ユークリッド原論をどう読むか(8)
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ユークリッド原論
第4巻
命題4ー5(作図.三角形の外接円)
与えられた三角形に円を外接させること。
与えられた
三角形をABCとせよ。
与えられた
三角形に
円を外接させねばならぬ。
線分AB、ACが
点D、Eにおいて2等分され、
-
命題1ー10
(作図・線分の2等分)
による。
-
中点D(AB)、
中点E(AC)
をとっている。
点D、Eから
AB、ACに直角に
DF、EFがひかれ【▲たとせよ。
【・・・(a)】
-
命題1ー12
(作図・線分への垂線)
により
DF、EF’がひかれる。
命題1ー31の補足2
(交線の垂線)
により、
DF、EF’が1点で交わる。
その点を改めてFとし、
溯ってFを用いている。
-
交点F(垂線(D,AB),垂線(E,AC))
をとっている。
すると
それらは
三角形ABCの内部か
線分BC上か
または
BCの外部で
相会するであろう。
- 場合分けである。
FがBC上にある場合、
FとB、Cとを結ぶ必要がないので、
この場合分けをおこなっている。
FがBC上にあっても、
FとB、Cとを結んでも差し支えない
と考えれば、
この場合分けは不要となる。
【・・・(Ca)】
まず、
内部で
Fにおいて相会するとし▲】、
- 場合分けの第一である。
-
F;内.△ABC
となっている。
FB、FC、FAが
結ばれたとせよ。
-
公準1ー1
(作図.直線)
による。
-
線分FB、FC、FA
をとっている。
そうすれば、
ADは
DBに等しく、
DFは
共通でかつ直角をなすから、
- (a)
による。
-
DF=DF
∠ADF=∠BDF
となっている。
底辺AFは
底辺FBに等しい。
-
命題1ー4
(2辺挟角相等)
による。
-
AF=FB
となっている。
同様にして
CFがAFに等しいことも証明しうる。
それゆえ
FBもFCに等しい。
-
公理1ー1
(同じものに等しい)
による。
-
CF=AF、
FB=FC
となっている。
ゆえに
3線分FA、FB、FCは
互いに等しい。
したがって
Fを中心とし、
FA、FB、FCの1つを半径として
円が描かれれば、
【・・・(1)】
-
公準1ー3
(作図.円)
による。
- 「〜の1つ」については、
コメント(命題4ー4)を参照のこと
- 「描かれれば」と
仮定形で表現している。
命題4ー4
(作図.三角形の内接円)
と同じ表現である。
-
円(F,FA)
をとっている。
残りの点をも通り、
-
定義1ー15
(円)
による。
-
B;上.円周(F,FA)
C;上.円周(F,FA)
となっている。
そして
この円は
三角形ABCに外接されるであろう。
-
定義4ー6
(外接(円の))
による。
-
円ABC(F,FA);(外接)△ABC
となっている。
ABCのように外接されたとせよ。
- (1)
の表現に対応している。
命題4ー4
(作図.三角形の内接円)
と同じである。
【▲
次に
第2図のように
DF、EFが
線分BC上でFにおいて相会するとし、
- 場合分けの第2である。
- (Ca)
のコメントの後半にしたがえば、
「次に」以下は不要である。
- 「第2図のように」という表現は
初めてである。
これまでも
命題3ー33
(作図.与えられた角を含む切片)
のように、
図が2つあった命題は存在した。
しかし
それらの命題においても、
「第2図のように」という表現は
なかった。
また、
最初の図については
「第1図のように」という
対応した表現がない
ことにも留意しておく。
【・・・(Cb)】
-
F;上.BC
となっている。
AFが結ばれたとせよ。
-
公準1ー1
(作図.直線)
による。
-
線分AF
をとっている。
同様にして
点Fは
三角形ABCに
外接される円の中心である
ことを証明しうる。
- FA、FB、FCが相等しい
ことが全く同様に証明される。
-
円(F,FA);(外接)△ABC
となっている。
さらにまた
第3図のように
DF、EFが
三角形ABCの外部で
Fにおいて相会するとし、
