ユークリッド原論をどう読むか(14)
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ユークリッド原論
第10巻
命題10ー33補助(直角三角形の垂線の足による矩形と辺上の正方形)
補 助 定 理
ABCを
直角Aをもつ直角三角形
とし、
垂線ADがひかれた
とせよ。
矩形CB、BDはBA上の正方形に等しく、
矩形BC、CDはCA上の正方形に等しく、
矩形BD、DCはAD上の正方形に等しく、
さらに
矩形BC、ADは矩形BA、ACに等しい
と主張する。
-
命題を一般的に言葉で表現する
ことを省いて、いきなり、
具体的に図形を文字でしている。
これは、
補助定理
においても、
異例である。
そしてまず
矩形CB、BDがBA上の正方形に等しいこと。
直角三角形において
直角から底辺に垂線ADがひかれた
-
命題1ー12(作図・線分への垂線)
による。
-
AD⊥BC
となっている。
から、
三角形ABD、ADCはABC全体に対し、
また
相互に相似である。
[......(1)]
-
前節、
命題6ー8(直角三角形の垂線と相似)
による。
-
△ABD∽△ABC、
△ADC∽△ABC、
△ABD∽△ADC
となっている。
そして
三角形ABCは三角形ABDに相似である
-
前節による。
-
△ABC∽△ABD、
となっている。
から、
CBがBAに対するように、
BAがBDに対する。
-
前節、
定義6ー1(相似)
による。
-
CB:BA=BA:BD
となっている。
したがって
矩形CB、BDはAB上の正方形に等しい。
-
前節、
命題6ー17(比例3線分と外項矩形、中項正方形)
による。
-
rec(CB、BD)=sq(_AB)
となっている。
同じ理由で
矩形BC、CDもAC上の正方形に等しい。
-
△ABC∽△ADC、
より、
BC:CA=AC:CD
よって、
rec(BC、CD)=sq(_AC)
となっている。
そしてもし
直角三角形において
直角から底辺へ垂線がひかれる
ならば、
-
この「もし」は、
条件(仮定条件)を示している。
背理法の条件ではない。
ひかれた垂線は
底辺の二つの部分の比例中項である
から、
BDがDAに対するように、
ADがDCに対する。
したがって
矩形BD、DCはDA上の正方形に等しい。
-
前節、
命題6ー17(比例3線分と外項矩形、中項正方形)
による。
-
rec(BD、DC)=sq(_DA)
となっている。
矩形BC、ADも矩形BA、ACに等しい
と主張する。
先に述べたように
ABCはABDに相似である
-
(1)による。
-
△ABC∽△ABD
となっている。
から、
BCがCAに対するように、
BAがADに対する。
-
前節、
定義6ー1(相似)
による。
-
BC:CA=BA:AD
となっている。
したがって
矩形BC、ADは矩形BA、ACに等しい。
-
前節、
命題6ー16(比例4線分と外項矩形、内項矩形)
による。
-
rec(BC、AD)=rec(BA:AC)
となっている。
これが証明すべきことであった。
- 命題10ー33補助は、
△ABC;直角三角形(∠A;直角)
において、
D;BC上で、AD⊥BC
ならば、
rec(CB、BD)=sq(_AB)、
rec(BC、CD)=sq(_CA)、
rec(BD、DC)=sq(_DA)、
rec(BC、AD)=rec(BA、AC)
のことである。
- 命題10ー33補助は推論用命題である。
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