ユークリッド原論をどう読むか(11)
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ユークリッド原論
第7巻
命題7ー37(割り切れるなら同名の等分数が存在)
同名の等分(数)
(同名の等分に同じ等分)
もし
ある数が
ある数に割り切られる
ならば、
割り切られる数は
割り切る数と同名の《約数》[等分数]をもつ
であろう。
- 数は、
定義7ー2による。
- 割り切るは、
定義5ー1の補足2による。
-
定義の補足2(公理1ー6)(n等分・n分の1)
により、
数Aをある個数に等分するとき、
特に個数を明示して、
C個に等分することを
Cと同名の等分
といい、
Aを、Cと同名の等分にした結果を、
特に、数として強調する場合、
Aの、Cと同名の等分数という。
(以下、定義の補足(命題7ー37)
(同名の等分(数))という。)
すなわち、
Cと同名の等分とは、
今日的に表現すれば、
1/C
のことである。
(B、単位D)が、
(A、C)を同じ個数に等分して得られるとき、
定義の補足(命題7ー5)(同じ等分)
により、
BがAのいかなる等分であっても、
単位DがCの同じ等分であり、
等分(B,A)=等分(単位D,C)
と表現し、
等分(単位D,C)は、
定義の補足(命題7ー37)(同名の等分(数))
により、
数Cの、Cと同名の等分であり、
等分(単位D,C);=同名等分(C)
と表現すると、
等分(B,A)=同名等分(C)
となる。
単位Dは、
D;=同名等分(C).C
と表現すると、
BはAのCと同名の等分
すなわち、
B=同名等分(C).A
となっている。
よって、
等分(B,A)=等分(単位D,C)、
ならば、
等分(B,A)=同名等分(C)
B=同名等分(C).A
となっている。
(以下、命題7ー37の補足2(同名の等分に同じ等分)という。)
割り切られる数に対して、
同名の等分が、
原論の現段階での数に近い存在として
扱われているというのが、
本命題の裏にある趣旨である。
本命題のなかに、
単位Dは数Bの、
Bと同名の《約数》[等分]である。
という表現がある。
また、
Euclid's Elements
(Clark University Professor D.E.Joyceの
http://aleph0.clarku.edu/~djoyce/java/elements/elements.html)
においては、
This proposition says
that
if B divides A,
then
A has a one-Bth part(namely,A/B).
と、コメントしている。
なお、約数は、
英文では a part である。
また、a part は
等分した1つ分という意味もある。
この2つの意味を
英文では(恐らくギリシャ文でも)
併せて用いている。
本解説では、
前者を約数、
後者を等分
と区別している。
数Aが
何らかの数Bに割り切られる
とせよ。
-
「数(について)・・・とせよ」は、
コメント4(命題7ー1)
を参照のこと。
-
数A
に対し、
数B[;;|A]
をとっている。
Aは
Bと同名の《約数》[等分数]をもつ
と主張する。
BがAを割った商と等しい
個数の単位が
Cのなかにある
とせよ。
[......(a)]
-
数C(;;個数(C,単位)=商(A,B))
をとっている。
BがAを割った商は
Cのなかにある単位の個数であり、
単位Dが数Cを割った商は
Cのなかにある単位の個数である
-
定義7ー8の補足(商)
による。
-
商(C,単位D)=個数(C,単位)
となっている。
から、
単位Dが数Cを、
BがAを
割った商は等しい。
-
(a)、前節による。
-
商(C,単位D)=個数(C,単位)、
商(C,単位D)=商(A,B)
となっている。
それゆえ
いれかえて
単位Dが数Bを、
CがAを
割った商は等しい。
-
命題7ー15(割る数と商のいれかえ)
による。
-
商(B,単位D)=商(A,C)
となっている。
ゆえに
単位Dが数Bの
いかなる《約数》[等分]で
あろうと、
CもAの
同じ《約数》[等分]である。
[......(1)]
ところが
単位Dは数Bの、
Bと同名の《約数》[等分]である。
-
定義の補足(命題7ー37)(等分・同名の等分(数))
による。
-
等分(単位D,B)=同名等分(B)、
単位D;同名等分(B).B=単位
となっている。
したがって
CはAの、
Bと同名の《約数》[等分]である。
よって
Aは
Bと同名の《約数》[等分数]Cをもつ。
これが証明すべきことであった。
-
等分・同名の等分という表現で
n分の1という単位分数の概念が
発生し始めている。
注目すべき命題である。
- 命題7ー37は、
数A、B[;;|A]
に対して、
数C(;;個数(C,単位D)=商(A,B))
をとれば、
C;同名等分(B).A
のことである。
-
命題7ー37の補足2(同名の等分に同じ等分)
前提 | 作図 | 推論 |
定義 |
|
補(題7-5),補(題7-37)
|
公準 |
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公理 |
|
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命題 |
|
|
その他 |
|
|
- 命題7ー37は推論用命題である。
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