ユークリッド原論をどう読むか(8)
頁末
前
次
目次
(8)はじめに
今回は、第4巻である。
この巻で扱う内容の中心は、
円に多角形を内接・外接させること
多角形に円を内接・外接させることである。
特に、円に正五角形を内接させるために
1:2:2の角の大きさをもつ
2等辺三角形の作図がハイライトとなる。
既に
「(5)はじめに」において
予告しておいた通り、
命題2ー11
が
重要な役割を演じる。
今日的に言えば、
1:2:2の角の大きさをもち、
辺ABとACが等しい2等辺三角形ABCは、
命題1ー9
により
底角ABCを半直線BDで2等分すると、
命題1ー21の補足
により
辺ACと交わる。
その交点をあらためてDとし、
三角形ABCとBCDが相似となる。
そこで、
AB、ACを1、
底辺BCをxとすると、
AC:BC=BC:CD
すなわち、
1:x=x:(1ーx)
となる。
この比例式は
x^2=1*(1ーx)
となるが、
これを図形的に表現すると
命題2ー11
の設定となる。
作図としては、
AC上にDがとられる。
そこで、
命題3ー32(接弦定理)
と
命題3ー37(いわゆる方べきの定理の逆)
とによって、
BDとBCが等しいことが示され、
角が1:2:2の2等辺三角形が
作図されたことになる。
しかも、
三角形の相似の概念は一切用いることなしに!
なお、
半径1の円に内接する正五角形の1辺の作図は、
次の図により、
より簡潔に解決しうることがわかる。
すなわち、
三角形EABを
角が1:2:2の2等辺三角形とし、
CA、CB、CAが1とし、
ABが、
半径1の円に内接する正五角形の1辺とする。
このとき、
角ACBは72°、CAEは18°、CABは54°となる。
AFを角EABの2等分線とすると、
角AFBは36°、CAFは18°となり、
角AFCが直角となるから、
三角形ACFとEADが相似となり、
CFは(√(5)ー1)/4となり、
FBは1ーCFで
(5ー√(5))/4となる。
したがって、
CF:FB=1:√(5)となる。
これをよくみると、
BCに直角な直径CGの中点をHとし、
角CHBの2等分線が
CBと交わる点をFとしている
ことになる。
FからBCに直角に直線をひき、
円周との交点をAとすれば、
線分ABが
半径1の円に内接する
正五角形の1辺となる
わけである。
ついでにいえば、
角EABの2等分線と半径CBは直交する
こともわかった。
なお、
本文を読むに当たって、
次のことに留意いただきたい。
第4巻にあたり、繰り返しておく。
-
・印が付いている部分が解説である。
-
以下の命題において、
原典はギリシャ文字であるが、
通常のアルファベット(A,B,C)を用いる。
-
定義された用語、定義、公準、公理は
太文字で、
筆者が原論の本文を踏まえて、
補足して定義した
用語、定義の補足、公準の補足、公理の補足は
太斜体で、
記述している。
それぞれ定義・補足しているところでは
赤字で示している。
-
図は、
大阪府教育センターの教材コンテンツ「EG」を
用いて描いた。
-
特に、印をつけていない部分が、
ユークリッド原論の日本語訳で、
共立出版の中村幸四郎他訳
1996年6月25日付縮刷版第1刷による。
-
< >は
筆者による大まかな分類である。
前
次
目次
頁頭