ユークリッド原論をどう読むか(2)
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ユークリッド原論
第1巻
命題1ー21(三角形の2辺の和と2線分の和)
(三角形の角の分割線は対辺と交わる。)
もし
三角形の辺の一つの上に
その両端から
三角形の内部で交わる2線分が
つくられる
ならば、
つくられた2線分は
その和が
三角形の残りの2辺の和より小さいが、
より大きい角をはさむ
であろう。
三角形ABCの辺の一つBCの上に
両端B、Cから
三角形の内部で交わる
2線分BD、DCが
つくられた
とせよ。
-
△ABC、
点D[△ABC内]、
線分(B,D)、
線分(C,D)
をとっている。
BD、DCは
その和が
三角形の残りの2辺BA、ACの和より小さいが、
角BACより大きい角BDCを
はさむ
と主張する。
BDがEまで延長された
とせよ。
-
公準1ー2(作図.直線の延長)
により延長され、
命題の補足3(定義1ー14)(図形と直線の交点)
により
少なくとも2点で交わる。
そのうち
1点は
辺AB、BCの交点Bである
から、
他の1点は
AB、BC上にはなく、
CA上にある
から、
BD、CAが交わる。
その交点をE
とする。
-
交点E(AC,BD)、
線分(D,E)
をとっている。
そうすれば、
すべての三角形において
2辺の和は残りの1辺より大きい
から、
三角形ABEの2辺AB、AEの和は
BEより大きい。
双方に
ECが加えられたとせよ。
そうすれば
BA、ACの和は
BE、ECの和より大きい。
【・・・(1)】
-
公理1ー4(不等なものに等しいものを加える)
による。
-
BA+AC>BE+EC
となっている。
また
三角形CEDの2辺CE、EDの和は
CDより大きい
-
命題1ー20(三角形の2辺の和と1辺)
による。
-
CE+ED>CD
となっている。
から、
双方に
BDが加えられた
とせよ。
そうすれば
CE、EBの和は
CD、DBの和より大きい。
【・・・(2)】
-
公理1ー4(不等なものに等しいものを加える)
による。
-
CE+EB>CD+DB
となっている。
ところが
BA、ACの和が
BE、ECの和より
大きい
ことは先に証明された。
-
(1)
による。
-
BA+AC>BE+EC
となっている。
したがって
なおさらBA、ACの和は
BD、DCの和より大きい。
-
(2)
,
公理1ー8の補足3(大きい・小さいものより大きい・小さい)
による。
-
BA+AC>BD+DC
となっている。
また、
すべての三角形において
外角は内対角より大きい
から、
三角形CDEの外角BDCは
角CEDより大きい。
【・・・(3)】
それゆえ
同じ理由で
三角形ABEの外角CEBも
角BACより大きい。
【・・・(4)】
-
命題1ー16(外角と内対角)
による。
-
∠CEB>∠BAC
となっている。
ところが
角BDCが
角CEBより大きい
ことは先に証明された。
-
(3)
による。
-
∠BDC>∠CEB
となっている。
したがって
なおさら
角BDCは角BACより大きい。
よって
もし三角形の辺の一つの上に
その両端から三角形の内部で交わる
2線分がつくられる
ならば、
つくられた2線分は
その和が三角形の残りの2辺の和より小さい
が、
より大きい角をはさむ。
これが証明すべきことであった。
-
三角形の角を
2つに分ける直線は、
その対辺と
1点で交わる。
(以下、命題1ー21の補足(三角形の角の分割線は対辺と交わる) という。)
命題の補足3(定義1ー14)
(図形と直線の交点)
により、
角(頂点)以外に
少なくとも1点で、
三角形の境界と交わる
が、
その角をなす2辺とは交わらない。
背理法の仮定として
もし
交わる
なら、
公理1ー9
(2点を通る直線は一致)
により、
その辺と直線は一致する
から、
角を2つに分けない。
これは設定に反する。
したがって
背理法により
その角をなす2辺とは交わらない。
よって、
対辺と交わる。
対辺は、
その角を通らない
から、
角を2つに分ける直線とは
異なる直線である。
したがって、
交点は1つである。
- 命題1-21は、
△ABC
に対して、
点D[△ABC内]、
線分(B,D)、
線分(C,D)
ならば、
BD+DC<BA+AC
∠BDC>∠BAC
のことである。
-
命題の補足3(定義1ー14)(図形と直線の交点)
- 命題1-21は推論用命題である。
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