ユークリッド原論をどう読むか(7)
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ユークリッド原論
第3巻
命題3ー25
(作図.切片から円を描く)
円
の
切片
が
与えられたとき、
その
切片
を
含む
完全な
円
を
描くこと。
円は、
定義1ー15
による。
切片は、
定義3ー6
による。
含むは、
定義3ー11の補足
による。
ABCを
円
の与えられた
切片
とせよ。
切片ABC
をとっている。
このとき
切片
ABCを含む
完全な
円
を
描かなければならぬ。
ACが
Dで2
等分
され、
命題1ー10
(作図・線分の2等分)
による。
中点D(AC)
をとっている。
点
Dから
ACに
直角
に
DBがひかれ、
【・・・(a)】
命題1ー11
作図・線分からの垂線)
による。
命題3ー2
(弦は円の内部)
により
Dは円の内部の点であり、
命題3−2の補足
(円内通過直線は円周と2交点)
により、
この直線は
弧ACと1点で交わる。
その点をBとし、
Bを溯って用いている。
交点B(弧AC,垂線(D,AC))
をとっている。
ABが
結ばれたとせよ。
公準1ー1
(作図.直線)
による。
線分AB
をとっている。
そうすれば
角
ABDは
角
BADより
大きい
か
等しい
か
小さい
か
である。
公理1ー7の補足
(線分・角は大か等か小)
による。
次の作図のための
場合分けであるが、
結果的には
この場合分けは必要がない。
後世の、
原論解説者の説明が
本文として紛れ込んだ
のではないかと思われる。
まず
大きい
とし、
場合分けの第1である。
∠ABD>∠BAD
となっている。
線分
AB上に
その上の
点
Aにおいて
角
ABDに
等しく
角
BAEがつくられたとし、
【・・・(b)】
命題1ー23
(作図・直線上に指定された角)
による。
∠BAE(半直線AB,∠ABD,同側(AB,D))
をとっている。
DBが
Eまで延長され、
まず、 直線AEが
BDと交わるかどうかが
問題となる。
(a)
により
角ADB(の接角)が
直角であるから、
命題1ー16
(外角と内対角)
により
角ABDは
ADB(の接角)より小さい。
公理1ー8の補足2
(等より大・小、大・小に等)
により
ABDは
直角より小さい。
公理1ー4の補足3
(大きい(小さい)ものどうしを加える) 、
定義の補足(公理1ー5)
(同じもののn倍)
によって、
角ABDとBAEの和は
2直角より小さい。
公準1ー5
(平行線公準)
により、
BDとAEは
交わる。
その交点をEとして、
溯って用いている。
線分BDの延長は、
公準1ー2
(作図.直線の延長)
による。
交点E(BD,AE)
をとっている。
ECが
結ばれたとせよ。
公準1ー1
(作図.直線)
による。
線分EC
をとっている。
そうすれば
角
ABEは
角
BAEに
等しい
から、
(b)
による。
線分
EBも
EAに
等しい
。
【・・・(1)】
命題1ー6
(等しい底角なら二等辺三角形)
による。
∠ABE=∠BAE
となっている。
そして
ADは
DCに
等しく
、
(a)
による。
AD=DC
となっている。
EDは
共通であるから
2
辺
AD、DEは
2
辺
CD、DEにそれぞれ
等しい
。
(AD、DE)=(CD、DE)
となっている。
そして
角
ADEは
角
CDEに
等しい
。
なぜなら
双方とも
直角
であるから。
(a)
による。
「なぜなら・・・であるから」については、
コメント2(命題1ー16)
を参照のこと。
∠ADE=∠CDE=∠R
となっている。
それゆえ
底辺
AEは
底辺
CEに
等しい
。
命題1ー4
(2辺挟角相等)
による。
AE=CE
となっている。
ところが
AEが
BEに
等しい
ことは先に証明された。
(1)
による。
AE=EB
となっている。
ゆえに
BEも
CEに
等しい
。
公理1ー1
(同じものに等しい)
による。
BE=CE
となっている。
したがって
AE、EB、ECの1つを
半径
として
円
が描かれれば、
残りの
点
をも通り、
完全な
円
が
描かれるであろう。
命題3ー10の補足
(3点共有で円が一致)
による。
弧ABC;上.円周(E,EB)
となっている。
ゆえに
円
の
切片
が与えられたとき、
完全な
円
が描かれた。
ここまでで
命題の証明は完結している。
ここ以降の
半円より
大きいか小さいかは
余分である。
場合分けは
余分な部分に関係している。
後世の、
原論解説者の説明が
本文として紛れ込んだ
のではないかと思われる。
そして
中心
Eが
切片
の外部にあることによって、
切片
ABCが
半円
より
小さい
ことは明らかである。
定義1ー18
(半円) 、
公理1ー8
(大きい)
による。
切片ABC;内側.半円(E,直径(AE))
となっている。
同様にして
たとえ
角
ABDが
角
BADに
等しく
ても、
場合分けの第二である。
∠ABD=∠BAD
となっている。
ADは
BD、DCの双方に
等しい
から、
命題1ー6
(等しい底角なら二等辺三角形)
による。
AD=BD=DC
となっている。
DA、DB、DCの3つは
互いに
等しく
、
公理1ー1
(同じものに等しい)
による。
Dは
完結された
円
の
中心
であり、
ABCは
明らかに
半円になるであろう。
命題3ー10の補足
(3点共有で円が一致)、
公理1ー7
(等しい)
による。
切片ABC;半円(D,直径AC)
となっている。
ところがもし
角
ABDが
角
BADより
小さく
、
場合分けの第3である。
∠ABD<∠BAD
となっている。
線分
BA上に
その上の
点
Aにおいて
角
ABDに
等しい
角
をつくるならば、
命題1ー23
(作図・直線上に指定された角)
による。
∠BAE(半直線AB,∠ABD,同側(AB,D)) をとっている。
中心
は
切片
ABCの内部に
DB上におち、
半直線AEが
角BAEの内部あることによる。
交点E(AE,DB);内部.切片ABC
となっている。
切片
ABCは
明らかに
半円より
大きい
であろう。
定義1ー18
(半円)、
公理1ー8
(大きい)
による。
半円(E,直径(AE));内側.切片ABC
となっている。
[したがって、
3つの場合の結果により
円の切片が与えられたとき、
完全な円が描かれた。]
よって
円
の
切片
が
与えられたとき、
その
切片
を含む
完全な
円
が
描かれた。
これが作図すべきものであった。
命題3ー25
は、
切片ABC
に対して、
中点D(AC)、
交点B(弧AC,垂線(D,AC))、
線分AB、
∠BAE(半直線AB,∠ABD,同側(AB,D))、
交点E(BD,AE)、
をとれば、
弧ABC;上.円周(E,EA)
のことである。
命題3ー25
は作図用命題である。
前提
作図
推論
定義
1-18
,
補(理1-5)
公準
1-1
,
1-2
,
1-5
公理
1-1
,
1-4補3
,
1-7
,
1-7補
,
1-8
,
1-8補2
,
命題
1-10
,
1-23
,
3-2補
1-4
,
1-6
,
1-16
,
3-2
,
3-10補
その他
(場合分け),
コ2(題1-16)f
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