ユークリッド原論をどう読むか(6)
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ユークリッド原論
第3巻
命題3ー15
(直径と弦の大きさ)
円
において
直径
は最も
大きく
、
他の
弦
のうち
中心
に近いものは
遠いものより常に
大きい
。
円は、
定義1ー15
による。
直径は、
定義1ー17
による。
大きいは、
公理1ー8
による。
弦は、
定義3ー4の補足
による。
中心は、
定義1ー16
による。
近いは、
定義3ー5の補足
による。
遠いは、
定義3ー5
による。
ABCDを
円
、
ADをその
直径
、
Eを
中心
とし、
BCは
《
直径
AD》[中心E]に近く、
FGは遠いとせよ。
円ABCD、
に対して、
直径AD..円ABCD、
中心E.円ABCD、
弦BC..円ABCD、
垂足H(E,BC)、
点Z[円ABCD;;外.(A、B、C、D)]、
点K[EZ;;EK>EH]、
交点F(円ABCD,垂線(K,EZ);;同側(EZ,A))、
交点G(円ABCD,垂線(K,EZ);;反対側(EZ,A))、
をとっている。
ADは
最も
大きく
、
BCは
FGより
大きい
と主張する。
中心
Eから
BC、FGに
垂線
EH、EKが
ひかれたとせよ。
【・・・(a)】
命題1ー12
(作図・線分への垂線)
による。
垂足H(E,BC)、
垂足K(E,FG)
となっている。
BCは
中心
に近く、
FGは
遠いから、
命題の設定
による。
EKは
EHより
大きい
。
【・・・(1)】
定義3ー5
(大きい距離・遠い)
による。
EK>EH
となっている。
ELを
EHに
等しく
し、
【・・・(b)】
命題1ー3の補足
(作図.等しい線分となる点)
による。
EL=EH
となっている。
Lを通り
EKに
直角
に
LMがひかれ、
【・・・(c)】
命題1ー11
(作図・線分からの垂線)
により、
円の内部にある点Lから、
直線EKに垂直な半直線がひかれる。
この半直線は、
円の内部を通っているので、
命題3−2の補足
(円内通過直線は円周と2交点)
により
円周と1点で交わる。
この点をMとする。
交点M(円ABCD,垂線(L,EK);;同側(EK,A))
をとっている。
Nまで延長され、
公準1−2
(作図.直線の延長)
により、
Lから、
Mとは反対方向に
半直線を延長する。
この半直線は、
命題3−2の補足
(円内通過直線は円周と2交点)
により、
円周と1点で交わる。
この点をNとする。
交点N(円ABCD,延長ML)
をとっている。
ME、EN、FE、EGが結ばれたとせよ。
公準1−1
(作図.直線)
線分ME、EN、FE、EG
をとっている。
EHは
ELに
等しい
から、
(b)
による。
EH=EL
となっている。
BCもMNに
等しい
。
【・・・(2)】
命題3−14
(等しい弦と中心からの距離)
による。
BC=MN
となっている。
また
AEは
EMに、
EDは
ENに
等しい
から、
命題の設定
,
定義1−15
(対頂角)
による。
AE=EM、
ED=EN
となっている。
ADは
ME、ENの和に
等しい
。
公理1−2
(等しいものに等しいものを加える)
による。
AD=ME+EN
となっている。
ところが
ME、ENの和は
MNより
大きく
、
命題1−20
(三角形の2辺の和と1辺)
による。
ME+EN>MN
となっている。
MNは
BCに
等しい
。
(b)
,
命題3−14
(等しい弦と中心からの距離)
による。
MN=BC
となっている。
それゆえ
ADは
BCより
大きい
。
公理1−8の補足2
(等より大・小、大・小に等) という)
による。
AD>BC
となっている。
そして
2
辺
ME、ENは
2
辺
FE、EGに
等しく
、
命題の設定
,
定義1−15
(円)
による。
(ME、EN)=(FE、EG)
となっている。
角
MENは
角
FEGより
大きい
から、
図から直観すれば、
公理1−8
(大きい)
による。
しかし、
論証としてはギャップがある。
論理的には
MNがFGより大きいことが論証されてから
角MENが角FEGより大きいことが推論される。
∠MEN>∠FEG
となっている。
底辺
MNは
底辺
FGより
大きい
。
命題1−24
(三角形の角と底辺1)
による。
適切な推論は次のようになる。
(a)
により、EMとEFは等しく、
定義1ー22
(正方形・矩形・菱形・長斜方形・トラペジオン)
により、
EM上の正方形とEF上の正方形は等しくなる。
(a)
(c)
により、角MLE、角FKEは直角であり、
命題1−47
(三平方の定理)
により、
EM上の正方形はEL、LM上の正方形の和になり、
EF上の正方形は、EK、KF上の正方形の和になる。
したがって、
EL、LM上の正方形の和と、
EK、KF上の正方形の和は等しくなる。
ところが、
(1)
(b)
,
公理1ー8の補足2
(等より大・小、大・小に等)
によりELはEKより小さいので、
定義1ー22
(作図・3線分から三角形)
により、
EL上の正方形はEK上の正方形より小さい。
よって、
公理1ー4の補足4
(和が等しく一方が大きい)
により
LM上の正方形はKF上の正方形より大きい。
命題1−48の補足
(正方形の大等小と辺の大等小)
により、
LMはKFより大きい。
(a)
(a)
命題3ー3
(直径と弦)
により
MN、FGはそれぞれLM、KFの2倍であるから、
公理1ー8の補足4
(大きい・小さいもののn倍・n等分)
により、
MNはFGより大きい。
MN>FG
となっている。
ところが、
MNがBCに
等しい
ことは先に証明された。
(2)
による。
MN>BC
となっていた。
ゆえに
直径
ADは
最も
大きく
、
BCは
FGより
大きい
。
AD>BC>FG
となっている。
よって
円
において
直径
は
最も
大きく
、
他の
弦
のうち
中心
に近いものは
遠いものより常に
大きい
。
これが証明すべきことであった。
命題3ー15
は、
円ABCD、
に対して、
直径AD..円ABCD、
中心E.円ABCD、
弦BC..円ABCD、
弦FG..円ABCD;距離(E,FG)>距離(E,BC)
をとれば、
AD>BC>FG
のことである。
命題3ー15
は推論用命題である。
前提
作図
推論
定義
1-15
,
3-5
[
1-22
]
公準
1-1
,
1-2
公理
1-2
,
1-8
,
1-8補2
[
1-4補4
,
1-8補2
,
1-8補4]
命題
1-3補
,
1-11
,
1-12
,
3-2補
1-20
,
1-24
,
3-14
[
1-47
,
1-48補
,
3-3
]
その他
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