ユークリッド原論をどう読むか(8)
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ユークリッド原論
第4巻
命題4ー4(作図.三角形の内接円)
「どれか1つ(の1つ)」
「されたとせよ」
与えられた三角形に
円を内接させること。
与えられた三角形を
ABCとせよ。
このとき
三角形ABCに
円を内接させねばならぬ。
角ABC、ACBが
線分BD、CDによって
2等分され、
点Dにおいて相会するとし、
【・・・(a)】
- 命題1ー9
(作図・角の2等分)
により、
角ABCの2等分線BDをひく。
BDは
命題1ー21の補足
(三角形の角の分割線は対辺と交わる)
により
辺ACと1点で交わる。
その交点をD’とする。
三角形D’CBにおいて、
命題1ー9
(作図・角の2等分)
により、
角D’CBの2等分線CD”をひく。
CD”は
命題1ー21の補足
(三角形の角の分割線は対辺と交わる)
により
辺BD’と1点で交わる。
その点を改めてDとし、
Dを溯って用いている。
-
交点D(二等分線(∠ABC),二等分線(∠ACB))
をとっている。
Dから
線分AB、BC、CAに
垂線DE、DF、DGがひかれたとせよ。
【・・・(b)】
- 命題1ー12
(作図・線分への垂線)
による。
-
垂足E(D,AB)、
垂足F(D,BC)、
垂足G(D,CA)
をとっている。
そうすれば
角ABDは
角CBDに等しく、
- (a)による。
-
∠ABD=∠CBD
となっている。
直角BEDは
直角BFDに等しいから、
- (b)による。
-
∠BED=∠BFD=∠R
となっている。
EBD、FBDは
2角が2角に等しく、
1辺が1辺にひとしい、
すなわち
等しい角の1つに対する
辺BDを共有する
2つの三角形である。
-
(∠ABD,∠BED)=(∠CBD,∠BFD)、
BD=BD
となっている。
それゆえ
残りの辺も
残りの辺に等しいであろう。
ゆえに
DEは
DFに等しい。
同じ理由で
DGもDFに等しい。
それゆえ
Dを中心とし、
DE、DF、DGの1つを半径として
円が描かれれば、
【・・・(c)】
- 公準1ー3
(作図.円)
による。
-
作図の実行に当たっては、
「どれか1つ」を
半径にして描くということである。
DE、DF、DGは相い等しいので、
どれを半径としても
結果は同じであるということである。
以下、コメント(命題4ー4)(どれか1つ(の1つ))という。
- コメント(命題2ー2)を参照のこと
-
円(D,DE)
をとっている。
残りの点をも通り、
- 定義1ー15
(円)
による。
-
E;上.円周(D,DE)、
F;上.円周(D,DE)、
G;上.円周(D,DE)
となっている。
そして
点E、F、Gにおける角が
直角であるから、
- (b)による。
-
∠AED=∠BFD=∠CGD∠=R
となっている。
線分AB、BC、CAに
接するであろう。
- 命題3−16の系
(系.接線は直径と直角)
による。
-
AB(接)円(D,DE)、
BC(接)円(D,DE)、
CA(接)円(D,DE)
となっている。
なぜなら、
もし交わるならば、
円の直径に
その端から直角にひかれた直線が
円の内部におちることになるであろう。
これは不合理であることが証明された。
ゆえに
Dを中心とし、
DE、DF、DGの1つを
半径として描かれた円は
線分AB、BC、CAと
交わらないであろう。
したがって
それらに接し、
三角形ABCに内接された円であろう。
それがFGEのように内接されたとせよ。
- (c)では、
実際に描いているのではなく、
描いたとしたら
という立場で表現している。
そのため、
ここで実際に描くことを
「されたとせよ」
と指示している。
以下、コメント2(命題4ー4)(されたとせよ)という。
- 初めて登場する表現である。
よって
与えられた三角形ABCに
円EFGが内接された。
これが作図すべきものであった。
- 命題4ー4は、
△ABC
に対して、
交点D(二等分線(∠ABC),二等分線(∠ACB))、
垂足E(D,AB)
をとると、
円(D,DE);(内接)△ABC
のことである。
- 命題4ー4は作図用命題である。
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