ユークリッド原論をどう読むか(9506)
頁末
前
次
目次
ユークリッド原論
第5巻
命題5ー6(同数倍の差2)
(倍量の差は倍量)
もし
2つの量が
2つの量の同数倍であり、
前者から引き去られる2量が
後者の同数倍であるならば、
残りの2量は
同じ後者に等しいか
または
それらの同数倍である。
- 量は、定義5ー1の補足
による。
- 同数倍は、定義5ー5の補足
による。
- 等しいは、公理1ー7
による。
- この命題では
同数倍と等しいを区別している。
すなわち、
原論では
等しいを1倍と同一視していない。
つまり、
1(単位)を数とは見ていない。
命題5ー2
では、
加えているので
基準となる量に
等しくなる場合はないので、
区別していない。
2つの量AB、CDが
2つの量E、Fの同数倍であるとし、
引き去られる量AG、CHが
同じE、Fの同数倍とせよ。
残りのGB、HDは
E、Fに等しいか
または
それらの同数倍であると主張する。
[GBについて、
Eに等しい場合、
Eの何倍かに等しい場合
がある。]
まず、
GBがEに等しいとせよ。
【・・・(a)】
- GBがEに等しい場合を
証明しようとしている。
-
GB=E
となっている。
HDも
Fに等しいと主張する。
CKをFに等しくせよ。
【・・・(b)】
AGはEの、
CHはFの同数倍であり、
- 命題の設定による。
-
AG=nE、
CH=nF
となっている。
GBはEに、
KCはFに等しいから、
- (a)(b)
による。
-
GB=E、
KC=F
となっている。
ABはEの、
KHはFの同数倍である。【・・・(1)】
- 命題5ー2(同数倍の和2)
による。
-
個数(AB,E)=個数(KH,F)=n+1
となっている。
ところが
ABはEの、
CDはFの同数倍である
ことが仮定されている。
- 命題の設定による。
-
AB=mE、
CD=mF
となっている。
それゆえ
KHはFの、
CDはFの同数倍である。
そこで
KH、CDの双方は
Fの同数倍であるから、
KHはCDに等しい。
双方から
CHがひかれたとせよ。
そうすれば
残りのKCは
残りのHDに等しい。
- 公理1ー3(等しいものから等しいものをひく)
による。
-
KC=HD
となっている。
しかも
FはKCに等しい。
したがって
HDはFに等しい。
- 公理1ー1(同じものに等しい)
による。
-
HD=F
となっている。
ゆえにもし
GBがEに等しければ、
HDもFに等しいであろう。
- (a)
による。
-
GB=E
ならば、
HD=F
となっている。
[ GBがEの何倍かの場合、]
同様にしてもし
GBがEの何倍かであれば、
HDもFの《同じ倍数》[同数倍]である
ことを証明しうる。
- 推論の設定として、
CKをFの、
GBがEの何倍かと
同数倍にすればよい。
-
GB=pE
ならば、
点K(延長DC;;個数(CK,F)=個数(GB,E))
をとると、
GB=pE、
KC=pF、
AB=mE=(n+p)E、
KH=(n+p)F、
CD=mF
となり、
KH=CD=mF=(n+p)F
となるので、
CH=nF
をひくと、
KC=HD=pF
となっている。
[ 以上の2つの場合から、]
よってもし
2つの量が
2つの量の同数倍であり、
前者から引き去られる2量が
後者の同数倍であるならば、
残りの2量は
同じ後者に等しいか
または
それらの同数倍である。
[これが証明すべきことであった。]
-
したがって、
本命題と、
定義5ー2
(倍量)
により、
小さい量(基準とする大きさ)が何であろうと、
それについて
任意の倍量と別の任意の倍量との差は、
個数の差となる量で、
倍量であるか等しい。
(以下、命題5ー6の補足(倍量の差は倍量)という。)
-
命題5ー6の補足は、
mCーnC=(mーn)Cのことである。
- 命題5ー6は、
個数(mCーnC,C)=個数(mFーnF,F)
のことである。
-
命題5ー6の補足(倍量の差は倍量)
前提 | 作図 | 推論 |
定義 |
|
5-2
|
公準 |
|
|
公理 |
|
|
命題 |
|
5-6
|
その他 |
|
|
- 命題5ー6は推論用命題である。
前
次
目次
頁頭