ユークリッド原論をどう読むか(6)
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ユークリッド原論
第3巻
命題3ー7
(円内の点から円周への線分1)
直径に近い・遠い
(円に直径を引く)
最大 最小
もし
円
の
直径
上に
円
の
中心
でない1
点
がとられ、
その
点
から
円周
に
線分
がひかれるならば、
中心
が
その上にあるものが
最も
大きく
、
この
直径
の残りが
最も
小さく
、
他の
線分
のうち
中心
を通る
線分
に
近い
ものが
遠い
ものよりも常に
大きく
、
そして
その
点
から
円周
へ
ただ二つの
等しい
線分
が
最も
小さい
線分
の両側に
ひかれるであろう。
円は
定義1ー15
による。
直径は
定義1ー17
による。
中心は
定義1ー16
による。
点は
定義1ー1
による。
円周は
定義1ー17の補足
による。
線分は
定義の補足(命題1ー1)
による。
大きいは
公理1ー8
による。
小さいは
公理1ー8の補足
による。
最も大きいことを
最大
といい、
最も小さいことを
最小
という。 (以下、
定義の補足3(命題3ー7)
(最大・最小)という。)
等しいは
公理1ー7
による。
線分に
近い
は、
その線分と端点を共有する線分について、
できる角が小さいことをいう。
線分に
遠い
は、
その線分と端点を共有する線分について、
できる角が大きいことをいう。
(以下、
定義の補足(命題3−7)
という。)
ABCDを
円
、
ADをその
直径
とし、
AD上に
円
の
中心
でない
点
Fがとられ、
円
の
中心
をEとし、
Fから
円[周]
ABCDに
線分
FB、FC、FGがひかれたとせよ。
FAが最も
大きく
、
FDが最も
小さく
、
他の
線分
のうち
FBはFCより、
FCはFGより
大きい
と主張する。
公準1ー1の補足
により
円周上にAをとり、
命題3ー1
により
円の中心Eをとり、
公準1ー1
により
線分AEを結び、
公準1ー2
により
AEを延長し、
命題の補足3(定義1ー14)
により
その延長と円周との交点をDとする。
作図の経過から
ADは直径である。
すなわち、
与えられた円に直径を引くことができる
(以下、
命題3ー7の補足2
(作図:円に直径を引く)という。)
公準1ー1の補足
により
直径上の線分EDの上にFをとる。
一方の半円について、
公準1ー1の補足
により、
円周上にBをとり、
弧BD上にCをとり、
弧CD上にGをとり、
公準1ー1
により、
FB、FC、FGを結ぶ。
原論では溯って、A、B、C、Dを用いている。
BE、CE、GEが結ばれたとせよ。
公準1ー1
による。
そうすれば
すべての
三角形
において
2
辺
の和は残りの1
辺
より
大きい
から、
命題1ー20
である。
EB、EFの和は
BFより
大きい
。
しかも
AEはBEに
等しい
。
定義1ー15
による。
それゆえ
AFはBFより
大きい
。
公理1ー2
により、
EB、EFの和は
AE、EFの和に等しく、
AE、EFの和は
AFであるので、
公理1ー8の補足2
による。
第1巻では、
こういう簡明な、
省略した記述は見られなかった。
[したがって
AFは
Fと
円周
上の
点
とを結ぶ
線分
のうちで
最も
大きい
。]
【・・・(1)】
Bは
半円の円周上の任意の位置にある。
それゆえ
AFは、
円周上のA以外の点と
Fとを結んだ線分
より大きい。
すなわち
円周上の点と
Fとを結んだ線分の内で
最も大きい。
また
BEは
CEに
等しく
、
定義1ー15
による。
FEは
共通であるから、
2
辺
BE、EFは
2
辺
CE、EFに
等しい
。
ところが
角
BEFも
角
CEFより
大きい
。
命題の設定
,
公理1ー8
による。
ゆえに
底辺
BFは
底辺
CFより
大きい
。
命題1ー24
による。
同じ理由で
CFも[G]F《H》より
大きい
。
[したがって
中心
を通る
線分
に
近い
ものが
遠い
ものよりも常に
大きい
。]
【・・・(2)】
円周上の点と
Eとを結ぶ線分が、
線分EFとなす角が
大きいほど、
したがって
線分EAとなす角が
小さいほど、
その点と
Fとを結ぶ線分は
大きい。
定義1−4の補足3
により
BFは角CFAの間にあり、
公理1ー8の補足
により
角BFAは
角CFAより小さいので、
BFは
CFよりAFに近い。
また
GF、FEの和は
EGより
大きく
、
命題1ー20
による。
EGは
EDに
等しい
から、
定義1ー15
