
直線ABの反対側に
任意の点Dがとられ、
-
反対側
は、
定義1ー7の補足(同じ側・反対側(平面))
による。
「直線ABについてCと反対側」
という意味である。
-
公準1ー1の補足(作図.任意の点をとる)
による。
-
点D[AB外、Cの反対側]
をとっている。
中心C半径CDをもって
円EFGが描かれ、
-
公準1ー3(作図.円)
による。
-
円と直線との交点が
2つ存在するかどうか
が論証の要点であるが、
原論では論証されていない。
これは、次のように論証できる。
もし
直線CDが直線ABと交わらない
とすれば、
定義1ー23(平行(線))
により
平行になる
から、
直線CD上のどの点も
直線ABについて同じ側になる。
これは、
DがCと反対側にあるということに矛盾する。
背理法により
直線CDは直線ABと交わる。
交点をIとする。
そこで
公準1ー3(作図.円)
により
中心C半径CDをもって円を描く。
そうすると、
CとDは
直線ABについて反対側にある
から、
線分CD上に(端ではなく)Iがある。
CIは半径より小さい
ので
円の内部にある。
また、
直線ABは無限直線である
から、
AとBとが円の外部にある
としてもよい。
したがって
命題の補足3(定義1ー14)(図形と直線の交点)
により、
線分AI上、BI上にそれぞれ交点がある。
なお、
この命題の証明においては
それぞれの交点が唯一であることまでは
要求されない。
それぞれの一つをG、Eとすればよい。
-
円EFG(C,CD)、
E、G;交点(AB,円EFG)
をとっている。
線分EGがHにおいて2等分され、
-
命題1ー10(作図・線分の2等分)
による。
-
H;中点(EG)
をとっている。
線分CG、CH、CEが結ばれた
とせよ。
【・・・(a)】
-
公準1ー1(作図.直線)
による。
-
線分CG、CH、CE
をとっている。
[そうすれば]
与えられた無限直線ABに
その上にない与えられた垂線点Cから
垂線CHがひかれている
と主張する。
GHはHEに等しく、
HCは共通である
から、
2辺GH、HCは
2辺EH、HCにそれぞれ等しい。
そして、
底辺CGは底辺CEに等しい。
-
前節、
(a)、
定義1ー15(円)
による。
-
(GH,HC)=(EH,HC)、
CG=CE
となっている。
したがって
角CHGは角EHCに等しい。
-
前節、
命題1ー8(3辺相等2)
により、
三角形GHCとEHCが、
合同となっているから。
-
∠CHG=∠EHC
となっている。
そして接角である。
ところが
直線が直線の上に立てられて
接角を互いに等しくする
とき、
等しい角の双方は直角であり、
立てられた直線は
その下の直線に対して垂線
とよばれる。
-
定義1ー10(直角)
のことである。
これにより、
CHは垂線となっている。
よって
与えられた無限直線ABに
その上にない与えられた点Cから
垂線CHが下ろされている。
これが作図すべきものであった。
- 直線外の点から
その直線へ下ろした垂線は唯一である。
(以下、命題1ー12の補足(垂線は唯一)という。)
背理法の仮定として、
直線AB外の点Cから
ABへの垂線が2本ある
とする。
そうすれば、
それぞれ、
異なる点H、LでABと交わる。
なぜならば、
同一の点で交われ
ば、
公理1ー9(2点を通る直線は一致)
により、
同一の直線となる
からである。
そうすると、
同側内角の和は、
どちらも直角である
から、
2直角となり、
CHとCL
は公準1ー5(平行線公準)
により平行となる
が、
交点Cがある
ので
矛盾する。
よって
背理法により、垂線は唯一である。
命題1ー16(外角と内対角)
が証明された後であれ
ば、
公準1ー5(平行線公準)
を前提としない。
-
直線と円との交点は2つ以下である。
(以下、命題1ー12の補足2(直線と円との交点は2つ以下)という。)
背理法の仮定として、
直線ABと円EFGの交点が
G、E以外にKがあった
とする。
線分EKを2等分する点をL
とすると、
CLも直線ABの垂線となる。
したがって、
直線ABと交わる2直線CH、CLがある
ことになる。
これ
は、命題1ー12の補足(垂線は唯一)
に矛盾する。
よって
G、E以外には交点がない
ことがわかる。
-
なお、
この命題の証明では
あくまで公準1ー5(平行線公準)
は
要求されていない。
-
命題1-12は、
AB;直線、
C;点[AB外]
に対して、
D;点[AB外,Cと反対側]、
E、G;交点(AB,円(C,CD))、
H;中点(EG)
をとるならば、
CH⊥AB
のことである。
-
命題1ー12の補足2(直線と円との交点は2つ以下)
前提 | 作図 | 推論 |
定義 |
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公準 |
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公理 |
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命題 |
|
1-12補
|
その他 |
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|
-
命題1ー12の補足(垂線は唯一)
前提 | 作図 | 推論 |
定義 |
|
|
公準 |
1-5
|
|
公理 |
|
1-9
|
命題 |
|
|
その他 |
|
|
-
命題1-12は作図用命題である。
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