ユークリッド原論をどう読むか(13)
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ユークリッド原論
第9巻
命題9ー19
(
構成.
3数から第4比例項)
三つの
数
が与えられた
とき、
いつそれらに対し
第4の
比例
項を見いだすことができるか
を吟味すること。
数は、
定義7ー2
による。
比例は、
定義7ー21
による。
与えられた3
数
をA、B、C
とし、
いつそれらに対し
第4の
比例
項を見いだすことができるか
を吟味せねばならぬ。
「
数
(について)・・・とせよ」は、
コメント4(命題7ー1)
参照のこと。
さて
それら[A、B、C]は
順次に比例
せず、
外項
が
互いに素
である
か、または
順次に比例
し、
外項
が
互いに素
でない
か、または
順次に比例
せず、
外項
が
互いに素
でない
か、または
順次に比例
し、
外項
が
互いに素
である
か
である。
後の記述は、
次の順である。
順次に比例
し、
外項
が
互いに素
である
か、または
順次に比例
せず、
外項
が
互いに素
である
か、または
順次に比例
し、
外項
が
互いに素
でない
か、または
順次に比例
せず、
外項
が
互いに素
でない
か
場合分けをしようとしている。
本命題の証明には、
上記の場合分けは的を外している。
本質的には、
場合分け2の条件を付けずに
場合分け2の中の証明だけで
すなわち、
(X)
以降
(Y)
までで、
完了している。
その証明には、
場合分け2の条件は効いていない。
そこでもし
A、B、Cが
順次に比例
し、
外項
A、Cが
互いに素
である
ならば、
場合分け4である。
A、B、C(順次に比例)、
A⊥C
となっている。
それらに対し
第4の
比例
項≪
数
≫を見いだすことは
不可能である
ことは先に証明された。
命題9ー17
(順次比例で外項が互に素と末項)
による。
次に
A、B、Cが
順次に比例
せず、
外項
がふたたび
互いに素
である
とせよ。
場合分け1である。
A、B、C(順次に比例せず)
A⊥C
となっている。
この場合にも
それらに対し
第4の
比例
項を見いだすことはできない
と主張する。
実は、
A=2、B=4、C=5
とすると、
場合分け1に該当するが、
D=10
とすると
第4の比例項となる。
推論のギャップは、
該当箇所でコメントしている。
もし可能ならば、
背理法の仮定を述べようとしている。
Dが見いだされ、
背理法の仮定である。
数Dがあって、
A:B=C:D
としている。
AがBに
対するように
、
CがDに
対する
とし、
BがCが
対するように
、
DがEに
対する
とせよ。
A:B=C:D
B:C=D:E
となっている。
B:C=D:E
となる数Eが存在することも
背理法の仮定による
ことになる。
しかし、
B、Dが互いに素である前提は
確保できない。
したがって、
この場合については
推論は成立していない。
そうすれば
AがBに
対するように
、
CがDに
対し
、
BがCに
対するように
、
DがEに
対する
から、
等間隔比
により
AがCに
対するように
、
CがEに
対する
。
前節、
定義5ー17
(等間隔比)
による。
A:C=C:E
となっている。
ところが
A、Cは
[互いに]素
であり、
場合分け1
による。
[互いに]素
である
数
は
最小
であり、
前節、
命題7ー21
(互いに素な数は同じ比の最小)
による。
最小
である
数
は
同じ比
をもつ
数
を
割り切り
、
前項
が
前項
を、
後項
が
後項
を
割り切り
、
その
商
は
等しい
。
前節、
命題7ー20
(同じ比なら最小のが割り切る)
による。
A|C、C|E
となっている。
それゆえ
前項
が
前項
を、
すなわち
AがCを
割り切る
。
しかも
Aは自分白身をも
割り切る
。
命題7−2の補足2
(数は自分自身を割り切る)
による。
したがって
Aは
互いに素
であるA、Cを
割り切る
。
これは不可能である。
定義7ー13
(互いに素) による
よって
A、B、Cに対し
第4の
比例
項を見いだすことはできない。
背理法による
次にまた
A、B、Cが
順次に比例
し、
A、Cが
互いに素
でない
とせよ。
場合分け2である。
A、B、C(順次に比例)
Anot⊥C
となっている。
それらに対し
