ユークリッド原論をどう読むか(2)
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ユークリッド原論
第1巻
命題1ー22
(作図・3線分から三角形)
(底辺の両端を中心とする2円の交点)
与えられた3
線分
に
等しい
3
線分
から
三角形
をつくること。
ただし
どの2
線分
をとっても
その和は残りの
線分
より
大きく
なければならない。
線分は、
定義1ー4の補足
による。
等しいは、
公理1ー7
による。
三角形は、
定義1ー19の補足2
による。
大きいは、
公理1ー8
による。
与えられた3
線分
をA、B、Cとし、
そのうちどの2
線分
をとっても
その和は残りの
線分
より
大きい
、
すなわち
A、Bの和はCより、
A、Cの和はBより、
またB、Cの和はAより
大きい
ようにせよ。
A、B、C;線分、
A+B>C、
B+C>A、
C+A>B
をとっている。
このときA、B、Cに
等しい
3
線分
から
三角形
をつくらねばならぬ。
Dにおいて限られ、
Eの方に無限である
任意の
直線
DEが定められ、
実質的に半直線の定義である。
半直(DE)
をとっている。
DFをAに、
FGをBに、
GHをCに
等しく
せよ。
【・・・(a)】
命題1ー3
(作図・等しい線分を切り取る)
による。
点F(DE,DF=A)、
点G(延長DF,FG=B)、
点H(延長FG,GH=C)
をとっている。
そして
中心
F、
半径
FDをもって
円
DKLが描かれたとせよ。
【・・・(b)】
公準1ー3
(作図.円)
による。
円DKL(F,FD)
をとっている。
また
中心
G、
半径
GHをもって
円
KLHが描かれ、
【・・・(c)】
公準1ー3
(作図.円)
による。
この二つの円が交わる。
すなわち、
命題1ー22の3線分の内の1線分について、
その両端から
他の2線分にそれぞれ等しい
半径で円をかくと、
2円は
その線分の両側で
交わる。
(以下、
命題1ー22の補足
(底辺の両端を中心とする2円の交点)という。)
このことは、
論証の要点であるが、
原論では論証されていない。
次のように論証できる。
線分FHはDFより大きいので、
命題1ー3の補足
(作図.等しい線分となる点)
により
FH上にFMがDFに等しくなるように
Mをとることができる。
このとき、
GMはGHより小さい。
なぜなら、
FGがGHより小さい場合は、
自明である。
FGがGHより小さくない場合は、
命題1ー3の補足
(作図.等しい線分となる点)
により
FG上にGLがGHに等しくなるように
Lをとることができる。
背理法の仮定として、
GMが
GHより小さくないとすると、
MはFL上にある。
このとき
FMとGHの和は
FMとGLの和に等しく
FGより大きくないことになる。
ところが
FMとGHの和は
AとCの和に等しく、
命題の設定によれば、
Bに等しいFGより大きい。
これは不可能である。
したがって、
背理法によりGHはGMより大きい。
よってMは、
定義1ー15
(円)
により、
中心G、半径GHの円の内部にある。
一方GDはAとBの和で、
CであるGHより大きいので、
定義1ー15
(円)
により、
Dは中心G、半径GHの円の外部にある。
中心F、半径DFの円は、
中心G、半径GHの円の内部のMと
その外部のDを通るから、
命題の補足3(定義1ー14)
(図形と直線の交点)
により、
交点をもつ。
命題1ー7の補足
(図形と直線の交点)
により、
線分FGの
一方の側では
この交点は1つであり、
その交点をKとし、
他方の側の
交点をLとして、
遡って、
K、Lを用いている。
円KLH(G,GH)
をとっている。
KF、KGが結ばれたとせよ。
公準1ー1
(作図.直線)
による。
線分(K,F)、線分(K,G)
をとっている。
三角形
KFGは
A、B、Cに
等しい
線分
から
つくられていると主張する。
点
Fは
円
DKLの
中心
であるから、
(b)
による。
F;中心.円DKL
となっている。
FDはFKに
等しい
。
定義1ー15
(円)
による。
FD=FK
となっている。
ところがFDはAに
等しい
。
(a)
による。
FD=A
となっている。
それゆえKFもAに
等しい
。
【・・・(1)】
公理1ー1
(同じものに等しい)
による。
KF=A
となっている。
また
点
Gは
円
LKHの
中心
であるから、
GHはGKに
等しい
。
(c)
,
定義1ー15
(円)
による。
GH=GK
となっている。
ところがGHはCに
等しい
。
(a)
による。
GH=C
となっている。
それゆえGKもCに
等しい
。
【・・・(2)】
公理1ー1
(同じものに等しい)
による。
GK=C
となっている。
しかもFGはBに
等しい
。
(a)
による。
FG=B
となっている。
ゆえに
3
線分
KF、FG、GKは
3
線分
A、B、Cに
等しい
。
(1)
,
(2)
による。
(KF,FG,GK)=(A,B,C)
となっている。
よって
与えられた3
線分
A、B、Cに
等しい
3
線分
KF、FG、GKから
三角形
KFGがつくられた。
前節による。
これが作図すべきものであった。
命題1-22
は、
線分A、B、C
に対して、
半直(D,E)、
点F(DE,DF=A)、
点G(延長DF,FG=B)、
点H(延長FG,GH=C)、
交点K[円(F,FD),円(G,GH)]
をとれば、
三角(F,G,K)
のことである。
命題1ー22の補足(底辺の両端を中心とする2円の交点)
前提
作図
推論
定義
1-15
公準
公理
命題
1-3補
補3(義1-14)
,
1-7補
その他
命題1-22
は作図用命題である。
前提
作図
推論
定義
1-15
公準
1-1
、
1-3
公理
1-1
命題
補3(義1-14)
,
1-3補
,
1-7補
その他
二つの円が交わることについては、
命題1-3
を前提とし、背理法を用いて証明する。
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