ユークリッド原論をどう読むか(16)
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ユークリッド原論
第11巻
命題11ー1(平面上の直線は平面外に出ない)
直線のある[2点を含む]部分が
基準平面上に,
ある部分が
その平面外に
あることはできない。
-
基準平面上にある部分が、
単に1点だけ
というのでは、
原論の構成から考えて、
妥当でないので、
基準平面上にあるのは、
2点を含む部分と修正しておく。
これに対し、
基準平面外には1点だけでも
出ていることはできないので、
原文のままとする。
- 直線は、
定義1ー4による。
- 平面は、
定義1ー7による。
もし
可能ならば,
線分ABCの《任意の》[2点を含む]部分ABが
基準平面上
にあり,
-
公準1ー1の補足(作図.任意の点をとる)
により、
2点A、Bを基準平面上に
とり、
公準1ー1(作図.直線)
により
この2点を結ぶ直線
をひく。
定義1ー7(平面)
により、
この直線、
したがって、
線分ABは、
基準平面上にある。
-
「もし可能ならば」は、
この後のことである。
-
AB;基準平面上
となっている。
《任意の》[ある]部分B[']Cが
その平面外に
あるとせよ。
-
背理法の仮定である。
少なくとも点Cだけは、
基準平面外にある
と仮定するものとして、推論を進める。
-
「任意の」という表現は
適切でない。
コメント(命題5−8)を参照のこと。
そうすれば
基準平面上に
ABと連続的に一直線をなす
何らかの線分が
あるであろう。
-
定義1ー15(円)
により、
円は平面図形であり、
公準1ー3(作図.円)
により、
中心B、半径BAの円が、
基準平面上に描かれる。
公準1ー2(作図.直線の延長)
により、
線分ABがBの方向に延長され、
命題3−1の補足2(中心を通る直線は円周と2交点)
により、
延長された線分と円との交点をB1
とすると、
AB1は、基準平面上の線分
となる。
基準平面上の線分AB1について、
同様に繰り返し、
基準平面上の線分AB2を描く。
同様に繰り返すと、
公準1ー2の補足(アルキメデスの原理)
により、
基準平面上の線分ABを
線分ABCより長くなるように、
基準平面上に延長し、
ABDとする。
それをBD
とせよ。
-
前節による。
-
線分AB;基準平面上、
線分ABD(延長AB;ABD>ABC、基準平面上)
となっている。
そうすれば
ABは
2線分ABC,ABDの共通な部分
である。
これは
不可能
である。
-
命題1ー3の補足(作図.等しい線分となる点)
により、
点E(BD;BE=BC)
をとると、
命題3−1の補足2(中心を通る直線は円周と2交点)
により、
直線ABにおいて、
BについてAと反対側で、
Bからの距離がBCとなる点は1点であり、
異なる2点とはならない
ことによる。
なぜなら
もし
Bを中心に
ABを半径として
円を
描け
ば,
二つの直径は
円の不等な弧を
切りとるであろう
から。
-
「なぜならもし」は、
コメント(命題1ー4)参照のこと。
-
本文は
AB≦BC
と仮定して推論している。
F(AB;FB=BC)
をとることは可能だから、
Fを改めてAとして、
AB≦BC
とすることは一般性を失わない。
「2つの直径」とは、
半径ABとなる距離を
BからAと反対側に取ったとき、
基準平面上にない点がとれるという背理法の仮定と、
基準平面上にとれるという推論の結果
により
直径が2つとれることを踏まえている。
「円の不等な弧を切りとる」とは、
1つの半径を延長して、
2つの異なる直径となる
ことにより、
元の半径のAからBを見るときの一方の側に
2つの異なる半円ができる
ことになって
矛盾が生じていることを述べている。
しかし、
この矛盾が顕在化する前に、
1つの半径を延長して、
2つの異なる直径となる
ことが矛盾である。
推論が混乱している。
と言わざるをえない。
-
「なぜならもし」は、
コメント(命題1ー4)参照のこと。
これと、
コメント(命題5−8)を踏まえると、
後世の不適切なコメントの混入が
疑われる。
よって
直線のある部分が
基準平面上に,
ある部分が
その平面外に
あることはできない。
これが証明すべきことであった。
-
原論の論証を尊重すれば、
定義1ー15(円)
において、
円が平面図形である
と明記していることが
本命題の証明の根拠になっている。
しかし、
定義1ー7(平面)
によれば、
「平面とは
その上にある直線について
一様に横たわる面である。」
これにより、
本命題を論証をすることができる。
すなわち、
直線の一部の線分が基準平面上に横たわっている。
定義1ー7(平面)
により、
平面とは
その上にある直線について
一様に横たわる面である。
よって、
直線は基準平面上に横たわっており、
一部が基準平面上から出ることはない。
なお、
原論第一巻の定義において、
平面上であることを明記しているのは、
定義1ー15(円)と、
定義1ー23(平行(線))
だけである。
- 命題11ー1は、
直線ABCの一部の線分ABが
基準平面上にあれば、
全体ABCが
基準平面上にある
ことである。
- 命題11ー1は推論用命題である。
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