ユークリッド原論をどう読むか(5)
頁末
前
次
目次
ユークリッド原論
第2巻
命題2ー14
(作図.直線図形に等しい正方形)
与えられた
直線図形
に
等しい
正方形
を作ること。
直線図形は、
定義1ー19
による。
等しいは、
公理1ー7
による。
正方形は、
定義1ー22
による。
与えられた
直線図形
をA
とせよ。
このとき
直線図形
Aに
等しい
正方形
を作らねばならぬ。
直線図形
Aに
等しい
直角
平行四辺形
BDが
つくられた
とせよ。
【・・・(a)】
命題1ー45
(作図.直線図形,直線角と平行四辺形)
による。
そうすれば
もし
BEが
EDに
等しけ
れ
ば、
命じられたことはなされたことになるであろう。
この節と次節の「もし」
は、
場合分けである。
もし
等しく
なけれ
ば、
BE、EDの一方が
大きい
。
公理1ー7の補足
(線分・角は大か等か小)
による。
BE>ED
または、
BE<ED
となっている。
BEが
大きい
とし、
EDが大きくても同様の論証ができる。
BE>ED
となっている。
BEが
Fまで延長され、
公準1ー2
(作図.直線の延長)
による。
F;点(BEの延長上)
となっている。
EFが
EDに
等しく
され、
【・・・(b)】
BEを十分延長しておいて、
命題1ー3の補足
(作図.等しい線分となる点)
により、
EからEDに等しくなるように
延長上に点Fをとる。
F;点(BEの延長上、EF=ED)
となり、
BE>EF
となっている。
BFが
Gで2
等分
され、
【・・・(c)】
命題1ー10
(作図・線分の2等分)
による。
G;中点(BF)
となっている。
Gを
中心
とし、
GB、GFの一つを
半径
として
半円
BHFが描かれ、
【・・・(d)】
公準1ー3
(作図.円)
による。
半円BHF;半円(中心G、直径BF、Dと反対側)
となっている。
DEが
Hまで延長され、
公準1ー2
(作図.直線の延長)
により
DEがEの方向に延長され、
半円の内部の点を通る。
命題の補足3(定義1ー14)
(図形と直線の交点)
により
半円の円周と交わり、
交点をH
とする。
原論は溯ってHを使用している。
H;交点(DEの延長、半円の弧BF)
となっている。
GHが
結ばれた
とせよ。
公準1ー1
(作図.直線)
による。
そうすれば
線分
BF
は
Gにおいて
等しい
部分に、
Eにおいて
不等
な部分に
分けられた
(b)
、
(c)
による。
G;中点(BF)、
E;点(BF、BE≠EF)
となっている。
から、
BE、EFに
かこまれた
矩形
と
EG上の
正方形
と
の和
は
GF上の
正方形
に
等しい
。
【・・・(1)】
前節、
命題2ー5
(線分の矩形分割)
による。
rec(BE、EF)+sq(_EG)
=sq(_GF)
となっている。
そして
GFは
GHに
等しい
。
(d)
による。
GF=GH
となっている。
それゆえ
矩形
BE、EFとGE上の
正方形
と
の和は
GH上の
正方形
に
等しい
。
0
前節、
(1)
、
公理1ー1
(同じものに等しい)
による。
rec(BE、EF)+sq(_GE)
=sq(_GH)
となっている。
ところが
HE、EG上の
正方形
の和は
GH上の
正方形
に
等しい
。
(a)
、
命題1ー47
(三平方の定理)
による。
sq(_HE)+sq(_EG)
=sq(_GH)
となっている。
ゆえに
矩形
BE、EFとGE上の
正方形
との和
は
HE、EG上の
正方形
の和に
等しい
。
前節、前々節、
公理1ー1の補足
(等しいものに等しい)
による。
rec(BE、EF)+sq(_GE)
=sq(_HE)+sq(_EG)
となっている。
双方から
GE上の
正方形
が
ひかれた
とせよ。
そうすれば
残りのBE、EFに
かこまれた
矩形
は
EH上の
正方形
に
等しい
。
前節、
公理1ー3
(等しいものから等しいものをひく)
による。
rec(BE、EF)=sq(_EH)
となっている。
ところが
EF
は
EDに
等しい
から、
矩形
BE、EF
は
BDである。
定義2ー1
(任意個分割との矩形)
による。
rec(BE、EF)=rec(BD)
となっている。
それゆえ
平行四辺形
BDは
HE上の
正方形
に
等しい
。
前節、前々節、
公理1ー1
(同じものに等しい)
による。
そして
BD
は
直線図形
Aに
等しい
。
(a)
による。
rec(BD)=直線図形A
となっている。
ゆえに
直線図形
Aも
EH上に描かれた
正方形
に
等しい
。
前節、前々節、
公理1ー1
(同じものに等しい)
による。
よって
与えられた
直線図形
Aに
等しい
正方形
、
すなわち
EH上に描かれ得る
正方形
が
つくられた。
正方形の作図は
命題1ー46
(作図.線分上に正方形)
による。
これが作図すべきものであった。
本命題が、
原論第2巻のキーとなる
命題である。
これにより、
与えられた直線図形の面積
に等しい正方形
の1辺が
求められる。
原理的には、
比例中項が
求められる
ことになるが、
比例論が展開される前に、
命題2ー5
(線分の矩形分割),
命題1ー47
(三平方の定理)
により,
求められている
ことに注目すべきである.
