ユークリッド原論をどう読むか(7)
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(7)はじめに

今回は、第3巻の後半である。
この後半で扱う内容の中心は、
 円の切片である。
切片というのは
 今日的には聞かない
 用語であるが、
 三角形などの直線図形に先駆けて、
  定義3ー11 で切片の相似が登場する。
まず、
 切片について、
 切片内の角がテーマとなる。
今日的には、
 反対側の
 切片の弧に対する
 円周角のことである。
切片内の角と紛らわしい概念として、
 切片の角というものもある。
こちらは、
 切片の弦と弧が
 挟む角のことである。
同じ切片における
 切片内の角は
 等しいことが 命題3ー21 で証明され、
 ここから、
 切片の相似の概念が確立する。
いわゆるwell-definedと
 なるのであるが、
このあたりのことは、
 原論は黙して語らず、
 淡々と進む。
同一線分上で
 同じ側にある相似な切片は
 一致する。
命題3ー23 であるが、
 この証明が
  命題1ー4 に次いで
  登場する
 重ね合わせの方法
 によるである。
切片の諸性質に基づいて、
 いわゆる接弦定理( 命題3ー32 )が証明される。
第3巻のハイライトは、
 最後の
 いわゆる方べきの定理( 命題3ー35 36 37
 である。
今日的には、
 円周角の定理から
 三角形の相似の性質を用いて
 証明されるが、
原論においては
 直線図形の相似は
 まだ登場していない。
そこで、
 原論は、
 第2巻の 命題2ー5 命題2ー6 を用いる。
このために
 第2巻があるのではないか
 という気がする位である。
第3巻の後半においても、
 敢えて
 と考えたくなるが、
 場合分けが不十分な
  命題が存在する。
例えば、 命題3ー35 である。
交点の存在の論証と併せて、
 読者の楽しみに
 取っておかれたように思われる。

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