ユークリッド原論をどう読むか(7)
頁末
前
次
目次
ユークリッド原論
第3巻
命題3ー33
(作図.与えられた角を含む切片)
与えられた
線分
上に
与えられた
直線角
に
等しい
角
を
含む
切片
を描くこと。
線分は、
定義の補足(命題1ー1)
による。
直線角は、
定義1ー9
による。
等しいは、
公理1ー7
による。
角は、
定義1ー8
による。
含むは、
定義3ー11の補足
による。
切片は、
定義3ー6
による。
定義3ー7
、
定義3ー8
で
切片の角と切片内の角を
区別している。
定義3−11
においても、
含むという表現は
切片内の角に関して
使っている。
この命題にいう角は、
切片内の角である。
与えられた
線分
をAB、
与えられた
直線角
をCとせよ。
線分AB、
直線角C
をとっている。
このとき
与えられた
線分
上に
角
Cに
等しい
角
を《含む》[内の
角
とする]
円
の
切片
を描かねばならぬ。
角
Cは
鋭角
か
直角
か
または
鈍角
である。
場合分けをしている。
まず
鋭角
であるとし、
第1の場合である。
第1図のように
線分
AB上に
点
Aにおいて
角
Cに
等しい
角
BADがつくられたとせよ。
【・・・(a)】
命題1ー23
(作図・直線上に指定された角)
による。
∠BAD[A,AB,∠C]
をとっている。
そうすれば
BADも
鋭角
である。
公理1ー8の補足2
(等より大・小、大・小に等) という)
による。
∠BAD;鋭角
となっている。
DAに
直角
にAEがひかれ、
命題1ー11
(作図・線分からの垂線)
による。
垂線AE'(A,AD)
をとっている。
ABが
Fにおいて2
等分
され
命題1ー10
(作図・線分の2等分)
による。
中点F(AB)
をとっている。
点
Fから
ABに
直角
に
FGがひかれ、
【・・・(b)】
命題1ー11
(作図・線分からの垂線)
による。
(a)
により
角AFGは
直角であり、
角FAGは
鋭角であるから、
公理1ー4
(不等なものに等しいものを加える)
により、
AFGとFAGの和は
2直角より小さい。
公準1ー5
(平行線公準)
により、
FGとAEは交点をもち、
それを改めてGとし、
溯って用いている。
垂線FG'(F,AB)
交点G(FG',AE')
をとっている。
GBが結ばれたとせよ。
公準1ー1
(作図.直線)
による。
線分GB
をとっている。
そうすれば
AFは
FBに
等しく
(b)
による。
AF=FB
となっている。
FGは
共通であるから、
2
辺
AF、FGは
2
辺
BF、FGに
等しい
。
そして
角
AFGは
角
BFGに
等しい
。
(b)
により、直角である。
(AF、FG)=(BF、FG)、
∠AFG=∠BFG
となっている。
それゆえ
底辺
AGは
底辺
BGに
等しい
。
命題1ー4
(2辺挟角相等)
による。
AG=BG
となっている。
ゆえに
Gを
中心
とし、
GAを
半径
として
円
が描かれれば、
公準1ー3
(作図.円)
による。
Bをも通るであろう。
定義1ー15
(円)
による。
中心Gを通る直線は、
命題3−1の補足2
(中心を通る直線は円周と2交点)
により、
A以外に
もう1点交点をもつ。
その点を
改めてEとし
溯って用いている。
[
円
が] 描かれたとし、
それをABEとし、
EBが結ばれたとせよ。
公準1ー1
(作図.直線)
による。
交点E(AE',円周(G,AG))
B;上.円周(G,AG)
となっている。
そうすれば
ADは
直径
AEの端Aから
AEに
直角
であるから、
(b)
による。
AD⊥直径AE.円ABE
となっている。
ADは
円
ABEに
接する
。
命題3−16の系
(系.接線は直径と直角)
による。
AD(接)円ABE
となっている。
そこで
直線
ADは
円
ABEに
接し
、
接点
Aから
円
ABEに
弦
ABがひかれたから、
角
DABは
円
の
反対側の
切片
内の
角
AEBに
等しい
。
命題3ー32
(いわゆる接弦定理)
による。
∠DAB=∠AEB
となっている。
ところが
角
DABは
角
Cに
等しい
。
(a)
による。
∠DAB=∠C
となっている。
したがって
角
Cは
角
AEBに
等しい
。
公理1ー1
(同じものに等しい)
による。
∠C=∠AEB
となっている。
よって
与えられた
線分
AB上に
与えられた
角
Cに
等しい
角
AEBを《含む》[内の
角
とする]
円
の
切片
AEBが描かれた。
切片AEB;切片(弦AB,弧AEB)
内角AEB.切片AEB=∠C
となっている。
次に
角
Cが
直角
であるとせよ。
第2の場合である。
ふたたび
AB上に
Cにおける
直角
に
等しい
角
を《含む》[内の
角
とする]
円
の
切片
を描かねばならないとせよ。
第2図のように
Cにおける
直角
に
等しい
角
BADがつくられたとし、
【・・・(c)】
命題1ー11
(作図・線分からの垂線)
による。
∠BAD[A,AB,∠C=∠R]
をとっている。
ABが
Fにおいて2
等分
され、
命題1ー10
(作図・線分の2等分)
による。
中点F(AB)
をとっている。
Fを
中心
とし、
FA、FBのどちらかを
