ユークリッド原論をどう読むか(10)
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ユークリッド原論
第6巻
命題6ー31(直角三角形の辺上の相似な図形)
直角三角形において
直角に対する辺の上の図形は
直角をはさむ2辺の上の
相似でかつ相似な位置に描かれた
図形の和に等しい。
ABCを
角BACが直角である直角三角形とせよ。
-
線分AB、
点C[;;∠BAC=∠R]、
△ABC
をとっている。
BC上の図形は
BA、AC上の
相似でかつ相似な位置に描かれた
図形の和に等しい
と主張する。
- 相似でかつ相似な位置に図形を描くのは
命題6ー18(作図.線分上に相似な直線図形)
による。
ここでの図は、
相似でかつ相似な位置にある
長方形であるが、
証明そのものは
一般の直線図形において通用する。
なお、
本命題が、
相似でかつ相似な位置にあるとされる例で、
対応する辺が
平行でないものの最初である。
垂線ADが下されたとせよ。
-
命題1ー12(作図・線分への垂線)
による。
-
点D(BC;;∠ADC=∠R)
をとっている。
そうすれば
直角三角形ABCにおいて
Aにおける直角から
底辺BCに垂線ADが下された
から、
垂線上の三角形ABD、ADCは
全体ABCに対しても互いに相似である。
-
命題6ー8(直角三角形の垂線と相似)
による。
-
△ABD∽△ADC∽ABC
となっている。
そして
ABCは
ABDに相似であるから、
CBがBAに対するように
ABがBDに対する。
-
定義6ー1(相似)
による。
-
CB:BA=AB:BD
となっている。
そして
3線分が比例するから、
第1の線分が第3に対するように
第1の上の図形が
第2の上の相似でかつ相似な位置に描かれた
図形に対する。
それゆえ
CBがBDに対するように、
CB上の図形が
BA上の相似でかつ相似な位置に描かれた
図形に対する。
-
CB:BD
=直線図形E(_CB):直線図形G(_AB;;∽∽直線図形E)
となっている。
同じ理由で
BCがCDに対するように、
BC上の図形がCA上の図形に対する。
-
BC:CD
=直線図形E(_BC):直線図形F(_AB;;∽∽直線図形E)
となっている。
ゆえに
BCがBD、DCの和に対するように、
BC上の図形が
BA、AC上の相似でかつ相似な位置に描かれた
図形の和に対する。
-
命題5ー24(各量の同じ比の和は同じ比)
による。
-
BC:BD+DC
=直線図形E(;_BC)
:直線図形F(;_BA)+直線図形G(;_AC)
となっている。
ところが
BCはBD、DCの和に等しい。
-
公理1ー7(等しい)
による。
-
BC=BD+DC
となっている。
したがって
BC上の図形も
BA、AC上の相似でかつ相似な位置に描かれた
図形の和に等しい。
-
定義5ー5(同じ比)
による。
-
直線図形E(;_BC)
=直線図形F(;_BA)+直線図形G(;_AC)
となっている。
よって
直角三角形において
直角に対する辺の上の図形は
直角をはさむ2辺の上の
相似でかつ相似な位置に描かれた
図形の和に等しい。
これが証明すべきことであった。
- 命題6ー31は、
△ABC[;;∠BAC=∠R]
に対して、
直線図形E(;_BC)
=直線図形F(;_BA)+直線図形G(;_AC)
のことである。
- 命題6ー31は推論用命題である。
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