- 場合分けの第3である。
-
F;外.△ABC
となっている。
AF、BF、CFが
結ばれたとせよ。
-
公準1ー1
(作図.直線)
による。
-
線分AF、BF、CF
をとっている。
そうすればまた
ADは
DBに等しく、
DFは
共通でかつ直角をなすから、
- (a)
による。
-
DF=DF、
DF⊥AB
となっている。
底辺AFは
底辺BFに等しい。
-
命題1ー4
(2辺挟角相等)
による。
-
AF=BF
となっている。
同様にして
CFがAFに等しい
ことも証明しうる。
それゆえ
BFもFCに等しい。
-
公理1ー1
(同じものに等しい)
による。
-
CF=AF、
BF=FC
となっている。
ゆえに
Fを中心とし、
FA、FB、FCの1つを半径として
円が描かれれば、
-
公準1ー3
(作図.円)
による。
-
円(F,FA)
をとっている。
残りの点をも通り、
三角形ABCに
外接されているであろう。▲】
-
定義1ー15
(円)
による。
- 第1の場合にある
「ABCのように
外接されたとせよ。」という
1文がないことに留意しておく。
【・・・(Cc)】
-
B、C;上.円周(F,FA)、
円(F,FA);(外接)△ABC
となっている。
よって
与えられた三角形に
円が外接された。
これが作図すべきものであった。
【▲そして
次のことは明らかである、
-
「そして」以降は、
命題の本文にない部分である
ことに留意しておく。
【・・・(Cd)】
すなわち
円の中心が
三角形の内部におちるときには、
角BACは
半円より大きい切片内にあるから、
直角より小さく、
- 角BACは、
切片BAC内の角である。
中心が
三角形BAC内、
したがって
切片BAC内
にあるから、
公理1ー8
(大きい)
により
切片BACは
半円より大きい。
-
命題3ー31
(半円内の角は直角、半円より大小の切片内の角、切片の角)
により、
切片内の角(円周角)は
直角より小さい。
-
F;内.△ABC
ならば、
切片BAC.円ABC;(含)半円.円ABC、
内角ABC.切片BAC<∠R
となっている。
中心が線分BC上におちるときには、
角BACは
半円内にあるから、
直角である。
-
命題3ー31
(半円内の角は直角、半円より大小の切片内の角、切片の角)
による。
-
F;辺BC.△ABC
ならば、
切片BAC.円ABC;半円.円ABC
内角ABC.切片BAC=∠R
となっている。
また
円の中心が
三角形の外部におちるときには、
角BACは
半円より小さい切片内にあるから、
直角より大きい。
- 角BACは、
切片BAC内の角である。
中心が
三角形BACの外、
したがって
切片BACの外
にあるから、
公理1ー8の補足
(小さい)
により
切片BACは
半円より小さい。
-
命題3ー31
(半円内の角は直角、半円より大小の切片内の角、切片の角)
により、
切片内の角(円周角)は
直角より大きい。
-
F;外.△ABC
ならば、
切片BAC.円ABC;(含まれる)半円.円ABC
内角ABC.切片BAC>∠R
となっている。▲】
-
原論における命題の証明の終わり方としては、
これまでのものとは
全く異なっている。
命題にない、
余分なものまで
(それも、
半円より大きいかどうか
という同じテーマで)
論じているという点で
本命題とよく似ている
命題3ー25
(作図.切片から円を描く)
と比べても、
終わり方は
異なっている。
また、
系をもっている
命題3ー1
(作図.円の中心)
と比べても、
異なる終わり方をしている。
【・・・(Ce)】
- (Ca),
(Cb),
(Cc),
(Cd),
(Ce)
により、
【▲ ▲】で囲った部分は、
後世の解説が紛れ込んだものと思われる。
- 命題4ー5は、
△ABC
に対して、
中点D(AB)、
中点E(AC)、
交点F(垂線(D,AB),垂線(E,AC))
をとれば、
円(F,FA);(外接)△ABC
のことである。
- 命題4ー5は作図用命題である。
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