半径
として
円
AEBが描かれたとせよ。
公準1ー3
(作図.円)
による。
円AEB(F,FA)
をとっている。
そうすれば
直線
ADは
角
Aが
直角
であるから、
円
ABEに
接する
。
(c)
,
命題3−16の系
(系.接線は直径と直角)
による。
AD(接)円ABE
となっている。
そして
角
BADは
切片
AEB内の
角
に
等しい
。
なぜなら
半円
内の
角
であるため
それも
直角
であるから。
命題3ー31
(半円内の角は直角、半円より大小の切片内の角、切片の角)
による。
∠BAD=内角.切片AEB
となっている。
「なぜなら・・・であるから」については、
コメント2(命題1ー16)
を参照のこと。
ところがまた
角
BADは
角
Cに
等しい
。
(c)
による。
∠BAD=∠C
となっている。
ゆえに
AEB内の
角
も
角
Cに
等しい
。
公理1ー1
(同じものに等しい)
による。
内角.切片AEB=∠C
となっている。
よってまた
AB上に
角
Cに
等しい
角
を《含む》[内の
角
とする]
円
の
切片
AEBが描かれた。
次に
角
Cが
鈍角
であるとせよ。
第3の場合である。
∠C;鈍角
となっている。
そして
それに
等しい
角
BADが
線分
AB上に
点
Aにおいて
第3図のようにつくられたとし、
【・・・(d)】
命題1ー23
(作図・直線上に指定された角)
による。
∠BAD[A,AB,∠C]
をとっている。
ADに
直角
にAEがひかれ、
命題1ー11
(作図・線分からの垂線)
による。
垂線AE'(A,AD)
をとっている。
ABがまた
Fにおいて2
等分
され、
命題1ー10
(作図・線分の2等分)
による。
中点F(AB)
をとっている。
ABに
直角
に
FGがひかれ、
【・・・(e)】
命題1ー11
(作図・線分からの垂線)
による。
角AFGは
直角であり、
角BAEは
鋭角であるから、
公理1ー4
(不等なものに等しいものを加える)
により、
角AFGとBAEの和は
2直角より小さい。
公準1ー5
(平行線公準)
により
FGとAEは
交点をもつ。
その点を改めてGとし、
溯って用いている。
垂線FG'(F,AB)
交点G(FG',AE') をとっている。
GBが結ばれたとせよ。
公準1ー1
(作図.直線)
による。
線分GB
をとっている。
そうすればまた
AFは
FBに
等しく
、
(e)
による。
AF=FB
となっている。
FGは共通であるから、
2
辺
AF、FGは
2
辺
BF、FGに
等しい
。
そして
角
AFGは
角
BFGに
等しい
。
(e)
による。
(AF、FG)=(BF、FG)、
∠AFG=∠BFG
となっている。
それゆえ
底辺
AGは
底辺
BGに
等しい
。
命題1ー4
(2辺挟角相等)
による。
AG=BG
となっている。
ゆえに
Gを
中心
とし、
GAを
半径
として
円
が描かれれば、
公準1ー3
(作図.円)
による。
Bをも通るであろう。
定義1ー15
(円)
による。
B;上.円周(G,GA)
となっている。
AEBのように通るとせよ。
直線AEは
中心を通るから、
命題3−1の補足2
(中心を通る直線は円周と2交点)
により
円周と
A以外のもう1点で交わる。
その点を改めてEとし、
溯ってEを用いている。
交点E(AE',円周(G,GA))
をとっている。
そして
ADは
直径
AEに
その端から
直角
であるから、
(e)
による。
AD⊥AE
となっている。
ADは
円
AEBに
接する
。
命題3−16の系
(系.接線は直径と直角)
による。
AD(接)円AEB
となっている。
そして
ABは
接点
Aからひかれた。
(d)
による。
それゆえ
角
BADは
円
の
反対側の
切片
AHB内につくられた
角
に
等しい
。
命題3ー32
(いわゆる接弦定理)
による。
∠BAD=内角.切片AHB(AB,円ABE;;反対側(AB,D))
となっている。
ところが
角
BADは
角
Cに
等しい
。
(d)
による。
∠BAD=∠C
となっている。
したがって
切片
AHB内の
角
は
角
Cに
等しい
。
公理1ー1
(同じものに等しい)
による。
内角.切片AHB=∠C
となっている。
したがって、
3つの場合の結果により
線分AB上に
角Cに等しい角を《含む》[内の角とする]
円の切片が描かれた。
よって
与えられた
線分
AB上に
与えられた
角
Cに
等しい
角
を《含む》[内の
角
とする]
切片
AHBが描かれた。
これが作図すべきものであった。
命題3ー33
は、
線分AB、∠C
に対して、
∠ABD[A,AB,∠C]、
中点F(AB)、
交点G(垂線(F,AB),垂線(A,AD))、
交点E(延長AG,円周(G,GA))
をとると、
内角.切片(AB,円ABE,反対側(AB,D))=∠C
のことである。
命題3ー33
は作図用命題である。
前提
作図
推論
定義
1-15
公準
1-1
,
1-3
,
1-5
公理
1-1
,
1-4
,
1-8補2
命題
1-10
,
1-11
,
1-23
,
3-1補2
1-4
,
3-16系
,
3-31
,
3-32
その他
場合分け,
コ2(題1-16)f
前
次
目次
頁頭