ユークリッド原論をどう読むか(11)
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ユークリッド原論
第7巻
命題7ー3
(
構成.
3数の最大公約数)
「・・・か、あるいは、・・・かである」
(3数の公約数は3数の最大公約数を割り切る)
(構成.任意個の数の最大公約数・公約数)
「互いに素による場合分け」
互いに素
でない3つの
数
が
与えられたとき、
それらの
最大公約数
を見いだすこと。
互いに素は、
定義7ー13
による。
数は、
定義7ー2
による。
最大公約数は、
定義の補足(命題7ー2)
による。
互いに素
でない
3つ[以上]の与えられた
数
をA、B、Cとせよ。
「数(について)・・・とせよ」は、
コメント4(命題7ー1)
参照のこと。
図は、8、6、4による。
命題の補足(定義7ー2)
(作図.数n) による。
数A[;;¬素数]
に対して
数S[;;¬単位,S|A]、
数C[;;S|C]
をとっている。
このとき
A、B、Cの
最大公約数
を
見いださねばならぬ。
A、Bの
最大公約数
Dが
とられたとせよ。
【・・・(a)】
命題の設定により
A、Bは互いに素ではない。
よって、
命題7ー2
(構成.最大公約数)
による。
最大公約数D(A,B)
をとっている。
そうすれば
Dは
Cを
割り切る
か
あるいは
割り切ら
ないか
である。
場合分けに先立ち、
論理的に可能な場合を
明示している。
「・・・か、あるいは、・・・かである」
という、
排中律の明確な初めての表現である。
場合分けの原理にある考え方であるが、
これまでの場合分けでは、
その前に、
この原理に法った表現はなかった。
(以下、
コメント(命題7ー3)
(…か、あるいは、…かである)という。)
ここでの場合分けの必要な理由は、
命題7ー2
(構成.最大公約数)が
2数の互いに素を前提とする
からである。
論証が複雑となる背景は、
単位を数と認めず、
最大公約数・約数に単位がなることがない
という設定による。
(以下、
コメント4(命題7ー3)
(互いに素による場合分け)という。)
今日的には、
最大公約数から
単位1を排除してないので
論証は見通しが随分とよくなる。
D;|C
または
D;¬|C
となっている。
まず
割り切る
とせよ。
D|C
としている。
ところが
A、Bをも
割り切る
。
(a)
による。
D|(A、B)
となっている。
それゆえ
Dは
A、B、Cを
割り切る
。
D|(A、B、C)
となっている。
ゆえに
Dは
A、B、Cの
公約数
である。
定義の補足(命題7ー2)
(最大公約数・公約数)
による。
D;公約数[A,B,C]
となっている。
最大であると主張する。
もし
DがA、B、Cの
最大公約数
でないならば、
背理法の仮定を述べようとしている。
Dより
大きい
何らかの
数
が
数
A、B、Cを
割り切る
であろう。
背理法の仮定である。
[Dより大きい数がA、B、Cを]
割り切る
とし、
それをEとせよ。
【・・・(b)】
「・・・するものとし」は、
コメント3(命題7ー1)
参照のこと。
数E[;;|(A,B,C),E>D]
としている。
そうすれば
EはA、B、Cを
割り切る
から、
E|(A,B,C)
となっている。
A、Bをも
割り切る
であろう。
E|(A,B)
となっている。
それゆえ
A、Bの
最大公約数
をも
割り切る
であろう。
命題7ー2の系3
(系.公約数は最大公約数を割り切る)
による。
E|最大公約数(A,B)
となっている。
A、Bの
最大公約数
はDである。
(a)
による。
D;最大公約数(A,B)
となっている。
ゆえに
EはDを
割り切る
、
すなわち
大きい
数
が
小さい
数
を
割り切る
。
(b)
による。
E;(|D、>D)
となっている。
これは不可能である。
命題の補足(定義7ー3)
(割り切る数は小さい)
による。
したがって
Dより
大きい