第4の
比例
項を見いだすことができる
と主張する。
[......(X)]
(x)以降
(Y)
までで
命題の証明は完了している。
場合分け2の条件
は、
証明には影響を与えていない。
BはCに
かけ
てDをつくる
とせよ。
[......(a)]
B×C=D
となっている。
そうすれば
Aは
Dを
割り切る
か
または
割り切ら
ないか
である。
まず
割り切る
とし、
場合分け2ー1である。
A|D
となっている
その
商
をE
とせよ。
D/A=E
となっている。
そうすれば
AはEに
かけ
てDをつくった。
前節、
命題の補足4(定義7ー16)
(商を割る数にかけると割られる数)
による。
A×E=D
となっている。
ところが
BもCに
かけ
てDをつくった。
(a)
による。
B×C=D
となっている。
したがって
A、Eの
積
はB、Cの
積
に
等しい
。
前節、前々節、
公理1ー1
(同じものに等しい)
による。
それゆえ
比例
し、
AがBに
対するように
、
CがEに
対する
。
前節、
命題7ー19
(4数の比例と内項・外項の積)
による。
A:B=C:E
となっている。
したがって
A、B、Cに対し
第4の
比例
項Eが見いだされた。
E=B×C/A
となっている。
次に
AがDを
割り切ら
ない
とせよ。
場合分け2ー2である。
Anot|D
となっている。
A、 B、Cに対し
第4の
比例
項≪
数
≫を見いだすことはできない
と主張する。
もし可能ならば
「もし可能ならば」は、
コメント2(命題1−7)
参照のこと。
Eが見いだされた
とせよ。
A:B=C:E
としている。
そうすれば
A、Eの
積
はB、Cの
積
に
等しい
。
前節、
命題7ー19
(4数の比例と内項・外項の積)
による。
ところが
B、Cの
積
はDである。
(a)
による。
ゆえに
A、Eの
積
もDに
等しい
。
前節、前々節、
公理1ー1(同じものに等しい)
による。
A×E=D
となっている。
したがって
AはEに
かけ
てDをつくった。
それゆえ
AがDを
割っ
た
商
はEである。
前節、
定義7ー8の補足
(商)
による。
D/A=E
となっている。
ゆえに
AはDを
割り切る
。
前節、
定義5ー1の補足2
(割り切る)
による。
ところがまた
割り切ら
なくもある。
場合分け2ー2
による。
これは不合理である。
したがって
AがDを
割り切ら
ない
とき、
A、B、Cに対し
第4の
比例
項を見いだすことはできない。
背理法による。
場合分け2での2つの場合分けが終了
[......(Y)]
(x)
以降
(Y)までで
命題の証明は完了している。
場合分け2の条件
は、
証明には影響を与えていない。
次に
A、B、Cが順次に比例せず、
外項が互いに素でない
とせよ。
場合分け3である。
A、B、C(順次に比例せず)
Anot⊥C
となっている。
BがCに
かけ
てDをつくる
とせよ。
B×C=D
となっている。
同様にして
場合分け2
と同様にして
である。
もし
AがDを
割り切れ
ば、
それらに対し
第4の
比例
項を見いだすことができ、
もし
割り切ら
なけれ
ば、
できないことが証明されうる。
場合分けの4つの場合が終了
である。
これが証明すべきことであった。
数Eを
E=B×C/A
とできれば、
A:B=C:E
となる第4の比例項になる。
本命題の証明を振り返ると、
AがB×Cを割り切ることが
第4項の存在の必要十分条件となる
と分かる。
順次に比例するかどうか、
外項が互いに素かどうかは、
命題9−17を推論に活用するために
持ち込まれた
と考えられる。
以上を考慮すると、
本命題は、
後世の質の悪い注釈が
紛れ込んだものではないか
と判断される。
命題9ー19
は、
数A、B、C
に対して、
A|B×C
のときに限り、
E;B×C/A
をとると、
A:B=C:E
のことである。
命題9ー19
は構成用命題である。
前提
作図
推論
定義
5-1補2
,
(5-17)
,
7-8補
,
(7-13)
公準
公理
1-1
命題
補4(義7-16)
,
(7-2補2)
,
7-19
,
(7-20)
,
(7-21)
,
(9-17)
その他
コ4(題7-1)
コ2(題1-7)
,背理法,場合分け
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