なお、
原論第2巻の内容について、
以下の内容を扱っている
バビロニア数学との関連が
指摘されている、
(1) ax^2=bx,
(2) ax^2=c,
(3) bx =c,
(4) ax^2+bx=c
(5) ax^2+c =bx
(6) bx+c=ax^2
本命題が、
(2)と関係するのは明らかである。
命題2ー5
(線分の矩形分割)は、
本質的に
矩形(X、BーX)=C
となるXを求めることに関連し、
(5)と関連する。
即ち、
命題2ー5
(線分の矩形分割)
により、
矩形(X、BーX)+正方(_B/2−X)=正方(_B/2)
となるので、
正方(_B/2−X)=正方(_B/2)ーC
となる。
ここで、
(B/2)上に正方形を作図し、
面積Cを
(B/2)上の矩形として作図すると、
正方(_B/2)ーCが
(B/2)上の矩形として表され、
この矩形と等しい正方形の辺Dが
命題2ー14
(作図.直線図形に等しい正方形)
により求まり、
B/2ーDとしてXを求める
ことができる。
命題2ー6
(線分の矩形外分割)は、
本質的に
矩形(X、B+X)=C
となるXを求めることに関連し、
(4)と関連する。
即ち、
命題2ー6
(線分の矩形外分割)
により、
矩形(X、B+X)+正方(_B/2)=正方(_B/2+X)
となるので、
正方(_B/2+X)=正方(_B/2)+C
となる。
ここで、
(B/2)上に正方形を作図し、
面積Cを
(B/2)上の矩形として作図すると、
正方(_B/2)+Cが
(B/2)上の矩形として表され、
この矩形と等しい正方形の辺Dが
命題2ー14
(作図.直線図形に等しい正方形)
により求まり、
DーB/2としてXを求める ことができる。
なお、
(6)は、
矩形(X、XーB)=C
となるXを求める
ことであるが、
XーBをYとすると、
矩形(Y、Y+B)=C
となって、
本質的には(4)となる。
また、
命題2ー11
(作図.線分の混合分割)は、
矩形(X、X+B)=正方(_B)
となるXを求める
ことであり、
これも(4)において、
C=正方(_B)とした場合となる。
命題2ー5
(線分の矩形分割)、
命題2ー6
(線分の矩形外分割)
の何れによるとしても、
上述のXを求めるためには
命題2ー14
(作図.直線図形に等しい正方形)
を欠くことができない。
以上が、
バビロニア数学と関連させた意味である。
直線図形A
に対して、
rec(BE、ED)
をとり、
BE>ED
とすると、
F;点(BEの延長上、EF=ED)
G;中点(BF)
半円BHF;半円(中心G、直径BF、Dと反対側)
H;交点(DEの延長、半円の弧BF)
をとれば、
sq(_EH)=直線図形A
のことである。
命題2-14
は作図用命題である。
前提
作図
推論
定義
公準
1-1
,
1-2
,
1-3
公理
1-1
,
1-3
,
1-7補
命題
補3(義1-14)
,
1-3補
,
1-10
,
1-45
,
1-46
1-47
,
2-1
,
2-5
その他
前
次
目次
頁頭