いかなる
数
も
数
A、B、Cを
割り切ら
ないであろう。
背理法による。
よって
DはA、B、Cの
最大公約数
である。
定義の補足(命題7ー2)
(最大公約数)
による。
D;最大公約数(A,B,C)
となっている。
次に
DがCを
割り切ら
ないとせよ。
D;¬|C
となっている。
まず
C、Dが
互いに素
でないと主張する。
A、B、Cは
互いに素
でないから、
命題の設定
による。
何らかの
数
が
それらを
割り切る
であろう。
【・・・(c)】
定義7ー13
(互いに素)
による。
数S[;;|(A、B、C)]
となっている。
そこで
A、B、Cを
割り切る
数
は
A、Bをも
割り切り
、
A、Bの
最大公約数
をも
割り切る
であろう。
命題7ー2の系3
(系.公約数は最大公約数を割り切る)
による。
S;|最大公約数D(A,B)
となっている。
ところが
Cをも
割り切る
。
(c)
による。
S|C
となっている。
それゆえ
何らかの
数
が
数
D、Cを
割り切る
であろう。
S;|(D、C)
となっている。
ゆえに
D、Cは
互いに素
ではない。
定義7ー13
(互いに素)
による。
D¬(互いに素)C
となっている。
そこで
それら[D、C]の
最大公約数
Eがとられたとせよ。
【・・・(d)】
命題7ー2
(構成.最大公約数)
による。
最大公約数E(D,C)
をとっている。
そうすれば
EはDを
割り切り
、
DはA、Bを
割り切る
から、
E;|D、
D;|(A、B)
となっている。
EはA、Bをも
割り切る
。
命題7−1の補足
(倍数の倍数、約数の約数)
による。
E;|(A,B)
となっている。
ところが
EはCをも
割り切る
。
(d)
による。
E;|C
となっている。
したがって
EはA、B、Cを
割り切る
。
E;|(A、B、C)
となっている。
よって、
EはA、B、Cの
公約数
である。
定義の補足(命題7ー2)
(最大公約数)
による。
E;公約数[A,B,C]
となっている。
次に
最大でもあると主張する。
もし
EがA、B、Cの
最大公約数
でないならば、
背理法の仮定を述べようとしている。
E;¬最大公約数(A,B,C)
としている。
Eより
大きい
何らかの
数
が
数
A、B、Cを
割り切る
であろう。
背理法の仮定である。
[Eより大きい数がA、B、Cを]
割り切る
とし、
それをFとせよ。
【・・・(e)】
推論の設定である。
公約数F[A,B,C;;>E]
をとっている。
そうすれば
FはA、B、Cを
割り切る
から、
A、Bをも
割り切る
。
それゆえ
A、Bの
最大公約数
をも
割り切る
であろう。
命題7ー2の系3
(系.公約数は最大公約数を割り切る)
による。
F;|(A、B)
となっている。
ところが
A、Bの
最大公約数
はDである。
(a)
による。
D;最大公約数(A,B)
となっている。
ゆえに
FはDを
割り切る
。
命題7ー2の系3
(系.公約数は最大公約数を割り切る)
による。
F;|D
となっている。
ところが
Cをも
割り切る
。
(e)
による。
F;|C
となっている。
したがって
FはD、Cを
割り切る
。
F;|(D、F)
となっている。
それゆえ
D、Cの
最大公約数
をも
割り切る
であろう。
命題7ー2の系3
(系.公約数は最大公約数を割り切る)
による。
F;|最大公約数(D,C)
となっている。
ところが
D、Cの
最大公約数
はEである。
(d)
による。
(e)
以降、
ここまでで、
次のことが分かる。
3つの数の公約数は、
その最大公約数を割り切る
(以下、
命題7ー3の補足2
(3数の公約数は3数の最大公約数を割り切る)という。)
E;最大公約数(D,C)
となっている。
ゆえに
FはEを
割り切る
、
すなわち
大きい
数
が
小さい
数
を
割り切る
。
命題7ー2の系3
(系.公約数は最大公約数を割り切る)
による。
F;(|最大公約数D(A,B,C)、>D)
