ユークリッド原論をどう読むか(3)
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ユークリッド原論
第1巻
命題1ー24(三角形の角と底辺1)
もし二つの三角形において
2辺が2辺にそれぞれ等しく、
等しい線分によってはさまれる角の一方が
他方より大きいならば、
底辺も底辺より大きいであろう。
ABC、DEFを
2辺AB、ACが2辺DE、DFにそれぞれ等しい、
すなわち
ABはDEに、ACはDFに等しい二つの三角形
とし、
Aにおける角がDにおける角より大きい
とせよ。
-
△ABC
に対して、
点H[BC]
をとり、
線分DE[;;DE=AB]
に対して、
三角形DEF[_DE;;∠FDE=∠HAB,DF=AC]、
をとれば、
(AB,AC)=(DE,DF)、
∠BCA>∠EDF
となっている。
底辺BCも底辺EFより大きい
と主張する。
角BACは角EDFより大きいから、
線分DE上に
その上の点Dにおいて角BACに等しい角EDGがつくられ、
DGがAC、DFのどちらかに等しくされ、
【・・・(a)】
-
命題の仮定によりAC、DFは等しい。
-
命題1ー23(作図・直線上に指定された角)
により、
角BACに等しい角EDGを
DE上のDにおいてつくることができる。
そのとき
線分DEについて
角EDFと同じ側につくる。
DGよりACが大きければ、
公準1ー2(作図.直線の延長)
により
DGをDHに延長し、
命題1ー3(作図・等しい線分を切り取る)
により
DH上に
ACとDGが等しくなるように
Gをとる。
- 辺ABがACより大きいときには、
点Gが直線EFについて
Dの反対側にくる場合がある。
この場合を
原論では論証していない。
このギャップは
命題1ー7(3辺相等1)
と同様に解消される。
-
定義1ー7の補足(同じ側・反対側(平面))
によれば
平面は
その上にある直線によって
2つの部分に分かれる。
その直線について
同じ側にあるとは、
2つに分かれた部分のうちの
同一の部分にあることをいう。
反対側にあるとは、
それぞれ別の部分にあることをいう。
-
G;頂点.三角形EDG(_ED;;∠EDG=∠BAC,DG=AC)
をとっている。
EG、FGが結ばれたとせよ。
- 公準1ー1(作図.直線)
による。
-
線分(E,G)、線分(F,G)
をとっている。
そうすれば
[
GがEFについて
Dと同じ側になる場合
GがEFについて
反対側になる場合
がある。
同じ側になる場合は、]
ABはDEに、
ACはDGに等しいから、
2辺BA、ACは2辺ED、DGに
それぞれ等しい。
【・・・(1)】
-
命題の設定
による。
-
(BA,AC)=(ED,DG)
となっている。
そして角BACは角EDGに等しい。
-
(a)
による。
-
∠BAC=∠EDG
となっている。
それゆえ
底辺BCは底辺EGに等しい。
[......(2)]
-
前節、前々節、
(1)
,
命題1ー5(2等辺三角形の底角)
による。
-
BC=EG
となっている。
また
DFはDGに等しいから、
角DGFも角DFGに等しい。
【・・・(3)】
-
前節、
命題1ー5(2等辺三角形の底角)
による。
-
∠DGF=∠DFG
となっている。
それゆえ
角DFGは角EGFより大きい。
-
∠DGFが∠EGFより大きい
ので、
前節、
公理1ー8の補足2(等より大・小、大・小に等)
による。
-
∠DFG>∠EGF
となっている。
それゆえ
角EFGは角EGFより一層大きい。
-
∠EFGが∠DFGより大きい
ので、
前節、(3)
,
公理1ー8の補足2(等より大・小、大・小に等)
による。
-
∠EFG>∠EGF
となっている。
[GがEFについて
Dと反対側になる場合
は、
辺DGとDFが等しい
ので、
命題1ー5(2等辺三角形の底角)
により
角FGHと角GFKが等しく
角FGEよりFGHが大きく、
GFKよりGFEが大きいので、
公理1ー8の補足3(大きい・小さいものより大きい・小さい)
により
角GFEがFGEより大きい。
2つの場合から
]
《そして》EFGは
角EFGが角EGFより大きい三角形であり、
大きい角には大きい辺が対するから、
辺EGもEFより大きい。
-
命題1ー19(三角形の大きい辺と大きい角2)
による。
-
EG>EF
となっている。
そして
EGはBCに等しい。
したがって
BCもEFより大きい。
-
前節、前々節、
公理1ー8の補足2(等より大・小、大・小に等)
による。
-
BC>EF
となっている。
よってもし
二つの三角形において
2辺が2辺にそれぞれ等しく、
等しい線分によってはさまれる角の一方が
他方より大きいならば、
底辺も底辺より大きいであろう。
これが証明すべきものであった。
-
命題1-24は、
△ABC、△DEF
に対して、
(AB,AC)=(DE,DF)
∠BAC>∠EDF
ならば、
BC>EF
のことである。
-
命題1-24は推論用命題である。
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