ユークリッド原論をどう読むか(14)
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ユークリッド原論
第10巻
命題10ー42助
(不等分割線分上の正方形の和は大きい部分が大きい方が大)
{点対称点の除外}
これらの
無理線分
が,
それぞれその構成部分であり,
上述の諸種類をつくり出す,2
線分
に
ただ一つの仕方で分けられる
ことを次の補助定理を仮定して証明しうる。
無理線分は、
定義10ー4
による。
線分は、
定義の補足(命題1ー1)
による。
この補助命題は、
命題10ー42〜47の前提とされる。
命題10ー36〜41
により、
存在が証明された緒線分の分割点について、
その中点について点対称となる点でも
同様の分割となるのは自明なことで、
本質的には異ならない。
そこで、
自明な点以外にはないことを
以下の命題10ー42〜47で
証明しようとしている。
なお、各命題を証明する際、
「分割点と、
背理法の仮定として存在を仮定する、
分割点以外の点とについて、
中点に近い方の点をD、遠い方をC、
Dに近い端点をA、もう一方の端点をB」
として
論証を進めている。
原論は、これを、
「ACがDBより大きいと仮定される」
と表現し、
原論に省略されていると判断される場合には、
コメントに「AC>BD」
と記載している。
原論の書き振りから判断すると、
この補助命題は、
後世のコメントが混入したもの
と思われる。
なお、
この補助命題を前提とせずに、
命題10ー42以降を補強しようとして、
かえって混乱をもたらした記述が
いくつか散見される。
これらの記述も、
後世の質の悪いコメントの混入であろう。
(以下、
コメント(命題10ー42助)
(点対称点の除外)という。)
線分
ABが定められ,
全体がC,Dの双方において
不等
な部分に分けられ,
ACがDBより
大きい
と仮定されるとせよ。
AC,CBの
正方形
の和は
AD,DBの
正方形
の和より
大きい
と主張する。
命題1ー2
(作図・線分)
により、
線分ABをとり、
命題1ー10
(作図・線分の2等分)
により、
中点Eをとり、
公準1ー1の補足
(作図.任意の点をとる)
により、
点C.線分EB
点D'.線分EC
をとり、
命題1ー3の補足
(作図.等しい線分となる点)
により、
点D(AE;BD=AD')
をとる。
線分AC>線分BD
となっている。
ABが
Eにおいて2
等分
された
とせよ。
[......(1)]
前節でE
をとっている。
E;中点(AB)
となっている。
そうすれば
ACは
DBより
大きい
命題の設定
による。
AC>DB
となっている。
から,
双方からDCがひかれた
とせよ。
そうすれば
残りのADは
残りのCBより
大きい
。
前節、
公理1ー4の補足2
(不等なものから等しいものをひく)
による。
AD>CB
となっている。
ところが
AEは
EBに
等しい
。
(1)
による。
AE=EB
となっている。
したがって
DEは
ECより
小さい
。
[......(2)]
前節、前々節、
公理1ー4の補足2
(不等なものから等しいものをひく)
による。
DE<EC
となっている。
ゆえに
点
C,Dは
2
等分
点
から等距離にない。
そして
矩形
AC,CBとEC上の
正方形
の和は
EB上の
正方形
に
等し
く,
他方
矩形
AD,DBとDE上の
正方形
の和は
EB上の
正方形
に
等し
い
命題2ー5
(線分の矩形分割) による。
矩形(AC,CB)+正方(_EC)=正方(_EB)、
矩形(AD,DB)+正方(_DE)=正方(_EB)
となっている。
から,
矩形
AC,CBとEC上の
正方形
の和は
矩形
AD,DBとDE上の
正方形
の和に
等し
い
。
前節、
公理1ー1
(同じものに等しい)
による。
矩形(AC,CB)+正方(_EC)
=矩形(AD,DB)+正方(_DE)
となっている。
そのうち
DE上の
正方形
は
EC上の
正方形
より
小さい
。
(2)
、
公理1ー8
(大きい)
による。
正方(_DE)<正方(_EC)
となっている。
したがって
残りの
矩形
AC,CBは
矩形
AD,DBより
小さい
。
公理1ー4の補足4
(和が等しく一方が大きい)
による。
矩形(AC,CB)<矩形(AD,DB)
となっている。
したがって
矩形
AC,CBの2
倍
も
矩形
AD,DBの2
倍
より
小さい
。
前節、
公理1ー8の補足4
(大きい・小さいもののn倍・n等分)
による。
2矩形(AC,CB)<2矩形(AD,DB)
となっている。
ゆえに
残りのAC,CB上の
正方形
の和も
AD,DB上の
正方形
の和より
大きい
。
命題2ー4
(2分線分上の正方形)
により、
正方(_AB)=正方(_AC)+正方(_CB)
+2矩形(AC,CB)、
正方(_AB)=正方(_AD)+正方(_DB)
+2矩形(AD,DB)、
となり、
正方(_AC)+正方(_CB)+2矩形(AC,CB)
=正方(_AD)+正方(_DB)+2矩形(AD,DB)、
となり、
公理1ー4の補足4
(和が等しく一方が大きい)
による
正方(_AC)+正方(_CB)
>正方(_AD)+正方(_DB)
これが証明すベきことであった。
命題10ー42助
は、
線分AB、
中点E、
点C.線分EB
点D(AE;BD<AC)
をとると、
正方(_AC)+正方(_CB)
>正方(_AD)+正方(_DB)
のことである。
命題10ー42助
は推論用命題である。
前提
作図・構成
推論
定義
公準
1-1補
公理
1-1
,
1-4補2
,
1-4補4
,
1-8
,
1-8補4
命題
1-2
,
1-3補
,
1-10
2-4
,
2-5
その他
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