による。
GF、FEの和は
EDより
大きい
。
公理1ー8の補足2
による。
双方から
EFがひかれたとせよ。
そうすれば
残りのGFは
残りのFDより
大きい
。
公理1ー4の補足2
による。
[したがって
FDは
Fと
円周
上の
点
とを結ぶ
線分
のうちで
最も
小さい
。]
【・・・(3)】
Bは
半円の円周上の任意の位置にあった。
公理1ー8の補足
より、
GFは
BFより小さかったから、
FDは
BFより小さい。
それゆえ
DFは、
円周上の
D以外の点とFとを結んだ線分より小さい。
すなわち
円周上の点とFとを結んだ線分の内で最も小さい。
ゆえに
FAは最も
大きく
、
FDは最も
小さく
、
FBはFCより、
FCはFGより
大きい
。
(1)
,
(2)
,
(3)
による。
また
点
Fから
円[周]
ABCDに
ただ二つの
等しい
線分
が
最も
小さい
線分
FDの両側に
ひかれるであろう
と主張する。
線分
EF上に
その上の
点
Eにおいて
角
GEFに
等しく
角
FEHがつくられ、
【・・・(a)】
命題1ー23
により
角GEFに等しい角FEHを、
EFについてGEFと反対側につくり、
公準1ー2
により
EHをHの方向に延長すると、
命題3−2の補足
により
円周と交わる。
その交点を改めてHとする。
GEFという順による角の向きに
FEHという順の角の向きが一致することに
注意すること。
FHが結ばれたとせよ。
公準1ー1
による。
そうすれば
GEはEHに
等しく
、
定義1ー15
による。
EFは
共通であるから、
2
辺
GE、EFは
2
辺
HE、EFに
等しい
。
そして
角
GEFは
角
HEFに
等しい
。
(a)
による。
それゆえ
底辺
FGは
底辺
FHに
等しい
。
【・・・(4)】
命題1ー4
による。
これで
FG、FHという2本の等しい線分が
FDの両側に引かれることが分かった。
それ以外に
これらに等しい線分はないことが、
証明すべきものとして残っている。
また
点
Fから
円周
に
FGに
等しい
他のいかなる
線分
も
ひかれないであろう
と主張する。
もし可能ならば
背理法の仮定を述べようとしている。
ADについて
Gと同じ側の円周上の点については、
これまでの論証で証明済みである。
「もし可能ならば」は、
コメント2(命題1−7)
参照のこと。
[FKがFGと等しくなるような
点
Kは、
ADについて、Hと同じ側にある、
弧AH上の場合と
弧HD上の場合
がある。
弧AH上の場合]
FKが引かれたとせよ。
【・・・(b)】
背理法の仮定である。
そうすれば
FKは
FGに
等しく
、
(b)
による。
FGは
FHに
等しい
から、
(4)
による。
FKも
FHに
等しい
。
公理1ー1
による。
すなわち、
中心
を通る
線分
に
近い
ものが
遠い
ものに
等しい
。
これは不可能である。
本命題の先に証明された部分と
矛盾することをのべている。
[弧HD上の場合も
弧AH上の場合と同様に
不可能であることが生じる。]
それゆえ
[2つの場合の結果により]
点
Fから
円周
に
GFに
等しい
[HFの]他のいかなる
線分
も
ひかれないであろう。
背理法による。
したがって
ただ一つである。
GFに等しい線分は
HFただ一つであるということ。
したがって
等しい線分は
ただ二つということになる。
よってもし
円
の
直径
上に
円
の
中心
でない1
点
がとられ、
その
点
から
円周
に
線分
がひかれるならば、
中心
がその上にあるもの
が最も
大きく
、
この
直径
の残りが最も
小さく
、
他の
線分
のうち
中心
を通る
線分
に
近い
ものが
遠い
ものよりも常に
大きく
、
そして
その
点
から
円周
へ
ただ二つの
等しい
線分
が
最も
小さい
線分
の両側にひかれるであろう。
これが証明すべきことであった。
命題3ー7の補足2(円に直径を引く)
前提
作図
推論
定義
公準
1-1
,
1-1補
,
1-2
公理
命題
補3(義1-14)
,
3-1
その他
命題3ー7
は 推論用命題である。
前提
作図
推論
定義
1-4補3
,
1-15
公準
1-1
,
1-1補
,
1-2
公理
1-1
,
1-2
,
1-4補2
,
1-8
,
1-8補
,
1-8補2
命題
1-23
,
3-1
,
3-2補
1-4
,
1-20
,
1-24
その他
背理法,
コ2(題1-7)
、場合分け
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