ユークリッド原論をどう読むか(6)
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目次
ユークリッド原論
第3巻
命題3ー8
(円外の点から円周への線分)
凹形の弧
(凹形弧をとおる直線は1交点)
凸形の弧
(凸形の弧をとおる直線は1交点)
もし
円
の外部に1
点
がとられ、
その
点
から
円周
に
いくつかの
線分
がひかれ、
そのうち一つは
中心
を通り
他は任意であるとすれば、
凹形の弧
にひかれた
線分
のうち
中心
を通るものは最も
大きく
、
他の
線分
のうち
中心
を通るものに
近い
ものは
遠い
ものより常に
大きい
。
他方
凸形の弧
にひかれた
線分
のうち
その
点
と直径との間のものが最も
小さく
、
他の
線分
のうち
最も
小さい
ものに
近い
ものは
遠い
ものより常に
小さく
、
そして
その
点
から
円周
に
ただ二つの
等しい
線分
が
最も
小さい
線分
の両側にひかれるであろう。
円は
定義1ー15
による。
点は
定義1ー1
による。
円周は
定義1ー17の補足
による。
線分は
定義の補足(命題1ー1)
による。
中心は
定義1―16
による。
弧は
定義1―18の補足
による。
凹形の弧
は、
円の外部にとられた点から見て
凹形の弧のことである。
すなわち、
円周上の点は、
外部の点とむすんだ直線が、
円と1点で接するのは
命題3ー6の補足4
により
2つだけであり、
それ以外の円周上の点は、
命題3ー2の補足
により、
外部の点とむすんだ直線が
円周と2点で交わることになる。
そのうち
遠い方がのっている部分の弧のことである。
(以下、
定義の補足(命題3ー8)
(凹形の弧)という)
それは、
命題3ー6の補足4
により
外部の点からひかれた
二接線の
接点を結ぶ二つの弧のうち、
外部の点から遠い方である。
したがって、
ある点と
それからみて凹形の弧の点をとおる直線は、
凹形の弧と他の点では交わらない。
(以下、
命題3ー8の補足2
(凹形弧をとおる直線は1交点)という)
大きいは
公理1ー8
による。
凸形の弧
は、
円の外部にとられた点から見て
凸である弧のことである。
すなわち、
円周上の点は、
外部の点とむすんだ直線が、
円と1点で接するのは
命題3ー6の補足4
により
2つだけであり、
それ以外の円周上の点は、
命題3ー2の補足
により、
外部の点とむすんだ直線が
円周と2点で交わることになる。
そのうち
近い方がのっている部分の弧のことである。
(以下、
定義の補足3(命題3ー8)
(凸形の弧)という)
それは、
命題3ー6の補足4
により
外部の点からひかれた
二接線の
接点を結ぶ二つの弧のうち、
外部の点に近い方である。
したがって、
ある点と
それからみて凸形の弧の点をとおる直線は、
凸形の弧と他の点では交わらない。
(以下、
命題3ー8の補足4
(凸形の弧をとおる直線は1交点)という)
直径は
定義1ー17
による。
その点と直径との間の線分とは、
その点と凹形の弧にひかれた線分のうち
中心を通るものから
直径に重なる部分を除いたものである。
小さいは
公理1ー8の補足
による。
等しいは
公理1ー7
による。
ABCを
円
とし、
円
ABCの外部に
点
Dがとられ、
それから
線分
DA、DE、DF、DCがひかれ、
[それぞれ凹型の孤とG、K、L、Hで交わり、]
DAは
中心
を通るとせよ。
凹形の弧
AEFCに
ひかれた
線分
のうち
中心
を通るDAが最も
大きく
、
DEはDFより、
DFはDCより
大きく
、
他方
凸形の弧
HLKGに
ひかれた
線分
のうち
その
点
と直径AGとの間のDGが最も
小さく
、
最も
小さい
線分
DGに
近い
ものが
遠い
ものより常に
小さい
、
すなわち
DKはDLより、
DLはDHより
小さい
と主張する。
円
ABCの
中心
がとられ、
それをMとせよ。
【・・・(a)】
公準1−1の補足
により
円の外部に点Dがとられ、
命題3ー1
により
円の中心Mがとられ、
公準1−1
により
線分MDが結ばれ、
命題3−2の補足
により
線分MDと円周が交点Gをもち、
【・・・(a1)】
公準1−2
により
MDがMの方向に延長され、
命題3ー2の補足
により
この延長と円周が交点Aをもつ。
【・・・(a2)】
AGは
円の直径となる。
直径AGによって切り取られた
一方の半円について、
命題3ー6の補足4
により
Dからひいた半円への接線の接点をPとする。
【・・・(a3)】
半径MPについて、
Dと反対側にある弧AP上に
公準1ー1の補足
により
点Eを任意にとる。
さらに
弧EP上に点F、
弧FP上に点Cを任意にとり、
【・・・(a4)】
公準1−1
により
DE、DF、DCを結ぶ。
半円AGHにおいて
Dを通る接線の接点は
命題3ー6の補足4
により
Pのみである。
半直線DE、DF、DCは
