ユークリッド原論をどう読むか(10)
頁末
前
次
目次
ユークリッド原論
第6巻
命題6ー3
(角の2等分線と底辺の比例区分)
もし
三角形
の1つの
角
が2
等分
され、
角
を分ける
直線
が
底辺
をも分けるならば、
底辺
の2部分は
三角形
の残りの2
辺
と
同じ比
をもつ
であろう。
そしてもし
底辺
の2部分が
三角形
の残りの2
辺
と
同じ比
をもつ
ならば、
頂点
から区分点を結ぶ
直線
は
三角形
の
角
を2
等分
する
であろう。
三角形は、
定義1ー19の補足2
による。
角は、
定義1ー8
による。
等分は、
定義の補足2(公理1ー6)
による。
直線は、
定義1ー4
による。
底辺は、
定義の補足(命題1ー35)
による。
辺は、
定義1ー19の補足
による。
同じ比は、
定義5ー5
による。
頂点は、
定義6ー4の補足
による。
ABCを
三角形
とし、
角
BACが
線分
ADによって2
等分
された
とせよ。
命題1ー9
(作図・角の2等分)
による。
△ABC
に対して、
交点D(二等分線(∠BAC),BC)
をとっている。
BDがCDに
対するように
、
BAがACに
対する
と主張する。
Cを通り
DAに
平行
にCEがひかれ、
【・・・(a)】
命題1ー31
(作図・平行線)
による。
平行線(C,DA)
をとっている。
BAが延長されて
公準1ー2
(作図.直線の延長)
による。
延長(BA)
をとっている。
それとEにおいて
交わる
とせよ。
命題1ー30の補足
(交線に平行な線)
による。
交点E(延長BA,平行線(C,DA))
をとっている。
そうすれば
線分
ACが
平行線
AD、ECに
交わる
から、
(a)
作図の設定による。
AC;╂(AD、EC)
となっている。
角
ACEは
角
CADに
等しい
。
【・・・(1)】
命題1ー29
(平行と錯角、内対角、同側内角)
による。
∠ACE=∠CAD
となっている。
ところが
角
CADは
角
BADに
等しい
と仮定されている。
命題の設定
である。
∠CAD=∠BAD
となっている。
それゆえ
角
BADも
角
ACEに
等しい
。
【・・・(2)】
(1)
,
公理1ー1
(同じものに等しい)
による。
∠BAD=∠ACE
となっている。
また
線分
BAEが
平行線
AD、ECに
交わる
から、
(a)
による。
BAE;╂(AD、EC;;AD‖EC)
外
角
BADは
内[対]
角
AECに
等しい
。
【・・・(3)】
命題1ー29
(平行と錯角、内対角、同側内角)
による。
∠BAD=∠AEC
となっている。
ところが
角
ACEが
角
BADに
等しい
ことも先に証明された。
(2)
による。
∠ACE=∠BAD
となっている。
ゆえに
角
ACEは
角
AECに
等しい
。
(3)
,
公理1ー1
(同じものに等しい)
による。
∠ACE=∠AEC
となっている。
したがって
辺
AEは
辺
ACに
等しい
。
【・・・(4)】
命題1ー6
(等しい底角なら二等辺三角形)
による。
AE=AC
となっている。
そして
ADは
三角形
BCEの1
辺
ECに
平行
《にひかれた》[である]
から、
(a)
による。
AD‖EC
となっている。
比例
して、
BDがDCに
対するように
、
BAがAEに
対する
。
【・・・(5)】
命題6ー2
(三角形の辺の平行線による辺の比例区分)
による。
BD:DC=BA:AE
となっている。
ところが
AEはACに
等しい
。
(4)
による。
AE=AC
となっている。
したがって
BDがDCに
対するように
、
BAがACに
対する
。
(5)
,
命題5ー11の補足2
(等しい量は同じ比をもつ)
による。
BD:DC=BA:AC
となっている。
