ユークリッド原論をどう読むか(16)
頁末
前
次
目次
(16)はじめに
今回は、
3部から構成されている第10巻の第3部
である。
この部では
第2部の最後に
登場した,
余線分、第一の中項余線分、第二の中項余線分、劣線分、
中項面積と有理面積の差に等しい正方形の辺、
中項面積の差に等しい正方形の辺という,
差に関わる無理線分の分類(6種類)を
受けて,
第2部の二項線分のグループとは別の
余線分のグループとなる無理線分の相互関係が
明らかにされてゆく.
まず,
定義として,
余線分が
6種類に
分類される.
そして,
命題に
入り,
この6種類が,
現実に作図可能
である
ことが示される.
次いで,
有理線分と
この6種類の余線分によって
囲まれる
矩形の面積に等しい正方形の辺が
差にかかわる6種類の無理線分
である
こと,
また,
その逆も
成立する
ことが証明される.
さらに,
差にかかわる6種類の無理線分と通約可能なものは,
順位も含めて同じ種類の無理線分
である
こと、
そして、
有理面積と中項面積の差に等しい正方形の辺が
差にかかわる6種類の無理線分のうちの4種類
であり、
通約できない2つの中項面積の差に等しい正方形の辺が
残りの2種類と
なる
ことが証明される.
以上、
差にかかわる6種類の無理線分の分類の根拠となるものは、
差をなす線分上の正方形の面積和と囲む矩形の面積が
有理面積と中項面積のどちら
であるか
ということと、
線分が
平方において通約と非通約のどちら
であるか
ということであった。
上記のことを、
有理平方和、中項平方和、
有理矩形、中項矩形、
平方通約、平方非通約、と
表記する
と、
有理平方和、中項矩形、平方通約
なら
その差は
余線分
有理平方和、中項矩形、平方非通約
なら
その差は
劣線分
中項平方和、有理矩形、平方通約
なら
その差は
第1の中項余線分
中項平方和、有理矩形、平方非通約
なら
その差は
中項と有理面積の差となる正方形の辺
中項平方和、中項矩形、平方通約
なら
その差は
第2の中項余線分
中項平方和、中項矩形、平方非通約
なら
その差は
中項面積の差に等しい正方形の辺
となり、
差に関わって登場した無理線分に
対応する。
最後に、
これまでに出てきた
無理線分について、
すべて異なることを証明し、
また、
二項線分と余線分が
きれいに対応し、
対応するものが、
有理面積を囲むことを証明し、
さらに、
有理線分に対し、
中項線分から始めて
(実は平方通約の有理線分から始めると整合性が一貫する)
順次、比例中項との比例中項をとっていけば、
それらはすべて、
無理線分で、
かつ
異なるものの無限列であることを証明して、
10巻が終わる。
なお、
本文を読むに当たって、
次のことに留意いただきたい。
第10巻第3部にあたり、繰り返しておく。
-
・印が付いている部分が解説である。
-
以下の命題において、
原典はギリシャ文字であるが、
通常のアルファベット(A、B、C・・・)を用いる。
-
定義された用語、定義、公準、公理は
太文字で、
筆者が原論の本文を踏まえて、
補足して定義した
用語、定義の補足、公準の補足、公理の補足は
太斜体で、
記述している。
それぞれ定義・補足しているところでは
赤字で示している。
-
直線を並べる図は、
エクセルを用いて描いた。
-
特に、印をつけていない部分が、
ユークリッド原論の日本語訳で、
共立出版の中村幸四郎他訳
1996年6月25日付縮刷版第1刷による。
-
< >は
筆者による大まかな分類である。
ほんの少しではあるが、
必要に応じて、
本文を、
《 》で削り、
[ ]で補って、
意味を通じやすくした。
前
次
目次
頁頭