直線ADについて
Pと同じ側にあるので、
命題3ー2の補足
により、
半円AGHと2点で交わる。
線分DE、DF、DCは
半径MPについてDと反対側にある
E、F、Cとむすんでいるので
命題の補足3(定義1ー14)
により
MPとR、S、Tで交わる。
再び
線分DR、DS、DTは
円の外部のDと
内部、R、S、Tをむすんでいるので、
命題3−2の補足
により、
円周とH、L、Kで交わる。
このようにしたとき、
E、F、Cは凹形の弧の上にあり、
H、L、Kは凸形の弧の上にある。
H、L、Kは
凸形の部分に任意にとった点ではないが、
上の手順とは逆に、
公準1ー1の補足
により、
弧GP上に点Kを任意にとり、
弧KP上に点L、
弧LP上に点Hを任意にとり、
公準1ー1
によりDK、DL、DHを結び、
それぞれ
K、L、Hの方向に延長すると、
上記の論証と同様に半径KPと交わり、
半円の弧と再び交わることになる。
それらの交点を
順に点E、F、Cとすればよい。
そして
ME、MF、MC、MK、ML、MHが
結ばれたとせよ。
公準1−1
による。
そうすれば、
AMはEMに
等しい
から、
(a)
,
定義1−15
による。
双方に
MDが加えられたとせよ。
そうすれば
ADは
EM、MDの和に
等しい
。
【・・・(1)】
命題の設定
,
公理1−2
による。
ところが
EM、MDの和は
EDより
大きい
。
命題1−20
による。
ゆえに
ADも
EDより
大きい
。
【・・・(2)】
(1)
,
公理1−8の補足2
による。
Eは、
A以外の凹の部分に
任意にとられた点であるから、
ADが最も大きいことになる。
また
MEは
MFに
等しく
、
(a)
,
定義1−15
による。
MDは
共通であるから、
EM、MDの和は
FM、MDの和に
等しい
。
【・・・(3)】
後半の部分は、
「2辺EM、MDは
2辺FM、MDに等しい」
の間違いであろうが、
英文の
Euclid's Elements(Professor D.E.Joyce Clark University)
においても、
two sides という表現が
命題3ー7
にはあるが
命題3ー8
にはないので、
誤訳ではなく、
原典そのものにおいても
このようになっていたものと考えられる。
そして
角
EMDは
角
FMDより
大きい
。
(a4)
,
公理1−8
による。
それゆえ
底辺
EDは
FDより
大きい
。
命題1−24
による。
同様にして、
FDがCDより
大きい
ことも証明しうる。
【・・・(4)】
ゆえに
DAは
最も
大きく
、 DEは
DFより、
DFはDCより
大きい
。
(2)
(3)
(4)
による。
このままでは、
中心を通るものに近いものが
遠いものより常に大きい
という部分が欠落する。
中心を通るものに
近いとか遠いとかは
命題3ー7
の中の解説を参照のこと。
この部分は
次のように証明される。
命題3ー8の補足2
により
Eは弧AF上にあるので、
直線DFについて、
Aと同じ側にあり、
また、
直線DAについて、
Fと同じ側にあるので、
線分DEは、角FDAの内部にある。
したがって、
DEは
DFより中心を通るDAに近い。
同様に
DFは
DCよりDAに近いことが証明される。
次に
MK、KDの和はMDより
大きく
、
命題1ー20
による。
MGは
MKに
等しい
から、
定義1ー15
による。
残りのKDは
残りのGDより
大きい
。
公理1ー4の補足2
による。
それゆえ
GDは
KDより
小さい
。
【・・・(5)】
公理1ー8の補足
による。
そして
三角形
MLDの
辺の一つMDの上に
三角形
の内部で
交わる
2
線分
MK、KDが
つくられたから、
Kが三角形MLDの内部であることは
次のように証明される。
弧LG上にKがあるので、
公理1ー8
により
角LMDの内部に線分MKがある。
また、
命題3ー8の補足4
により、
Kは直線DLについて、
Mと同じ側にあるので、
角LDMの内部に線分DKがある。
よって
Kは三角形MLDの内部にある。
MK、KDの和は
ML、LDの和より
小さい
。
命題1ー21
による。
ところが
MKはMLに
等しい
。
定義1ー15
による。
ゆえに
残りのDKは
DLより
小さい
。
公理1ー4の補足2
による。
同様にして
DLも
DHより
小さい
ことを証明しうる。
【・・・(6)】
したがって
DGは最も
小さく
、
DKはDLより、
DLはDHより
小さい
。
(5)
(6)
による。
「DAは最も大きく、
DEはDFより、
DFはDCより大きい。」
を証明した後の補足と同様に、
最も小さいもの
DGに近いものが
遠いものより
常に小さいことが残されている。
ただ、
Kは三角形MLDの内部にあり、
DKは
DLよりDGに近い
ことが直ちに確認できる。
同様に
DLはDHよりDGに近い
ことが分かる。