また
BDがDCに
対するように
、
BAがACに
対し
、
ADが結ばれたとせよ。
実際にこのように作図するには、
公準1ー2
(作図.直線の延長)
により、
辺BAをAの方に延長し、
命題1ー3の補足
(作図.等しい線分となる点)
により、
この延長上にEを、
AEが辺ACと等しくなるようにとり、
公準1ー1
(作図.直線)
により、
EとCを結び、
命題1ー31
(作図・平行線)
により
Aを通りECに平行な直線をひく。
この直線は、
命題の補足3(定義1ー14)
(図形と直線の交点)
により、
辺BCと交わり、
その交点をDとする。
すると、
作図の設定
、
命題6ー2
(三角形の辺の平行線による辺の比例区分) 、
命題5ー11の補足2
(等しい量は同じ比をもつ)
により、
BA:AC=BD:DCとなる。
△ABC
に対して、
D(BC;;BA:AC=BD:DC)
をとっている。
角
BACは
線分
ADによって2
等分
されている
と主張する。
命題の後半
である。
同じ作図がなされたとき、
交点E(平行線(C,DA),延長BA)
をとっている。
BDがDCに
対するように
、
BAがACに
対し
、
ADは
三角形
BCEの1
辺
ECに
平行
にひかれたため
【・・・(b)】
同じ作図の内容を述べている。
作図の設定である。
BD:DC=BA:AC、
AD‖EC
となっている。
BDがDCに
対するように
BAがAEに
対する
から、
命題6ー2
(三角形の辺の平行線による辺の比例区分)
による。
BD:DC=BA:AE
となっている。
BAがACに
対するように
、
BAがAEに
対する
。
(b)
,
命題5ー11
(同一の比に同じ比)
による。
BA:AC=BA:AE
となっている。
それゆえ
ACはAEに
等しい
。
命題5ー9
(同一比の量)
による。
AC=AE
となっている。
ゆえに
角
AECは
角
ACEに
等しい
。
【・・・(6)】
命題1ー6
(等しい底角なら二等辺三角形)
による。
∠AEC=∠ACE
となっている。
ところが
角
AECは
外角
BADに
等しく
、
角
ACEは錯
角
CADに
等しい
。
命題1ー29
(平行と錯角、内対角、同側内角)
による。
∠AEC=∠BAD、
∠ACE=∠CAD
となっている。
したがって
角
BADも
角
CADに
等しい
。
(6)
,
公理1ー1の補足
(等しいものに等しい)
による。
∠BAD=∠CAD
となっている。
ゆえに
角
BACは
線分
ADによって2
等分
されている。
AD;二等分線(∠BAC)
となっている。
よってもし
三角形
の1つの
角
が2
等分
され、
角
を分ける
直線
が
底辺
をも分けるならば、
底辺
の2部分は
三角形
の残りの2
辺
と
同じ比
をもつであろう。
そしてもし
底辺
の2部分が
三角形
の残りの2
辺
と
同じ比
をもつならば、
頂点
から区分点を結ぶ
直線
は
三角形
の
角
を2
等分
するであろう。
これが証明すべきことであった。
作図の過程を振り返ると、
命題1ー9
(作図・角の2等分)
による
角の2等分とは独立した
作図方法である
と見ることもできる。
命題6ー3
は、
△ABC
に対して、
D(BC;;AD;二等分線(∠BAC))
をとれば、
BD:DC=BA:AC
逆に、
D(BC;;BD:DC=BA:AC)
をとれば、
AD;二等分線(∠BAC)
のことである。
命題6ー3
は推論用命題である。
前提
作図
推論
定義
公準
1-1
,
1-2
公理
1-1
,
1-1補
命題
補3(義1-14)
,
1-3補
,
1-9
,
1-30補
,
1-31
1-6
,
1-29
,
5-9
,
5-11
,
5-11補
,
6-2
その他
前
次
目次
頁頭