となっている。
これは不可能である。
(e)
による。
したがって
Eより
大きい
いかなる
数
も
数
A、B、Cを
割り切ら
ないであろう。
背理法による。
よって
EはA、B、Cの
最大公約数
である。
E;最大公約数(A,B,C)
となっている。
[
2つの場合の結果により
常に
互いに素でない3つの数の
最大公約数を作図できた。]
これが証明すべきことであった。
互いに素でない任意のn個の数
A、B1、…、Bn-1の
最大公約数は、
最大公約数D1(A,B1)
として、
最大公約数Di(Di-1,Bi)
を逐次とって得られる
Dn-1
であり、
任意の公約数は、
最大公約数Dn-1
を割り切る。
(以下、
命題7ー3の補足3
(構成.任意個の数の最大公約数・公約数)という。)
命題7ー2
(構成.最大公約数)
により、
最大公約数D1(A,B1)、
…
最大公約数Di(Di-1,Bi)
を逐次求めると、
命題7ー3
(構成.3数の最大公約数)
により、
最大公約数C2(A,B1,B2);=D2
となっている。
命題7ー3の補足
(3数の公約数は3数の最大公約数を割り切る)
により、
公約数[A,B1,B2]|C2
となっている。
[......(101)]
(A、B1、…、Bi+1);¬(互いに素)
により、
公約数Zi+1(A,B1,…,Bi+1)
があるので、
Zi+1|(A、B1、…、Bi)、
(101)
により
Zi+1|(Di,Bi+1)
となり、
命題7ー2
(構成.最大公約数)
により
最大公約数Di+1(Di,Bi+1)
が存在する。
帰納法の仮定、
すなわち
Di|(A、B1、…、Bi)
と、
Di+1|(Di、Bi+1)、
命題7−1の補足
(倍数の倍数、約数の約数)
により、
Di+1|(A、B1、…、Bi、Bi+1)
となっている。
背理法の仮定として、
公約数E[A、B1、…、Bi、Bi+1;;>Di+1]
が存在したとしたら、
E;|(A、B1、…、Bi)
となり、
(101)
により、
E;|Di
となっているので、
E;|(Di、Bi+1)
すなわち
E;|Di+1
となり、
命題の補足(定義7ー3)
(割り切る数は小さい)
により、
E;<Di+1
となって、
背理法の仮定と矛盾する。
よって、
Di+1;最大公約数(A、B1、…、Bi、Bi+1)
となる。
また、
公約数F[A,B1,…,Bi,Bi+1]
は、
F|(A、B1、…、Bi)、
F|(Di,Bi+1)
となるので、
命題7ー2の系3
(系.公約数は最大公約数を割り切る)
により、
公約数F|最大公約数Ci+1
となる。
なお、
以上の証明は、
数学的帰納法である。
命題7ー3
が、
任意個の数の最大公約数を求めることを、
3個の数の場合を示して
準一般的に証明しているのではなく、
3個の場合と明示して証明している
ことから、
ユークリッドの時代には
準一般的な証明に帰することができない
数学的帰納法の必要となる背景は意識されていた
と判断できよう。
命題7ー3
は、
互いに素でない数A、B、C
に対して
最大公約数D(A,B)、
最大公約数E(D,C)
をとれば、
E;最大公約数(A,B,C)
のことである。
命題7ー3の補足2(3数の公約数は3数の最大公約数を割り切る)
前提
作図
推論
定義
公準
公理
命題
7-2系3
その他
命題7ー3の補足3(構成.任意個の数の最大公約数・公約数)
前提
作図
推論
定義
公準
公理
命題
7-2
補(義7-3)
,
7-1補
,
7-2系3
,
7-3
,
7-3補
その他
数学的帰納法
命題7ー3
は構成用命題である。
前提
作図
推論
定義
補(題7-2)
,
7-13
公準
公理
命題
補(義7-2)
,
7-2
補(義7-3)
,
7-1補
,
7-2系3
その他
場合わけ,
コ3(題7-1)
,
コ(題7-3)
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