前半部分と合わせると、
点Dと半円上の点Nとを結んだ線分は、
NがGにあるとき最も小さく、
凸形の弧をMに進むにしたがって大きくなり、
さらに
凹形の弧をMからAに進むにしたがって大きくなり、
Aにあるとき最も大きくなる。
【・・・(101)】
また
点
Dから
円周
に
ただ二つの
等しい
線分
が
最も
小さい
線分
DGの両側に
ひかれるであろうと主張する。
線分
MD上に
その上の
点
Mにおいて
角
KMDに
等しい
角
DMBがつくられ、
【・・・(b)】
直線MDについて
Kと反対側にBがあるように、
命題1ー23
により
角DMBをつくり、
線分MBが半径より小さければ
公準1ー2
により
線分MBをBの方向に延長すると、
命題3ー2の補足
により
円周と1点で交わる。
この交点を改めてBとする。
DBが結ばれたとせよ。
公準1ー1
による。
そうすれば
MKはMBに
等しく
、
(a)
,
定義1ー15
による。
MDは共通であるから、
2辺KM、MDは
2辺BM、MDにそれぞれ
等しい
。
そして
角
KMDは
角
BMDに
等しい
。
(b)
作図の設定による。
それゆえ
底辺
DKは
底辺
DBに
等しい
。
【・・・(7)】
命題1ー4
による。
原論では
弧の凸の部分にひかれる線分のみに
言及しているが、
接線や
凹の部分にひかれる線分においても
同様に証明される。
点
Dから
円周
にDKに
等しい
他のいかなる
線分
も
ひかれないであろうと主張する。
もし可能ならば、
線分が
ひかれ得る円周上の点は、
凸形の弧の部分と
凹形の弧の部分と
接点である。
「もし可能ならば」は、
コメント2(命題1−7)
参照のこと。
[まず
凸形の弧
の部分に、
DKに等しい]
線分
がひかれたとし、
それをDNとせよ。
【・・・(c)】
背理法の仮定である。
そうすれば
DKはDNに
等しく
、
背理法の仮定による。
他方、
DKはDBに
等しい
から、
(7)
による。
DBもDNに
等しい
、
公理1ー1
による。
すなわち
最も
小さい
線分
DGに
近い
ものが
遠い
ものに
等しい
。
これは不可能であることが証明された。
(101)
による。
Nが直線DAについて
Kと同じ側か
Bと同じ側か
いずれかである。
いずれにしても、
KあるいはBと異なる位置であれば、
一方がDGに近く
他方がDGから遠いことになる。
(101)
により、
このことが従う。
[次に
接点
となる部分
あるいは
凹形の弧
となる部分に
線分
がひかれたとすると、
この
線分
は
(101)
により、
凸の部分にひかれた
線分
より
大きく
なる。]
[ ]の部分は原論には記載がない。
凹形の弧にひかれた線分についても、
それに等しい線分は、
線分DAについて
反対側にひかれる1本を除いて
他のいかなる線分もひかれないことが
同様にして証明される。
Dからひかれる
二つの接線が等しい
ことは
命題3ー6の補足4
による。
それゆえ
点
Dから
円
ABCに
最も
小さい
DGの両側に
二つより多い
等しい
線分
は
ひかれないであろう。
以上で、
背理法により
円外の点から円周の凸の部分に
ひかれた
線分
で等しいものは
ただ2本であることが証明されたわけである。
よってもし
円
の外部に1
点
がとられ、
その
点
から
円周
に
いくつかの
線分
がひかれ、
そのうち一つは
中心
を通り
他は任意であるとすれば、
凹形の弧
にひかれた
線分
のうち
中心
を通るものは最も
大きく
、
他の
線分
のうち
中心
を通るものに
近い
ものは
遠い
ものより常に
大きい
。
他方
凸形の弧
にひかれた
線分
のうち
その
点
と直径との間のものが最も
小さく
、
他の
線分
のうち、
最も
小さい
ものに
近い
ものは
遠い
ものより常に
小さく
、
そして
その
点
から
円周
に
ただ二つの
等しい
線分
が
最も
小さい
線分
の
両側にひかれるであろう。
これが証明すべきことであった。
命題3ー8の補足2
(凹形弧をとおる直線は1交点)は推論用命題である。
前提
作図
推論
定義
公準
公理
命題
3-6補4
3-2補
その他
命題3ー8の補足4
(凸形の弧をとおる直線は1交点)は推論用命題である。
前提
作図
推論
定義
公準
公理
命題
3-6補4
3-2補
その他
命題3ー8
は推論用命題である。
前提
作図
推論
定義
1-15
公準
1-1
,
1-1補
,
1-2
公理
1-1
,
1-2
,
1-4補2
,
1-8
,
1-8補
,
1-8補2
命題
補3(義1-14)
,
1-23
,
3-1
,
3-2補
,
3-6補4
1-4
,
1-20
,
1-21
,
1-24
,
3-8補2
,
3-8補4
その他
背理法,
コ2(題1-7)
、場合分け
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