ユークリッド原論をどう読むか(11)
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(11)はじめに
今回は、第7巻である。
この巻で扱う内容の中心は、
数、
すなわち
自然数である。
図形、量と比例と進んできて、
いよいよ数が登場する。
今日の理論構成としては、
逆なのであろうが、
原論としては
自然な成り行きである。
そのため、
結果的には、
定義5ー5(同じ比)
の方が
定義7−21(比例)
より複雑である
というようなことに
なっている。
用語について
留意すべきことは、
次の諸点である。
単位(1)は、
基本的には数に含まれない。
数は2以上を意味するのが
通例である。
約数・倍数という用語が
多義にわたる。
例えば、
同じという
修飾がつくと、
意味が異なってくる。
特に、
約数については、
割り切る(量り切る)単位
という意味と
等分した1つ分
という意味とを
併せ持つ。
英文では
a part で兼ねることができても、
日本文では、
とてもできるものではない。
命題7ー37(割り切れるなら同名の等分数が存在)
以降を見ていただければ
様子がわかって頂けよう。
そこで、
前者は約数、
後者は等分、
と区分した。
次に
内容について述べる。
最初に登場するのが
ユークリッドの名を冠して呼ばれる
互除法である。
これにより、
最大公約数を論じて、
約数、比例へと進む。
その後、
整除に関する命題が続くが、
思いの外、
大きな役割を担っているのが、
命題7ー19(4数の比例と内項・外項の積)
である。
この命題をテコにして、
今日の抽象代数でも登場する
命題7ー30(素数は積を割り切れば一方を割り切る)も
証明される。
最後に
命題7ー39(数個の等分をもつ最小数)で
単位分数の概念に近づいて
第7巻の幕となる。
なお、
本文を読むに当たって、
次のことに留意いただきたい。
第7巻にあたり、繰り返しておく。
-
・印が付いている部分が解説である。
-
以下の命題において、
原典はギリシャ文字であるが、
通常のアルファベット(A、B、C・・・)を用いる。
-
定義された用語、定義、公準、公理は
太文字で、
筆者が原論の本文を踏まえて、
補足して定義した
用語、定義の補足、公準の補足、公理の補足は
太斜体で、
記述している。
それぞれ定義・補足しているところでは
赤字で示している。
-
図は、
大阪府教育センターの教材コンテンツ「EG」を
用いて描いた。
-
特に、印をつけていない部分が、
ユークリッド原論の日本語訳で、
共立出版の中村幸四郎他訳
1996年6月25日付縮刷版第1刷による。
-
< >は
筆者による大まかな分類である。
ほんの少しではあるが、
必要に応じて、
本文を、
《 》で削り、
[ ]で補って、
意味を通じやすくした。
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