ユークリッド原論をどう読むか(5)
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(5)はじめに
今回は、第2巻である。
第1巻とは趣が変わる。
新たな定義は2つしかない。
1つは、2線分でかこまれる矩形(長方形)で、
もう1つはグノーモーンである。
ある意味、これは、第2巻を象徴している。
この巻で扱う内容は、
線分を2分割したり、
追加したりしたものを
隣り合う2辺とする矩形(長方形)や
一辺とする正方形の
面積における関係である。
グノーモーンは、
この巻の命題に即して端的にいえば、
正方形を
2つの正方形と2つの合同な長方形に分割したとき、
1つの正方形を除いた部分である。
矩形をグノーモーンに等積変形することが登場する。
線分を用いた代数という印象を受ける。
本質的には、
分配則、
2項の和・差の平方、
和と差との積、
和の平方と差の平方との和・差
などの面積図による証明である。
しかし、
目標は代数ではない。
あくまで、最後の方にある
一般の三角形における
3辺上の正方形の関係
(いわゆる余弦定理)の証明
や
長方形に等しい面積をもつ正方形の作図
などにある。
論証のスタイルも、
命題2ー8までは第1巻とは異なる。
証明済みの命題を用いて論証するというより、
それぞれ初めから
面積図の作図をおこなって
証明している。
なお、
本論考では
対応する文字式表現の推論を付加している。
そこでは、
公理1ー1、1ー2を
読み比べたら分かるように
原論が
「同じ」と「等しい」を
区別しているのに対応して、
公理を補足するとともに、
式表現を工夫している。
付加した論証を進めてみると、
文字式表現の威力を痛感する。
式表現技術という点では
明かにユークリッドの時代より進んでいる。
また、
証明済みの命題を用いた論証も付加している。
こちらについても、
対応する文字式表現の推論を付加している。
命題2ー9、2ー10は
独特の位置をもつ。
線分上の正方形の面積を扱うという点では、
命題2ー8までと同じだが、
証明は、
面積図に拠らない。
第1巻の論証の雰囲気に一気にもどる。
なお、
これらについても、
本論考では
証明済みの命題を用いた論証を付加している。
命題2ー11、2ー14は、
今日的に言えば、本質的には、
代数方程式の解を求めるものであり、
面積図の作図で解決するものではない。
そこでは、
命題2ー5、2ー6と
円、三平方の定理の活躍場面となる。
命題2ー11は、
正5角形の作図に関係する。
また、
いわゆる余弦定理である命題2ー12、2ー13の証明も
面積図の作図では無理がある。
そこでは、
命題2ー4、2ー7と三平方の定理の活躍場面となる。
以上、第2巻の俯瞰を参考にされると、
読み進めて行きやすいと思われる。
なお、
本文を読むに当たって、
次のことに留意いただきたい。
第2巻にあたり、繰り返しておく。
-
・印が付いている部分が解説である。
-
以下の命題において、
原典はギリシャ文字であるが、
通常のアルファベット(A,B,C)を用いる。
-
定義された用語、定義、公準、公理は
太文字で、
筆者が原論の本文を踏まえて、
補足して定義した
用語、定義の補足、公準の補足、公理の補足は
太斜体で、
記述している。
それぞれ定義・補足しているところでは
赤字で示している。
-
図は、
大阪府教育センターの教材コンテンツ「EG」を
用いて描いた。
-
特に、印をつけていない部分が、
ユークリッド原論の日本語訳で、
共立出版の中村幸四郎他訳
1996年6月25日付縮刷版第1刷による。
-
< >は
筆者による大まかな分類である。
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